はずれのわたしで、ごめんなさい。

ふまさ

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 次の日。
 レックスにエスコートされながら、アリシアは街で買い物をした。こうして出かけることは、はじめてではない。マイクとも、何度かデートはした。エスコートもしてくれた。でも、気持ちが違うと、こうも印象はかわるものかと驚いた。

(マイク様とのデートは、ただただ苦痛だったのに……相手がレックス様だと、こんなにも時間が経つのが早いんだ)

 いずれレックスは、本当に相応しい令嬢と出逢い、やがては結婚するだろう。いつまでもこんな優しい時間は続かない。わかっている。だから。

(……今日がずっと、繰り返されればいいのにな)

 アリシアはそっと、心の中でそんなことを祈った。叶うことはないと知りながら。

 だってほら。明日は必ずやってくるものだから。


「──アリシア嬢!」

 翌朝。レックスと一緒に校舎内を歩いていると、後方から名を呼ばれた。振り返ると、必死な形相のマイクがいた。なんだか、ずいぶんと久しぶりな気がするのは何故だろう。

「お久しぶりです。マイク様」

 声に出てた。

「ひ、久しぶり? いや、それはいい。昨日、きみの家から突然封書が届いたんだ。開けてみれば、婚約を解消するとの内容だった。これはいったいどういうことだ?!」

「婚約を解消、ですか」

 アリシアは思わず、隣にいるレックスを見た。レックスがにこっと笑ったので、もう話しを通してくれたんだと理解した。

「ぼくほどきみに親切にしてあげていた人はいない。それなのにこの仕打ちはなんだ? きみの家にいっても門前払い。両親には怒鳴られ、ぼくの面目は丸潰れだ!」

 レックスが「きみに潰れるほどの面目があったとは驚きだね」と、アリシアとマイクの間に入る。マイクが、ぎろっとレックスを睨み付ける。

「あなたには関係のないことです。これはぼくと、アリシア嬢との問題ですので」

「ところが大いにあるんだ。わたしは、正式にアリシアに婚約を申し込んでいる身なのでね」

「……? なにを……あなたの婚約者はベティ嬢でしょう……?」

 レックスは「きみが言うところの、当たりのベティ嬢かい?」と、嘲笑した。とたん、マイクは身体を揺らすほど動揺した。

「?! な、んの、ことでしょうか……」

「ぼくほど親切にしてあげていた人はいないだって? よくそんなことが言えたものだ。陰口をあれだけたたいておきながら、何様のつもりなんだ、貴様は」

 どんどん口調を強めていくレックスに押されながらも、マイクは「そ、そんなことはしておりません!」と反論する。

「あの、マイク様。あなたが気にしているのは、持参金のことですよね?」

 レックスの後ろから顔だけ覗かせたアリシアが問う。マイクの顔が「ち、ちがっ」と、瞬時に青くなった。

「例えばわたしが、持参金はなしでマイク様の元に嫁ぎたいと言ったら、どうしますか?」

「?! それは話しが違う!」

「はい。そういうことです。持参金を出してまでわたしを嫁がせる理由が、父にはもう、なくなってしまったのです」

「ど、どういうことだ!? というか、そんな勝手な話しがあるか! 一方的過ぎる! 慰謝料を要求させてもらうからな!」

「父にですか?」

「当然だろう」

「頑張ってください。応援してます」

「…………は?」

 目を点にするマイクに、レックスはたえきれず、吹き出してしまった。

「なんですか? 失礼ですよ」

「いえね。わたしなんかより、よほどきみの方がベティ嬢にふさわしいと思ってね」

「……そんなことで、ぼくが引き下がるとお思いですか?」

「いや、別に引き下がらせる必要などないさ。というより、きみは本当に慰謝料を貰えると思っているのかい? きみに落ち度は全くないと言える?」

「……言え、ますとも」

「いい返事だ。ならばとことん争おうではないか──と、アリシアの名誉のために言いたいところだが、止めておくことにするよ」

「……何故?」

「きみは、ベティ嬢と婚約したかったのだろう? そうマイヤー伯爵に告げてみるといい。きっといい返事がもらえるはずだから。むろん、持参金付きでね」

「……?」

 訝しむマイクに、レックスは「あまりおすすめはしないけどね」と肩をすくめた。

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