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「ふん。あいにく、リッキーはあたしにベタ惚れなのよ。シャノンなんかよりあたしのことを愛しているけど、婚約解消にシャノンが応じてくれないから困ってるって、言ってたわ!」

 教室内のほとんどの生徒たちが、パティの妄想だと笑う。でもシャノンは、そんな気にはなれなかった。昨日の二人の会話を聞いていたから、あり得る話かもしれない、と思った。

「そうなの? それは初耳だけど──いいわよ」

 シャノンの科白に、パティが、え、と目を丸くした。

「婚約解消の件、わたしは応じるわ。けどね、パティ。あなたも知っていると思うけど、いくらわたしが応じても、駄目なのよ。わたしのお父様と、チェルニー伯爵の同意がないと」

「そ、そんなこと知っているわ。馬鹿にしないで」

「それは良かったわ。頑張って、説得してね」

「あなたも手伝いなさいよ! 幼馴染みでしょ?!」

「もちろん、わたしの考えはお父様にお伝えするわ。あとはあなたとリッキー次第ね」

 まだ何か言いたそうなパティだったが、タイミングよく鐘が鳴り、舌打ちしながら教室を出ていった。


「ちょ、ちょっとシャノン! いいの?」

 誰より先に話しかけてきたのは、学園に入学してから仲良くなった、クラスメイトのセルマだった。

 まわりを見れば、当然のようにクラス中の者がこちらに注目していて、シャノンはため息をつきたくなった。

 リッキーとどうなるにせよ、まわりにこれらのいざこざを知られずにすませたかった。むろん、今後のために。変な噂が立てば、次の婚約者を探すのが、絶望的になるからだ。

(……王都にくるまで、パティもあそこまでわがままではなかったはずなのに。これもリッキーが甘やかしたせいね)

 こうなってしまえば、真実を話してしまうしかない。シャノンは昨日聞いてしまった、リッキーとパティとの会話を、ざっとセルマに──結果的にはクラス中に、説明した。

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