悪役令嬢なので最初から愛されないことはわかっていましたが、これはさすがに想定外でした。

ふまさ

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 セオドアに協力してもらい、クライブたちに見つかることなく、屋敷へと戻れたフェリシア。

 少し緊張したが、セオドアに信じてもらえたという思いを胸に、両親に王宮で起きた事件の全容を話した。

 両親は少しも疑うことなくフェリシアの言葉を信じ、デリアやクライブに怒りを向けた。陛下のところに行ってくると息巻いたハウエルズ公爵だったが、その前に、国王が自らハウエルズ公爵邸にやってきた。

「──すまなかった」

 応接室で出迎えた国王の第一声は、これだった。三大公爵家とも呼ばれるハウエルズ公爵の怒りに触れることは、なんとしても避けたかったのだろう。それでもフェリシアは、少しだけ、溜飲が下がっていくのを感じた。

「クライブと聖女デリアには、一週間の謹慎処分を言い渡した」

 国王の報告に、ハウエルズ公爵がそれだけかと言わんばかりにこめかみをぴきっとさせた。国王に怒鳴りつける前にハウエルズ公爵を宥めたフェリシアは、国王に向き直った。

「それで、わたしへの処罰は」

 国王は「処罰などない」と言い切り、ハウエルズ公爵は、当然だなと頷いたが、フェリシアは眉根を寄せた。

「それでは二人が納得しないのでは」

「二人とは、聖女デリアとクライブのことか」

「もちろんです」

「証拠がないのにフェリシア嬢を犯人と決めつけたクライブなど論外だ。聖女デリアは……こういってはなんだがどうであれ平民だ。本来なら、極刑になっても文句は言えん」

 ハウエルズ公爵は「せっかく誕生した聖女を手放したくないので、今回のことはこれで水に流せと?」と、怒りに顔を歪ませた。

「……正直。あんな狂ったことを、聖女がしたと思いたくはないのだ」

「では、フェリシアが嘘をついているとおっしゃりたいのですか?」

 いや。強く否定し、国王はとある提案をしてきた。

「聖女デリアには王家の影をつけ、今後の行動をすべて監視する。むろん、聖女デリアにこのことは知らせない。確かな証拠が掴めれば、今度こそ容赦しない。約束しよう。それでどうだろうか」
 
 聖女は、国の宝だ。だからこそ、これが国王のできる最大の譲歩なのだろう。しかしこれも、フェリシアがハウエルズ公爵の子であってこそ。もしそうでなければ、この国王は聖女デリアを信じたのではないかと、頭の隅で疑った。

 ハウエルズ公爵はふうっと息を吐くと、フェリシアの意見を求めた。

「お前はどうしたい? こんなことで許せるか?」

 セオドアと家族は、信じてくれた。そしてどうであれ、国王はクライブとデリアに謹慎処分を言い渡し、フェリシアにはなんの処罰もしないと言った。

 正直、それだけでフェリシアは満足していた。彩香のときと比べて、なんと恵まれていることか。

 デリアには王家の影が監視につく。これからは、あんな嘘は通じない。だからもう、許す許さないはどうでもいい。

 それよりも、今は。

「お二人にかんしては、もういいです。ただ、あのときにも申し上げたとおり、クライブ殿下との婚約を解消したいのですが」

 国王が「ま、待ってくれ!」と叫んだ。

「あの馬鹿は、私が力を込めて打っておいた。なんなら今すぐにここに引き摺ってきて、謝罪をさせよう。しかし、あやつは混乱していたとはいえ、フェリシア嬢を傷付けたことを心から悔いていた。それは本当だ」

「……そうですか」

 国王の台詞はなにも響かなかったが、元凶はデリアであって、クライブはフェリシアを疑っただけ。信じなかっただけ。言ってしまえば、それだけの話しではある。

 日本人で庶民だった前世のときならともかく、それだけで王太子との婚約を解消するのは、理由が弱い。それは理解していたので、フェリシアも、まあそうよね、と諦めに近いかたちで納得した。

 しかし、なにかが吹っ切れたような気もしていて、心は存外、軽かった。

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