不倫をしている私ですが、妻を愛しています。

ふまさ

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「ジェフ様……好きです。愛していますっ」

「私には、愛する妻がいるんだ。だからもう──」

「それでも構いません……っ」

 涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、好きだと繰り返すリンジー。これほどまでに強く、誰かに求められることなど今までなかった。ロッティも愛してはくれているが、想いはきっと、ジェフの方が強い。好きになったのはジェフの方が先で、ロッティは多くの男性に好かれていたから。

(……憐れだ)

 リンジーの生い立ち。現状を思い、ジェフがリンジーの頭にそっと手を置く。リンジーの印象は、笑顔よりも泣き顔が多い。対し、ロッティは真逆だ。

 リンジーに対しての思いは、同情が多くを占めている。けれど少なからず、好意はあった。

 リンジーと口付けしたことはない。でも、何度か身体を重ねてしまったことがある。これは明確な、ロッティへの裏切りだ。わかってはいる。理解はしているのだ。

 早く。早く。この関係を終わらせなければ。 

「……ジェフ様。好きです。好きなんです……っ」

 好意を持つ相手に、これ程まで健気に、かつ情熱的に求められ、断れる男などいるのだろうか。

『貴族の男が、愛人の一人や二人囲わんでどうする』

 思うたび、何の悪びれもなく笑う上司の姿が脳裏を過る。

(……そうだ。これで、最後。これで最後に)

 ジェフとリンジーの肌と肌が重なり合う。窓から差し込む日の光が、二人の足元を、柔く照らしていた。


「おかえりなさい、あなた」

 仕事から帰宅したジェフを、ロッティが笑顔で出迎える。いつもの光景だ。罪悪感から、ジェフはまともにロッティの顔が見れない。

「どうしたの? お仕事大変だった?」

 心配そうに呟くロッティに、愛しさが込み上げてくる。ジェフはそっと、ロッティを抱き締めた。

「ありがとう。大丈夫だよ、ロッティ。愛している」

「ふふ。今朝も聞いたわ」

 リンジーと身体を重ねたあとは、罪悪感で潰されそうになり、しばらくはリンジーと距離をとる。このまま、終わらせよう。ロッティを哀しませる前に。失う前に。

 何度誓ったことだろう。


 しかし。同じ女性でも、こうも違うものかと考えてしまう。いつも人生を呪い、泣いてばかりのリンジー。それに比べてロッティは、悲しい小説を読んで泣くのがせいぜい。

「──きみがいつも笑顔で、嬉しいよ」

 何気ない日常の中。呟くと、ロッティは「そう?」と首をかしげながら、小さく笑った。

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