不倫をしている私ですが、妻を愛しています。

ふまさ

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 リンジーはジェフの屋敷に向かった。街で偶然にジェフとロッティと出会したあの日。二人が乗り込んだ馬車を必死に追いかけ、覚えた道順。

 惨めだった。二人が優雅に馬車に揺られている間、リンジーは見つからないように気を張り、息をきらしながら駆けたのだ。あの時のことを思い出しながら、リンジーは屋敷の扉のノッカーを叩いた。

 こんなことをすれば、ジェフに嫌われてしまう。迷惑をかけてしまう。そんなこと、リンジーの頭にはなかった。

 ただ、ジェフを奪いたい。ロッティに怒りをぶちまけたい。それだけが頭を支配していた。

 扉を開けた使用人が「どちら様ですか?」と訊ねる。リンジーは「ジェフ様と同じ、王宮で働いている者です。奥様はいらっしゃいますか?」と微笑んだ。

「おられますが、どのようなご用件でしょう」

「はい。どうしてもご内密に、お伝えしたいことがありまして」

 そんなやり取りをしていると「あら、あなたは」と、屋敷の中から声がした。その人物が、玄関扉へと近付いてきた。

「確か、リンジーさんでしたよね? どうしてここに?」

 ロッティが微笑む。知り合いだとわかり、ほっとした使用人がロッティに話しかける。

「何やら、内密に奥様に伝えたいことがあるのだとか」

 ロッティが目を丸くし、リンジーへと視線を戻した。

「内密とは、どういったことでしょうか」

「あの……出来れば奥様と二人でお話したいのですが」

 ロッティは少し黙考してから「では、わたしの部屋へどうぞ」とリンジーを招き入れた。あのとき街中で会っていなかったら、こうも簡単にはいかなかっただろう。リンジーはあのときの偶然に感謝した。

 綺麗な部屋。豪華な調度品。目の前のテーブルには、二人分の紅茶と焼き菓子がある。

(……まるで別世界だわ)

 リンジーが苦笑する。

「それで、お話とはなんでしょう」

 ロッティがそわそわしながら、先を急ぐように訊ねる。リンジーはじらすように紅茶を一口飲むと、ほっと息をついた。

 まわりには誰もいない。この部屋には、リンジーとロッティの二人きり。

 リンジーは紅茶の入ったカップをソーサーに置くと、ようやく口火を切った。


「──ねえ、箱入りお嬢様。あなたは一度でも、自分でお金を稼いだことがあるのかしら」

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