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「クリフ。こちらにおいで」
アラスターの呼びかけに、クリフがとてとてと駆け寄ってくる。
「なんでしょう、おとうさま。もうばじゃのなかでまっていなくていいのですか?」
「ああ。大事なことを、クリフに教えなければと思ってね」
アラスターはクリフを抱き上げ、前に立ち尽くすカイラを見た。カイラは、嘘よ、と唖然としていた。
「……ニアさんとの子ども? 嘘……嘘よ。だってアラスターは、あたしとの子どもしか欲しくないって」
ぶつぶつ。ぶつぶつ。涙を流しながら、カイラが呟く。呟く。
「クリフ。この人の顔を、よく覚えておくんだ。この人はわたしを騙し、母様をいじめた悪い人だからな」
クリフは見知らぬ人にキョトンとしていたが、アラスターの説明に、どんどん目を吊り上げていった。
「……このひとは、おとうさまとおかあさまをきずつけたわるいひとなんですね?」
「そうだ。だから決して近付いてはならない。いいな?」
「はい。もしおとうさまがいないときは、ぼくがおかあさまをまもります」
アラスターは満足げに、いい子だ、と口角を上げ、門番に顔を向けた。
「わたしの大事な妻と子どもに害をなすかもしれない存在がこの地にいると、わたしは仕事もなにも手につかなくなってしまう。だからこの女には、生涯、オールディス家の領土に立ち入ることを禁じる。手続きを頼む」
「わかりました。しかし領主様、もしかしてこの女が噂の……」
一人の門番の言葉に、相方が、ああ、と閃いたように声を上げた。
「領主様の、昔のこい──」
「……あとでいくらでも説明するから、せめて、妻と子の前では止めてくれ」
抱き上げたままのクリフの片耳を塞ぎ、アラスターが低く唸る。そんなアラスターの服の袖を、ニアがくいっと引っ張った。
「クリフはともかく、わたしの前ではかまいませんよ? もしなにかお話したいことがあるなら、クリフを連れてお屋敷に戻りますので……いたっ」
無言でニアの頬を抓るアラスター。クリフが、おとうさま、と頬を膨らます。
「おかまさまのほっぺたをつねらないでください!」
どちらかといえばアラスターに同情した門番たちは「ではこの女、連れて行きますね」と、その場をそそくさと後にした。
アラスターの呼びかけに、クリフがとてとてと駆け寄ってくる。
「なんでしょう、おとうさま。もうばじゃのなかでまっていなくていいのですか?」
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「……ニアさんとの子ども? 嘘……嘘よ。だってアラスターは、あたしとの子どもしか欲しくないって」
ぶつぶつ。ぶつぶつ。涙を流しながら、カイラが呟く。呟く。
「クリフ。この人の顔を、よく覚えておくんだ。この人はわたしを騙し、母様をいじめた悪い人だからな」
クリフは見知らぬ人にキョトンとしていたが、アラスターの説明に、どんどん目を吊り上げていった。
「……このひとは、おとうさまとおかあさまをきずつけたわるいひとなんですね?」
「そうだ。だから決して近付いてはならない。いいな?」
「はい。もしおとうさまがいないときは、ぼくがおかあさまをまもります」
アラスターは満足げに、いい子だ、と口角を上げ、門番に顔を向けた。
「わたしの大事な妻と子どもに害をなすかもしれない存在がこの地にいると、わたしは仕事もなにも手につかなくなってしまう。だからこの女には、生涯、オールディス家の領土に立ち入ることを禁じる。手続きを頼む」
「わかりました。しかし領主様、もしかしてこの女が噂の……」
一人の門番の言葉に、相方が、ああ、と閃いたように声を上げた。
「領主様の、昔のこい──」
「……あとでいくらでも説明するから、せめて、妻と子の前では止めてくれ」
抱き上げたままのクリフの片耳を塞ぎ、アラスターが低く唸る。そんなアラスターの服の袖を、ニアがくいっと引っ張った。
「クリフはともかく、わたしの前ではかまいませんよ? もしなにかお話したいことがあるなら、クリフを連れてお屋敷に戻りますので……いたっ」
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「おかまさまのほっぺたをつねらないでください!」
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