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外で待機していたエセルの従者はぎょっとし、何かあったのかと急いで声をかけようとした。けれどその前に、馬車の扉は勢いよく開かれ、そこからエセルと、デレクが連れてきた女性が出てきた。
「お、お嬢様? いかがなされたのですか?」
エセルはルイザの腕を掴み、デレクを睨みつけながら「早くデレクをつかまえて!」と命じた。
訳がわからず、従者が首をひねる。
「デレク様を、ですか? どうして……」
「女性に暴力をふるう男だからです! わたしも何をされるかわかりません!!」
「な……っ」
「違う! エセルにはそんなこと、絶対にしない!!」
慌てて出てきたデレクが、顔面蒼白で声を荒げる。エセルが小さなころから傍にいた従者は、一瞬迷ったものの、素早い動きでデレクの背後をとった。
「……失礼します」
デレクの両腕を後ろで掴む。従者は女だったが、エセルを守るための最低限の武術は心得ている。ひ弱なデレクでは、拘束は振りほどけなかった。
「──はなせ! はなせ!」
デレクが暴れる。エセルの従者はデレクからネクタイを取り外し、それでデレクの腕を拘束した。
そこでようやくほっと胸を撫で下ろしたエセルは、ルイザに向き直り、左頬にそっと触れた。
「もう大丈夫です……痛みますか?」
ルイザは目を潤ませ、いいえ、と答えると、ゆっくりと頭を下げた。
「……デレク様に婚約者がいること、あたしは本当に知りませんでした。ですが、あたしがデレク様の浮気相手であったことにはかわりありません……本当に、申し訳ありませんでした……」
自身も被害者であるのに、震える声で謝罪するルイザに、エセルは胸が締め付けられた。
そして、一つの決意をする。
「お、お嬢様? いかがなされたのですか?」
エセルはルイザの腕を掴み、デレクを睨みつけながら「早くデレクをつかまえて!」と命じた。
訳がわからず、従者が首をひねる。
「デレク様を、ですか? どうして……」
「女性に暴力をふるう男だからです! わたしも何をされるかわかりません!!」
「な……っ」
「違う! エセルにはそんなこと、絶対にしない!!」
慌てて出てきたデレクが、顔面蒼白で声を荒げる。エセルが小さなころから傍にいた従者は、一瞬迷ったものの、素早い動きでデレクの背後をとった。
「……失礼します」
デレクの両腕を後ろで掴む。従者は女だったが、エセルを守るための最低限の武術は心得ている。ひ弱なデレクでは、拘束は振りほどけなかった。
「──はなせ! はなせ!」
デレクが暴れる。エセルの従者はデレクからネクタイを取り外し、それでデレクの腕を拘束した。
そこでようやくほっと胸を撫で下ろしたエセルは、ルイザに向き直り、左頬にそっと触れた。
「もう大丈夫です……痛みますか?」
ルイザは目を潤ませ、いいえ、と答えると、ゆっくりと頭を下げた。
「……デレク様に婚約者がいること、あたしは本当に知りませんでした。ですが、あたしがデレク様の浮気相手であったことにはかわりありません……本当に、申し訳ありませんでした……」
自身も被害者であるのに、震える声で謝罪するルイザに、エセルは胸が締め付けられた。
そして、一つの決意をする。
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