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エセルは出立の準備の間に手早く今回のことを手紙にしたため、父親であるホラーク伯爵に送った。馬車よりも早馬の方が数日早くホラーク伯爵の屋敷に着くため、ことは考えていたよりもずっとスムーズに進んだ。
ストイチコフ伯爵の元にエセルたちが着く数時間前には、ホラーク伯爵も、そこに到着していた。ホラーク伯爵はことの次第を把握しているが、ストイチコフ伯爵たちは、まだ何も知らない状況だった。
「それで。これは、いったい何の集まりですかな?」
ストイチコフ伯爵の屋敷の応接室には、ストイチコフ伯爵と、ストイチコフ伯爵夫人。ホラーク伯爵と、エセル。そしてデレクと、ルイザがいた。
全員が席に着くなり、ストイチコフ伯爵はたまらず口火を切った。何も説明していないのだから、当然だろう。まして、見ず知らずの平民がエセルの隣に座っているうえ、デレクは憔悴しきったように項垂れているのだから。
「はい。全て、お話いたします」
まずは、エセルから語った。デレクから紹介したい人がいると言われ、その相手が隣にいるルイザで、結婚したのちに、彼女を愛人として屋敷に迎え入れたいと言われたことを。
そこまで話して、エセルはストイチコフ伯爵たちを観察してみた。それの何がいけないのか。そう問われることも覚悟していたのだが。
「ば、馬鹿か! お前は何てことを……っっ」
真っ青になりながら、ストイチコフ伯爵はデレクに怒鳴った。デレクが、キョトンとする。
「で、ですが……父上は、貴族たるもの、愛人の一人や二人いないと、と……」
「?! あなた! そんな愚かなことをこの子に言っていたのですか?!」
席を立ち、隣に座るストイチコフ伯爵に激怒したのは、ストイチコフ伯爵夫人だった。
思っていた反応と違う。
三人の正面に座るエセルとルイザは、思わず顔を見合わせていた。
ストイチコフ伯爵の元にエセルたちが着く数時間前には、ホラーク伯爵も、そこに到着していた。ホラーク伯爵はことの次第を把握しているが、ストイチコフ伯爵たちは、まだ何も知らない状況だった。
「それで。これは、いったい何の集まりですかな?」
ストイチコフ伯爵の屋敷の応接室には、ストイチコフ伯爵と、ストイチコフ伯爵夫人。ホラーク伯爵と、エセル。そしてデレクと、ルイザがいた。
全員が席に着くなり、ストイチコフ伯爵はたまらず口火を切った。何も説明していないのだから、当然だろう。まして、見ず知らずの平民がエセルの隣に座っているうえ、デレクは憔悴しきったように項垂れているのだから。
「はい。全て、お話いたします」
まずは、エセルから語った。デレクから紹介したい人がいると言われ、その相手が隣にいるルイザで、結婚したのちに、彼女を愛人として屋敷に迎え入れたいと言われたことを。
そこまで話して、エセルはストイチコフ伯爵たちを観察してみた。それの何がいけないのか。そう問われることも覚悟していたのだが。
「ば、馬鹿か! お前は何てことを……っっ」
真っ青になりながら、ストイチコフ伯爵はデレクに怒鳴った。デレクが、キョトンとする。
「で、ですが……父上は、貴族たるもの、愛人の一人や二人いないと、と……」
「?! あなた! そんな愚かなことをこの子に言っていたのですか?!」
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