美形揃いの王族の中で珍しく不細工なわたしを、王子がその顔で本当に王族なのかと皮肉ってきたと思っていましたが、実は違ったようです。

ふまさ

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 いや、駄目だ。感傷に浸っている場合ではないと、セシリーは姿勢を正した。
 
 どうしても、伝えておかなければならないことがあったから。

「あの、サイラス殿下。わたしに婚約を申し込んだこと、両親と姉には言わないでいただけますか?」

「──理由は?」

 サイラスが柔く問う。セシリーはつかの間、口をつぐんだ。けれどすぐに、この方ならと口を開いた。

「両親と姉は、機嫌が悪くなると使用人たちにきつくあたる人たちなんです。怒鳴ったり……酷いときには暴力をふるうこともあります。あの人たちはわたしを見下しているから……サイラス殿下に婚約を申し込まれたなんて知ったら、きっと不機嫌になります……だから」

 セシリーが膝の上に置いたこぶしを握る。家族から見下されていることはもちろん、家族の醜悪さをわざわざ暴露しているのだから仕方のないことだが、内心では、羞恥心でいっぱいだったから。

「そうか……」

 囁かれた声音に、労るような、それでいて包みこむような優しさを感じたセシリーは、思わずサイラスを見つめた。その双眸に呆れなどの感情は一切宿っておらず、セシリーはまた、泣きそうになった。

 サイラスが「……優しいな」と呟く。けれどそれは、セシリーの耳に届かないぐらいの小声で。

「……え? あの、何かおっしゃいましたか?」

「いいや? とにかく、事情はよくわかった。今日きみを訊ねてきたのは──昨日の件を謝罪しに来たとでも言っておくよ。それは嘘ではないしね」

 言いながら、サイラスは席を立った。セシリーが、あ、と小さく声をもらす。

「も、もうお帰りになるのですか?」

「ああ。父上たちに早くきみとの婚約を了承してもらいたいからな。もし良い返事をもらえたら、すぐにきみにしらせるよ──それでいいか?」

 暗に、婚約話を進めてよいかと問われた気がして、セシリーは頬を緩めながら答えた。

「はい。お待ちしております」



 けれどそれから半月が経っても、サイラスが屋敷を訪れることはなく、手紙もしらせも来なかった。

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