全てをわたしの責任にして、わたしとの婚約を破棄したかったようですが……。

ふまさ

文字の大きさ
8 / 17

8

 その科白に焦ったのは、ローナだった。

「パトリス様……けれど……っ」

 パトリスが宥めるように、ローナの頭を撫でた。

「この者はあなたの婚約者ですからね。いずれは、知ることとなっていたはず」

「……でも、もう」

 パトリスはローナに小さく微笑むと「では、行きましょうか」と、ヘクターに向き直った。

「行く、とは……」

「いくら人気がまばらとはいえ、こんなところで話すわけにはいきませんからね」

 パトリスがローナの肩を抱き、歩きはじめる。ローナが、痛むお腹を咄嗟におさえたのを見て、パトリスはぴくりと眉を動かしたが、そのままローナを気遣うように歩く速度をゆるめただけで、何も問おうとはしなかった。

 ──全ては、あの方の判断に従いましょう。

 胸中で呟くパトリス。その後ろを、いぶかしみながらもついてくるヘクター。目的地は、医務室と同じ一階にある。その部屋の前にほどなく着いたパトリスは、足を止めた。

 そこは、この学園の生徒会室だった。

「……まさか、ここで話しを?」

 ヘクターの問いに「ええ」と、簡潔に答えるパトリス。

「……生徒会役員は、もう全員お帰りに?」

「いいえ。ユーイン様と、デールが残っていますよ」

「で、殿下が?!」

「そんなに驚くことですか? ユーイン様は、生徒会の会長ですよ? 生徒会室にいても、何ら不思議ではないでしょう?」

「そ、そういうことではなく……ぼくは、あなたとローナの関係を知りたいだけで……っ」
 

 パトリスは「必要だから、ここに来たのです」と言い、生徒会室の扉をノックした。

あなたにおすすめの小説

令嬢が婚約破棄をした数年後、ひとつの和平が成立しました。

夢草 蝶
恋愛
 公爵の妹・フューシャの目の前に、婚約者の恋人が現れ、フューシャは婚約破棄を決意する。  そして、婚約破棄をして一週間も経たないうちに、とある人物が突撃してきた。

変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!

utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑) 妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?! ※適宜内容を修正する場合があります

悪役令嬢の妹は復讐を誓う

影茸
恋愛
王子との婚約を冤罪によって破棄され、何もかも失った少女メイア・ストラード。 そしてその妹、アリアは絶望に嘆き悲しむ姉の姿を見て婚約を破棄した王子に復讐を誓う。

死に戻るなら一時間前に

みねバイヤーン
恋愛
「ああ、これが走馬灯なのね」  階段から落ちていく一瞬で、ルルは十七年の人生を思い出した。侯爵家に生まれ、なに不自由なく育ち、幸せな日々だった。素敵な婚約者と出会い、これからが楽しみだった矢先に。 「神様、もし死に戻るなら、一時間前がいいです」  ダメ元で祈ってみる。もし、ルルが主人公特性を持っているなら、死に戻れるかもしれない。  ピカッと光って、一瞬目をつぶって、また目を開くと、目の前には笑顔の婚約者クラウス第三王子。 「クラウス様、聞いてください。私、一時間後に殺されます」 一時間前に死に戻ったルルは、クラウスと共に犯人を追い詰める──。

わたしと婚約破棄? では、一族の力を使って復讐させていただきますね

ともボン
恋愛
 伯爵令嬢カスミ・リンドバーグは、第二王太子シグマとの婚約お披露目パーティーで衝撃的な告白をされる。 「カスミ・リンドバーグ! やはりお前とは結婚できない! なのでこの場において、この僕――ガルディア王国の第二王太子であるシグマ・ガルディアによって婚約を破棄する!」  理由は、カスミが東方の血を引く“蛮族女”だから。  さらにシグマは侯爵令嬢シルビアを抱き寄せ、彼女と新たに婚約すると貴族諸侯たちに宣言した。  屈辱に染まる大広間――だが、カスミの黒瞳は涙ではなく、冷ややかな光を宿していた。 「承知しました……それではただいまより伯爵令嬢カスミ・リンドバーグではなく、ガルディア王国お庭番衆の統領の娘――カスミ・クレナイとして応対させていただきます」  カスミが指を鳴らした瞬間、ホール内に潜んでいたカスミの隠密護衛衆が一斉に動き出す。  気がつけばシグマは王城地下牢の中だった。  そこに現れたのは、国王バラモンと第一王太子キース――。  二人はカスミこそ隣国との戦争で王国を勝利へ導いたクレナイ一族の姫であり、シグマの暴挙は王家にとっても許されぬ大罪だとしてシグマとの縁を切った。  それだけではなく、シグマには想像を絶する処罰が下される。  これは婚約破棄から生まれる痛快な逆転劇と新たなラブストーリー。

敵対勢力の私は、悪役令嬢を全力で応援している。

マイネ
恋愛
 最近、第一皇子殿下が婚約者の公爵令嬢を蔑ろにして、男爵令嬢と大変親しい仲だとの噂が流れている。  どうやら第一皇子殿下は、婚約者の公爵令嬢を断罪し、男爵令嬢を断罪した令嬢の公爵家に、養子縁組させた上で、男爵令嬢と婚姻しようとしている様だ。  しかし、断罪される公爵令嬢は事態を静観しておりました。  この状況は、1人のご令嬢にとっては、大変望ましくない状況でした。そんなご令嬢のお話です。

傷物令嬢は魔法使いの力を借りて婚約者を幸せにしたい

恋愛
ローゼライト=シーラデンの額には傷がある。幼い頃、幼馴染のラルスに負わされた傷で責任を取る為に婚約が結ばれた。 しかしローゼライトは知っている。ラルスには他に愛する人がいると。この婚約はローゼライトの額に傷を負わせてしまったが為の婚約で、ラルスの気持ちが自分にはないと。 そこで、子供の時から交流のある魔法使いダヴィデにラルスとの婚約解消をしたいと依頼をするのであった。

《完結》悪女と噂されたわたくしのざまぁ

ヴァンドール
恋愛
悪女と噂のわたくしとの結婚なら、どれほど軽んじても問題はないと思っていた旦那様。 ところが……。