9 / 29
9
マケラ子爵邸に着くなり、待ちきれないとばかりに真っ先に口を開いたのはグレースだった。
オリヴィアとデイルが口を挟む間もなく、グレースがデイルを好きだったこと。デイルもグレースを想ってくれていたこと。なにより、それをオリヴィアが応援してくれると言ってくれたことを興奮しながら語ってみせた。
両親はそれを祝福してくれると信じて疑わない。そんな思いが、グレースの態度や言動から強く伝わってきた。
実際、マケラ子爵夫人は「まあ、まあっ」とグレースの話を聞きながら感激している様子だった。対してマケラ子爵は、少々困惑しているようだった。しかし、オリヴィアはその訳を、ちゃんと理解していた。
マケラ子爵は別に、オリヴィアが傷付いているかどうかを心配していたわけではないということを。
「グレースが幸せになるのはとても喜ばしいことだが……ペルソン伯爵たちは、それを許してくれるのか? ペルソン伯爵夫人は、ナタリアの親友だった人だ。だからこそ、デイルとオリヴィアの婚約は結ばれた。なのに」
グレースとマケラ子爵夫人が、不思議そうに首をかしげる。
「だって、あたしとデイル様は愛し合っていて、それを他でもないお義姉様が応援すると言ってくれたんですよ? それを反対するなんてひどいこと、デイル様の親がします?」
「そうですよ、あなた」
それでも不安そうなマケラ子爵は、デイルに視線を移した。
「このこと、ペルソン伯爵とペルソン伯爵夫人にはまだ知らせていない、よな?」
先に了承してもらっていてくれ、という願いを込めた質問だったが、デイルは気まずそうに首を左右にふった。
「……いえ、これからです」
マケラ子爵は、だろうな、と肩を落とし、今度はオリヴィアに顔を向けてきた。
「オリヴィア、いいのか? 本当に、二人の婚約を認めるんだな?」
オリヴィアが納得しているなら、ペルソン伯爵夫妻も説得できると考えたのだろう。念を押すように、マケラ子爵が聞いてきた。
やはりというか。オリヴィアの心を心配する人は、ここには誰もいなかった。
「はい」
はっきり答えると、マケラ子爵は、そうか、と覚悟を決めたようだった。
「わかった。それがみなの願いなら、もうなにも言うまい。すぐにペルソン伯爵に手紙を出し、返事をもらいしだい、ペルソン伯爵邸に行くとしよう。そしてグレースとデイルの婚約を認めてもらうのだ」
マケラ子爵が宣言すると、オリヴィア以外の全員が、はい、と元気よく声を揃えた。
その場にはマケラ子爵家の使用人たちもいたが、何人かがオリヴィアに憐れみの目を向ける程度で、疑問の声を投げかける者は、当たり前だが、誰一人としていなかった。
オリヴィアとデイルが口を挟む間もなく、グレースがデイルを好きだったこと。デイルもグレースを想ってくれていたこと。なにより、それをオリヴィアが応援してくれると言ってくれたことを興奮しながら語ってみせた。
両親はそれを祝福してくれると信じて疑わない。そんな思いが、グレースの態度や言動から強く伝わってきた。
実際、マケラ子爵夫人は「まあ、まあっ」とグレースの話を聞きながら感激している様子だった。対してマケラ子爵は、少々困惑しているようだった。しかし、オリヴィアはその訳を、ちゃんと理解していた。
マケラ子爵は別に、オリヴィアが傷付いているかどうかを心配していたわけではないということを。
「グレースが幸せになるのはとても喜ばしいことだが……ペルソン伯爵たちは、それを許してくれるのか? ペルソン伯爵夫人は、ナタリアの親友だった人だ。だからこそ、デイルとオリヴィアの婚約は結ばれた。なのに」
グレースとマケラ子爵夫人が、不思議そうに首をかしげる。
「だって、あたしとデイル様は愛し合っていて、それを他でもないお義姉様が応援すると言ってくれたんですよ? それを反対するなんてひどいこと、デイル様の親がします?」
「そうですよ、あなた」
それでも不安そうなマケラ子爵は、デイルに視線を移した。
「このこと、ペルソン伯爵とペルソン伯爵夫人にはまだ知らせていない、よな?」
先に了承してもらっていてくれ、という願いを込めた質問だったが、デイルは気まずそうに首を左右にふった。
「……いえ、これからです」
マケラ子爵は、だろうな、と肩を落とし、今度はオリヴィアに顔を向けてきた。
「オリヴィア、いいのか? 本当に、二人の婚約を認めるんだな?」
オリヴィアが納得しているなら、ペルソン伯爵夫妻も説得できると考えたのだろう。念を押すように、マケラ子爵が聞いてきた。
やはりというか。オリヴィアの心を心配する人は、ここには誰もいなかった。
「はい」
はっきり答えると、マケラ子爵は、そうか、と覚悟を決めたようだった。
「わかった。それがみなの願いなら、もうなにも言うまい。すぐにペルソン伯爵に手紙を出し、返事をもらいしだい、ペルソン伯爵邸に行くとしよう。そしてグレースとデイルの婚約を認めてもらうのだ」
マケラ子爵が宣言すると、オリヴィア以外の全員が、はい、と元気よく声を揃えた。
その場にはマケラ子爵家の使用人たちもいたが、何人かがオリヴィアに憐れみの目を向ける程度で、疑問の声を投げかける者は、当たり前だが、誰一人としていなかった。
あなたにおすすめの小説
【完結】飽きたからと捨てられていたはずの姉の元恋人を押し付けられたら、なぜか溺愛されています!
Rohdea
恋愛
──今回も飽きちゃった。だからアンタに譲ってあげるわ、リラジエ。
伯爵令嬢のリラジエには、社交界の毒薔薇と呼ばれる姉、レラニアがいる。
自分とは違って美しい姉はいつも恋人を取っかえ引っ変えしている事からこう呼ばれていた。
そんな姉の楽しみは、自分の捨てた元恋人を妹のリラジエに紹介しては、
「妹さんは無理だな」と笑われバカにされる所を見て楽しむ、という最低なものだった。
そんな日々にウンザリするリラジエの元へ、
今日も姉の毒牙にかかり哀れにも捨てられたらしい姉の元恋人がやって来た。
しかし、今回の彼……ジークフリートは何故かリラジエに対して好意的な反応を見せた為、戸惑ってしまう。
これまでの姉の元恋人とは全く違う彼からの謎のアプローチで2人の距離はどんどん縮まっていくけれど、
身勝手な姉がそれを黙って見ているはずも無く……
所詮私は他人でしたね でも対価をくれるなら家族の役割を演じてあげます
れもんぴーる
恋愛
シャリエ子爵家には昔、行方不明になった娘アナベルがいた。十三年ぶりに戻って来たアナベルに、セシルは姉が出来たと喜んだ。だが―――アナベルはセシルを陥れようと画策する。婚約者はアナベルと婚約を結びなおし、両親や兄にも虐げられたセシルだったが、この世界はゲームの世界であることを思い出す。セシルの冤罪は証明され、家を出ようとするが父と兄から必死で引き留められる。それならばと、セシルは家を出て行かない代わりに、「娘」を演じる報酬を要求するのだった。数年後、資金が溜まり家を出て自らの手で幸せを掴もうとしているセシルと新しくできた婚約者マルクの前に再びアナベルは現れる。マルクはアナベルの魔の手から逃れられるのか? セシルはアナベルの悪意から逃げきれ幸せになれるのか?(なります (≧▽≦))
*ゲームを題材にしたの初めてですが、あんまりその要素は強くないかも(;'∀')。あと、少しですが不自然にコメディタッチが出てきます。作者がシリアスだけだと耐えれないので、精神安定の為に放り込む場合がありますm(__)m。
*他サイトにも投稿していく予定です。(カクヨム、なろう)
悪役令息(冤罪)が婿に来た
花車莉咲
恋愛
前世の記憶を持つイヴァ・クレマー
結婚等そっちのけで仕事に明け暮れていると久しぶりに参加した王家主催のパーティーで王女が婚約破棄!?
王女が婚約破棄した相手は公爵令息?
王女と親しくしていた神の祝福を受けた平民に嫌がらせをした?
あれ?もしかして恋愛ゲームの悪役令嬢じゃなくて悪役令息って事!?しかも公爵家の元嫡男って…。
その時改めて婚約破棄されたヒューゴ・ガンダー令息を見た。
彼の顔を見た瞬間強い既視感を感じて前世の記憶を掘り起こし彼の事を思い出す。
そうオタク友達が話していた恋愛小説のキャラクターだった事を。
彼が嫌がらせしたなんて事実はないという事を。
その数日後王家から正式な手紙がくる。
ヒューゴ・ガンダー令息と婚約するようにと「こうなったらヒューゴ様は私が幸せする!!」
イヴァは彼を幸せにする為に奮闘する。
「君は…どうしてそこまでしてくれるんだ?」「貴方に幸せになってほしいからですわ!」
心に傷を負い悪役令息にされた男とそんな彼を幸せにしたい元オタク令嬢によるラブコメディ!
※ざまぁ要素はあると思います。
※何もかもファンタジーな世界観なのでふわっとしております。
家族に裏切られて辺境で幸せを掴む?
しゃーりん
恋愛
婚約者を妹に取られる。
そんな小説みたいなことが本当に起こった。
婚約者が姉から妹に代わるだけ?しかし私はそれを許さず、慰謝料を請求した。
婚約破棄と共に跡継ぎでもなくなったから。
仕事だけをさせようと思っていた父に失望し、伯父のいる辺境に行くことにする。
これからは辺境で仕事に生きよう。そう決めて王都を旅立った。
辺境で新たな出会いがあり、付き合い始めたけど?というお話です。
〈完結〉姉と母の本当の思いを知った時、私達は父を捨てて旅に出ることを決めました。
江戸川ばた散歩
恋愛
「私」男爵令嬢ベリンダには三人のきょうだいがいる。だが母は年の離れた一番上の姉ローズにだけ冷たい。
幼いながらもそれに気付いていた私は、誕生日の晩、両親の言い争いを聞く。
しばらくして、ローズは誕生日によばれた菓子職人と駆け落ちしてしまう。
それから全寮制の学校に通うこともあり、家族はあまり集わなくなる。
母は離れで暮らす様になり、気鬱にもなる。
そしてローズが出ていった歳にベリンダがなった頃、突然ローズから手紙が来る。
そこにはベリンダがずっと持っていた疑問の答えがあった。
居候と婚約者が手を組んでいた!
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
グリンマトル伯爵家の一人娘のレネットは、前世の記憶を持っていた。前世は体が弱く入院しそのまま亡くなった。その為、病気に苦しむ人を助けたいと思い薬師になる事に。幸いの事に、家業は薬師だったので、いざ学校へ。本来は17歳から通う学校へ7歳から行く事に。ほらそこは、転生者だから!
って、王都の学校だったので寮生活で、数年後に帰ってみると居候がいるではないですか!
父親の妹家族のウルミーシュ子爵家だった。同じ年の従姉妹アンナがこれまたわがまま。
アンアの母親で父親の妹のエルダがこれまたくせ者で。
最悪な事態が起き、レネットの思い描いていた未来は消え去った。家族と末永く幸せと願った未来が――。
(完結)妹の婚約者である醜草騎士を押し付けられました。
ちゃむふー
恋愛
この国の全ての女性を虜にする程の美貌を備えた『華の騎士』との愛称を持つ、
アイロワニー伯爵令息のラウル様に一目惚れした私の妹ジュリーは両親に頼み込み、ラウル様の婚約者となった。
しかしその後程なくして、何者かに狙われた皇子を護り、ラウル様が大怪我をおってしまった。
一命は取り留めたものの顔に傷を受けてしまい、その上武器に毒を塗っていたのか、顔の半分が変色してしまい、大きな傷跡が残ってしまった。
今まで華の騎士とラウル様を讃えていた女性達も掌を返したようにラウル様を悪く言った。
"醜草の騎士"と…。
その女性の中には、婚約者であるはずの妹も含まれていた…。
そして妹は言うのだった。
「やっぱりあんな醜い恐ろしい奴の元へ嫁ぐのは嫌よ!代わりにお姉様が嫁げば良いわ!!」
※醜草とは、華との対照に使った言葉であり深い意味はありません。
※ご都合主義、あるかもしれません。
※ゆるふわ設定、お許しください。
【完結】冤罪で殺された王太子の婚約者は100年後に生まれ変わりました。今世では愛し愛される相手を見つけたいと思っています。
金峯蓮華
恋愛
どうやら私は階段から突き落とされ落下する間に前世の記憶を思い出していたらしい。
前世は冤罪を着せられて殺害されたのだった。それにしても酷い。その後あの国はどうなったのだろう?
私の願い通り滅びたのだろうか?
前世で冤罪を着せられ殺害された王太子の婚約者だった令嬢が生まれ変わった今世で愛し愛される相手とめぐりあい幸せになるお話。
緩い世界観の緩いお話しです。
ご都合主義です。
*タイトル変更しました。すみません。