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囚われの勇者
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「ん......、んん?」
? 朝か? あれ、目覚ましかけたはずだよな? って、ああそうか。すっかり忘れてたぜ。俺は今、高校二年生という縛りを外れて、勇者へと転生したんだったな。
だとするとここはもう、我が家にある自室ではなく、異世界のどこかというわけだ。
やれやれ、これから世界を救うことになるんだと考えると、ずいぶんと大役を任せられたものだ。
さてと、いつまでも横になっている場合ではない。早速行動にうつ......。
ガシャッ
? ガシャッ? え? 何だ今の音は? 鎖の音?
異音に反応してとっさに体を動かそうとするのだが、何故か肉体が上手く動かせない。
「あっ」
そしてすぐに自分に起きた異変の正体に気付いた。両の手が床から伸びる分厚い鎖のついた手錠でガッチリとロックされていたのだ。そのため上半身を起こすことはできでも立ち上がることまではできなかったようだ。
「は? え? な、何で?」
突然の事態に頭が混乱してしまう。まあ、無理もない。誰だって目が覚めて両手を拘束されていたら、そりゃショックだ。いや、それ以上に俺がショックだったのは、勇者としての人生を最高のスタートで切るつもりだったのが、その計画が全て水の泡となったことだろう。
というかやけに違和感がないと思ったら、着ているものがパンツ一枚だけじゃねえかよ!? 転生前は普段から実家でパンイチで過ごしていたので全く気づかなかったが、パンツ一枚が勇者の初期装備なのはヤバくない? えっ、布の服ぐらい着させてくれないの?
......まあいい。今はとにかく情報を集めることが最優先だ。
ふぅー、少し落ち着いてきたかな......? 余裕があるわけではないが、改めて自分がいる場所を念入りによぉく確認するとしよう。
現在地の状況はこうだ。
ええと、どうやら今俺は牢の中にいるようだ。檻の向こうに松明が見えたから、ここは地下牢なのだろうか? 石壁と石床はすすや油のようなもので汚れていて、そこに小さなぼろ切れが一枚だけ敷かれていて、その上に俺が座り込んでいる。部屋の端には強烈な異臭を放つ大きめの壺が置かれていた。あれは多分トイレだろうな......、転生前に見た古いドラマとかでもあんなのが置かれてあったわ。
ええと、この現況から判断するに俺は何かしらの理由で捕まってしまったということか? いやいやいや、そんなわけがない!
えっ、だって俺は選ばれし勇者だぞ? 何で世界を救う英雄が知らないうちに罪人にされてんだよ?
敢えて可能性を考えるのだとしたら、ここが敵の本拠地であって勇者の俺が捕らえられているというシチュエーションだ。
まあ、これはないな......。いきなりラストダンジョンからスタートするRPGなんて面白味に欠ける。というかレベル差で無理ゲーだろう。ただそれはあくまでもゲームをするプレイヤーの心理であって、ゲーム内のキャラクターからしてみればラストから始められるのは好都合かもしれないけれど......。
ええと他に考えられる可能性......、そもそもの転生に失敗したとかか? 実は個人的にこの可能性が最もあり得ることだと思っていたりする。
そもそもの俺の考えでは転生=人生のやり直し なので、てっきり異世界のスタートはどっかの村の赤ん坊として生まれるものかと思っていた。だが実際はそうではなく、こうして転生前の死んだときとほぼ同じ、十七歳のときと何ら変わらない肉体での復活だった。この分だと見た目も多分変化してないよなぁ......。できれば前よりもグレードアップした姿になっていてほしいんだけれど......。
ただ正直赤ん坊からのスタートは、勇者となるまで気が遠くなるような時間を費やしそうだったから、死んだ当時の身体で転生できてまだよかったとも言える。そもそも赤ちゃんだからまともに喋れないし、自由もないだろうしな。
うーん、そう考えると転生に失敗したとも言いにくいよなぁ(成功とも言いづらいが)。
だとすれば、今のこの俺の状態はストーリー的には正解ルートを辿っているからこそ発生したイベントなのか?
ああ、そういえば現実世界のゲームに、主人公を牢屋から操して始めるパターンがあるのも珍しくないか。決して王道ではないが、その後のストーリーが嵌まれば、特に問題ないしな。
ガシャ ガシャ
「? おっ?」
などと牢の中で熟考していたら、檻の外から妙な金属音が聞こえてきた。いや、これは足音か? 誰かがこちらに近づいてきているのか?
「こちらです! 団長殿、副団長殿! 先ほどオルベの町で捕らえた罪人は!!」
? へ? 団長と......、副団長だと? おいおい、何かいきなりとんでもない地位の人が現れちゃったんだけど......。これもストーリ-の流れ的には正しいのだろうか?
「そこの貴様っ!! 何をボーッとしている!? 我らが騎士団のツートップがお目見えだ!! 顔を上げよ!」
うるさいなぁ......、ちゃんとやるからそれぐらいで怒鳴るなっての。
「それではこれより囚人の尋問を行います。お二方もどうかご清聴ください」
「んん? 尋問?」
......何かどんどん雲行きが怪しくなってきてる気がする。
? 朝か? あれ、目覚ましかけたはずだよな? って、ああそうか。すっかり忘れてたぜ。俺は今、高校二年生という縛りを外れて、勇者へと転生したんだったな。
だとするとここはもう、我が家にある自室ではなく、異世界のどこかというわけだ。
やれやれ、これから世界を救うことになるんだと考えると、ずいぶんと大役を任せられたものだ。
さてと、いつまでも横になっている場合ではない。早速行動にうつ......。
ガシャッ
? ガシャッ? え? 何だ今の音は? 鎖の音?
異音に反応してとっさに体を動かそうとするのだが、何故か肉体が上手く動かせない。
「あっ」
そしてすぐに自分に起きた異変の正体に気付いた。両の手が床から伸びる分厚い鎖のついた手錠でガッチリとロックされていたのだ。そのため上半身を起こすことはできでも立ち上がることまではできなかったようだ。
「は? え? な、何で?」
突然の事態に頭が混乱してしまう。まあ、無理もない。誰だって目が覚めて両手を拘束されていたら、そりゃショックだ。いや、それ以上に俺がショックだったのは、勇者としての人生を最高のスタートで切るつもりだったのが、その計画が全て水の泡となったことだろう。
というかやけに違和感がないと思ったら、着ているものがパンツ一枚だけじゃねえかよ!? 転生前は普段から実家でパンイチで過ごしていたので全く気づかなかったが、パンツ一枚が勇者の初期装備なのはヤバくない? えっ、布の服ぐらい着させてくれないの?
......まあいい。今はとにかく情報を集めることが最優先だ。
ふぅー、少し落ち着いてきたかな......? 余裕があるわけではないが、改めて自分がいる場所を念入りによぉく確認するとしよう。
現在地の状況はこうだ。
ええと、どうやら今俺は牢の中にいるようだ。檻の向こうに松明が見えたから、ここは地下牢なのだろうか? 石壁と石床はすすや油のようなもので汚れていて、そこに小さなぼろ切れが一枚だけ敷かれていて、その上に俺が座り込んでいる。部屋の端には強烈な異臭を放つ大きめの壺が置かれていた。あれは多分トイレだろうな......、転生前に見た古いドラマとかでもあんなのが置かれてあったわ。
ええと、この現況から判断するに俺は何かしらの理由で捕まってしまったということか? いやいやいや、そんなわけがない!
えっ、だって俺は選ばれし勇者だぞ? 何で世界を救う英雄が知らないうちに罪人にされてんだよ?
敢えて可能性を考えるのだとしたら、ここが敵の本拠地であって勇者の俺が捕らえられているというシチュエーションだ。
まあ、これはないな......。いきなりラストダンジョンからスタートするRPGなんて面白味に欠ける。というかレベル差で無理ゲーだろう。ただそれはあくまでもゲームをするプレイヤーの心理であって、ゲーム内のキャラクターからしてみればラストから始められるのは好都合かもしれないけれど......。
ええと他に考えられる可能性......、そもそもの転生に失敗したとかか? 実は個人的にこの可能性が最もあり得ることだと思っていたりする。
そもそもの俺の考えでは転生=人生のやり直し なので、てっきり異世界のスタートはどっかの村の赤ん坊として生まれるものかと思っていた。だが実際はそうではなく、こうして転生前の死んだときとほぼ同じ、十七歳のときと何ら変わらない肉体での復活だった。この分だと見た目も多分変化してないよなぁ......。できれば前よりもグレードアップした姿になっていてほしいんだけれど......。
ただ正直赤ん坊からのスタートは、勇者となるまで気が遠くなるような時間を費やしそうだったから、死んだ当時の身体で転生できてまだよかったとも言える。そもそも赤ちゃんだからまともに喋れないし、自由もないだろうしな。
うーん、そう考えると転生に失敗したとも言いにくいよなぁ(成功とも言いづらいが)。
だとすれば、今のこの俺の状態はストーリー的には正解ルートを辿っているからこそ発生したイベントなのか?
ああ、そういえば現実世界のゲームに、主人公を牢屋から操して始めるパターンがあるのも珍しくないか。決して王道ではないが、その後のストーリーが嵌まれば、特に問題ないしな。
ガシャ ガシャ
「? おっ?」
などと牢の中で熟考していたら、檻の外から妙な金属音が聞こえてきた。いや、これは足音か? 誰かがこちらに近づいてきているのか?
「こちらです! 団長殿、副団長殿! 先ほどオルベの町で捕らえた罪人は!!」
? へ? 団長と......、副団長だと? おいおい、何かいきなりとんでもない地位の人が現れちゃったんだけど......。これもストーリ-の流れ的には正しいのだろうか?
「そこの貴様っ!! 何をボーッとしている!? 我らが騎士団のツートップがお目見えだ!! 顔を上げよ!」
うるさいなぁ......、ちゃんとやるからそれぐらいで怒鳴るなっての。
「それではこれより囚人の尋問を行います。お二方もどうかご清聴ください」
「んん? 尋問?」
......何かどんどん雲行きが怪しくなってきてる気がする。
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