兄弟揃って転生したら勇者と伝説の武器だった件

夜風空

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二人の騎士

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 騎士団というワードを聞くかぎり、どうやら俺が幽閉されているこの場所は、どこかの王国の地下牢といったところか?

 どうやら最初に挙げていた、この地下牢が敵軍の本拠地で、前代未聞のラストダンジョンからの冒険スタートという可能性は消えたわけだ。

 ただ安心は全くできないが......、なんせこれから尋問が始まるのだから。

「ふん、この男が例の囚人なのね? オルベの町中で裸で眠っていたという男は......」

 俺から見て左側に立っていた女騎士がこちらを睨みながら、そう述べる。

 その容姿は紫のメッシュが入った青髪のロングヘアーで、現実世界で例えるならアイドルグループのセンターに抜擢されそうなほどの顔立ちの整った可憐な美少女だ。独特な白デザインの鎧を着てはいるが、俺がいた世界なら誰も彼女を騎士とは思わないはずだ(多分コスプレイヤーに勘違いされると思う)。

 それにしても町中で裸だと? 牢獄から転生されていたわけじゃあないのか?

「ガッハハハハハッ!! こいつは傑作だぜ!? 市街地の真ん中で堂々とパンツ一枚で眠ってたらしいじゃねえか!? とんだ変態野郎がいたもんだ!」

 今度は右側に立っていた大柄の男が、ふざけたような笑い声をあげる。

 全身トゲトゲの痛々しいデザインの鎧を着用した黒髪の男だ。歳は見た目から前世の俺の父親と同じぐらい、多分四十歳ぐらいだろうか?

「ダルガス副団長、今はこの男の尋問が先よ。罵倒なら後にしてくれないかしら?」

「おっと、これは失礼......。さすがは我らが団長、罪人を前にしても至って冷静ですな」

 ......ん? えっ!? 団長ってそっちの女の子のほうなの!? 逆じゃなくて!?

「こちらもあまり時間がないのよ。手間を取らせないで」

「ふっ、承知しました」

 おお、確かにいかにも団長らしい威厳が伝わってくる......。見た感じほとんど俺と歳が変わらないのに......。

「それと質問は私からするわ。衛兵でなくても尋問はできるでしょ?」

「で、ですが団長様! それは......」

「あなたは外の警備について頂戴。ここは私とダルガスに任せて」

「か、かしこまりました!」

 衛兵がその場を去っていく。騎士団の団長が自ら尋問とかハードル上がり過ぎたっての。

「悪いわね。けどあなたに直接聞きたいことがあるのよ。けど覚悟はすることね。例え嘘をついたとしても無駄だから。予め牢に入れる前に特殊な魔法薬をあなたに飲ませてあるの。虚言を吐けばその瞬間、あなたの身体に電気のような痛みが起きるはずよ」
 
「さいですか......、そりゃあ準備がしっかりしていることで」

 そんなもん飲ませられてたのかよ......。尋問というかもはや拷問でもする気かよ?

「てなわけだ、ガキ? 痛い思いをしたくなかったら真実だけ話すことだな」

 真実ねぇ......。どうせ話したところで信じてもらえるかは別問題だろうけど。勇者ですなんて言葉はまあ通用しないだろうしね。

「それじゃあまず一つ目の質問、あなたは一体なのかしら? 町の住民は誰一人として、あなたのような人間を見たことがなかったそうよ?」

「あー......」

 初っぱなからきついなぁ、これ。いや、まあこれぐらいのことで音を上げてたら勇者なんて務まらないけども。

「ええと、辺境?というか......、かなり遠い場所から来たもので、そんでもって知らず知らずのうちにこの国へと迷い混んでしまいまして......」

 ギリギリグレーな発言だとは思うが、実際嘘は一言も発していない。そもそも辺境というか異世界からやって来たわけなんだけども......。

「そ、それで気づいたらどうやら町の中心部で疲労で眠ってしまったみたいで......、パンイチだったのはよく覚えていませんが、騎士団の方々には色々とご迷惑をおかけしたようで、申し訳ないです......」

「......どうやら嘘はついてないみたいね」

「誠ですかな? 痩せ我慢で痛みに耐えているだけでは?」

「いえ、そうは思えないわね......。我々が有している彼の情報が少ないうえに、彼自身が有している情報も非常に少なすぎるわ。これじゃあ尋問はほとんど無意味かもしれないわね」

 よしよしよしっ!! 今のところ何とか乗り切ってるぞ!? この調子なら尋問も乗り越え......。

「では次の質問、これだけ答えてくれないかしら? つい三日前に起きたイルディス王国のの件については知っているかしら?」

「? いや、知らないけ......」

 ズキッ!?

「ぐあっ!?」

 な、何だ!? 急に体に電流みたいな痛みが!?

「だ、団長!! これは......!?」

「............なのね?」

「つっ......!?」

 は? いや、まてマテ待て!? 知るわけないだろ、そんなんっ!? 王子暗殺が何だって!? 初耳だぞ、そんな話!?

「あなたは......、ロスト王子殺害に関与しているということなの!?」

「知らないっての! そんなこと急に言われて、もっ!?」

 ぐおっ! ま、また痛みが強く!? な。何でだ!? 俺が本当に嘘をついてるからか!?

「いいえ、魔法薬は確実に効いているわ。あなたは私に嘘をついている」

 なっ......!? い、いやそんなはずはねえ!? 間違いなく俺はその王子のことを知らないはずだ? 

「ふんっ、なんとも往生際の悪いガキよ。我らイルディス騎士団のツートップを前に、堂々と嘘を吐こうとはな......」

 知るかっ、そんなこと!? こちとら何でこんなことになってんのか混乱してる最中だってんだよ!!

「ふむ。やむを得ませんな、団長。この男にこれ以上尋問を続けても無意味でしょう。やはりこの俺が事前に予想していた通り、王子を殺害した暗殺者アサシンはこの男で間違いないでしょう」

「......」

「? どうかしましたか? 何か気になることでも?」

「この者が王子暗殺に何かしら関わっていることは分かった。が、彼がまだ犯人とは断定できないわ。このまま尋問は続け......」

「いえ、それでは遅すぎます。亡き王子の無念を晴らすために、我々イルディス王国騎士団、そして陛下がこの数日をどれほど辛さを堪えて暗殺者の情報を収集してきたのか、あなたなら分かるはずですぞ?」

「それはそうだけれど......」

「そして誰よりもお辛いのはではありませんか! 王子は団長と......」

「止めて。......もういいわ。辛いだけよ」

「......ではこの者の処遇はこの俺に任せてもらいますが、よろしいでしょうか?」

「......いいわダルガス。この件はあなたに一任します。私は......、先に自室へと戻ります」

「はっ! 承知しました」

 

 ......おいおい、かなりまずいことになってきたんだけど......。とりあえず美女と野獣の会話からして、このままだと王子殺害の罪とかで極刑の可能性も出てくるな、こりゃあ。

「と、言うわけでガキ、お前はに断頭台での斬首刑となる。人生最後の一日を悔いなく過ごすことだな」

「うわっ! よりにもよって斬首か......、え?」

 ん? 今聞き捨てならないワードが聞こえたんだが......、誰がいつどうなるって?

「くくくっ、今さら何をしても遅い! お前は明日、王子殺害の罪を背負い死ぬこととなるのだ。恨むのなら自分を恨むのだな?」

「なっ......!」

 さ、さすがに冗談だろ? だってまだ仲間集めどころか冒険すら始まってないぞ? え......マジで?

「ガハハハハッ!!」

 副団長ダルガスは俺の耳にわざと聞こえるような笑い声をあげて去って行った。ムカつくほどこちらの耳に入るほどの笑い声をあげながら......。

「やべえ! どうする? タイムリミットは明日の朝だ。やっぱここは脱獄か? いや、パンイチの俺に何ができる? くそっ、どうすりゃいいのか分からねぇ!」

 考えても時間だけが過ぎていく。そういや
時計もないから、今が何時なのかも不明じゃねえか。これは本格的に......、詰んだか?

 だが牢の中で悩む俺に対して、

「いや、まだ諦めるのは早い」

 と、そんな言葉が聞こえてきた。

「へ?」

 正体不明の声に一瞬困惑するが、声の主はすぐに判明した。一体いつからか、檻の先で全身に黒いローブを纏った誰かが見ていた。声が中性的でかつローブで姿も分からないので、男か女かも、老人か子供かも不明だ。

「今度はどこの誰だよ? また騎士団の奴か?」

「ん? 君には騎士に見えるのかい? この姿が?」

「いや、そうは思わないけど......」

 少々疑心暗鬼になっているな。無理もないか、明日死ぬかもしれないんだし......。

「逸る気持ちは察する。が、こんな場所で苦悩していても仕方がないだろう。だからこそ遥々ここへやって来たのだから」

「? 何が言いたい?」

 少し間を空けて、黒ローブは答えた。

「助けてやろうか? 未来の勇者くん?」

 謎の黒ローブは、まるでかのようにそう俺に述べた。
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