竜神様の老いらくの恋

のらねことすていぬ

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6.嫉妬

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 そう長い時間じゃないだろうけど、奥まで突き込まれ揺さぶられ、体の隅々まで暴かれる。
 それに僕はただただ翻弄された。
 彼が僕の体内に飛沫を吐き出した時には、僕の意識は朦朧としていた。


「ひっ、ぁん」

 ずるりと後孔から引き抜かれて、敏感になっている体が跳ねる。
 まだ荒い息を吐きだしているエスク君が震える僕の頬をそっと撫でた。

「大丈夫ですか……?」

 エスク君の心配そうな瞳と言葉に、こくこくと頷く。
 すると彼は少し目を細めて僕の顔のあちこちに唇を落としてきた。
 少しだけ湿っていて、柔らかく触れる感触が気持ちいい。
 その唇に、思わずうっとりと目を閉じてしまう。


「俺、お湯をもらってきます」


 手近にあった布で体を拭われて、それから彼が体を起こす。
 離れた体に、近くにあった体温が遠ざかってしまいぶるりと体が震える。

 彼は少しだけ僕の髪の毛を指先で弄んでから、静かな足音と共に部屋を出て行った。
 そして扉がぱたりと軽い音を立てて閉まるのを見て、僕はベッドに転がったまま頭を抱えた。


「ど、どうしよう……」


 ヤってしまった。
 これは完全にヤってしまった。

 どうしてこうなったと頭の中で何度も考える。
 彼の部屋に来て、怪我を見ていて、それでなぜかキスをして。
 おっぱいを彼に吸わせてあげようとしたら、僕が気持ちよくなってしまって――。


「これじゃ僕、へ、変態じゃないか……!」


 そうだ、それで発情してしまった僕をエスク君は慰めてくれて、そのままセックスまでしてしまった。
 彼がこの行為がセックスだって、交尾だって分かっていたかどうかは知らないけど、致してしまったんだ。
 僕が発情してしまったばっかりに。
 もしかしたら彼は僕が気持ちよさそうにしていたから、これがセックスだって分からずにしてしまったのかもしれない。

 これじゃあ、ただのストーカーを越えて一気に犯罪者だ。
 大人の僕がちゃんとしていなければいけなかったのに、なにを気持ちよくなってるんだ。

 ベッドの上で悶えると、後ろからどろりとエスク君の出したものが流れ出てくるのを感じる。
 慌てて体を起こして自分の服の端で拭うと、これ以上汚さないようにとベッドから這い出した。
 少し震える足を叱咤して、なんとか服を身に着けていく。


 これからどうしよう。
 あんな子供に手を出してしまったなんて。

 彼にちゃんと謝って、……ああ、そうだ彼のご両親に彼の番になっていいかお伺いに行こう。
 責任を取るなんて意味じゃない。
 もとから僕は彼のことを番にしたくて堪らなかったんだ。
 でもそれは彼が大人になるのを待って、ちゃんと彼の意思を確認してから番になりたかった。
 もちろんどんな手を使っても彼の愛情を勝ち取る気でいたけど……。
 それでも犯罪を起こして、むりやり手籠めにするつもりなんてなかったのに。

 理性の弱い自分が情けなくてため息が漏れる。
 もしエスク君が将来セックスの意味を知って、僕のことを汚いとか嫌いだって思ったらどうしよう。


 怠くて重い体を引き摺って、なんとか部屋から出る。
 幼い彼が戻ってくるまでここに居たかったけど、犯罪者の僕は少しでも彼から離れていないと。
 次に二人きりで彼に会える時は、彼のご両親からちゃんと許可をもらってからだ。






 できるだけ足音を立てないようにして部屋を出て廊下を進む。
 たくさんの騎士たちが住む寮の長い廊下は、外からの光を取り入れていて明るくてよく風が通る。

 どうせだったら窓から飛び立ってしまおうか。
 そう思って窓の外へ視線を向けて、僕はその場で足を止めた。


「エスク君……、」


 少し大きな盥を腕に抱えて、速足でこちらへ歩いてきていた。

 これから大きく成長するだろう、長い手足。
 薄い唇に、意志の強そうな端正な目元。
 短く刈られた金の髪が日差しを受けて輝いている。
 そんな思わず彼の姿に見惚れて……それから、彼の側にいる存在に気が付いて目を見開いた。

 彼と同い年くらいだろうか。
 可愛らしい少年が、エスク君にじゃれつくように腕を回していた。
 エスク君もその彼を引き離すどころか、どこか照れたように口元を緩めていて。

 当たり前だっていうのに、彼が同じ年頃の同じ種族の子供と戯れている姿に、僕は思わず窓際からよろめいた。

 彼らの間に流れる、親し気な雰囲気。
 エスク君のどこか嬉し気な表情。

 どうして彼は、僕といる時はずっと緊張してたのにその子には優しく笑うんだろう。

 僕とセックスしたのに。
 あんな触れあいを、その子ともするつもりなのか。

 そんなの許せない。
 そんなことをするつもりなら……彼を攫ってしまわなければ。


 竜人族の危険な考えがどんどん頭の中を占めていってしまう。

 彼を傷つけるようなことはしちゃダメだ。
 僕は竜人族の中でも理性的なんだから、ちゃんと彼の意思を聞いてあげなくちゃ。
 御伽噺にあるみたいに、お姫様を攫って閉じ込めるような竜にはなりたくない。
 だいたいまだ子供同士なんだから、彼らがすぐに恋に落ちるとは限らない。

 だけど黒い思考が胸の中にじわりと広がっていく。
 このままだと、発情じゃなくて怒りのせいで翼が出てきてしまいそうで。
 こんなに頻繁に使っちゃダメだと分かりつつも、僕はその光景をこれ以上見ていたくなくて、王宮の自室まで転移していた。












 あっという間に自室までたどり着き、自分が放った精液で汚れた服を脱ぎ散らかす。
 ついでに浴室へ飛び込んで冷たい水で体を洗うと、少しだけ頭が冷えた。

 彼が同世代の子とじゃれていたのは、きっとただの友達だろう。
 まだ彼は18歳だ。
 恋愛感情を誰かに持つには早すぎる。
 だからきっと……攫って閉じ込めなくても、大丈夫。

 それよりも重大なことは___僕が犯罪者だってことだ。

 彼は嫌がっていないようには見えたけど、無理やり手籠めにしたことには変わりない。
 何をされているか分かっていない程いたいけな少年に手を出したなんて、最低最悪の竜人だ。

 水を浴びていると、後孔からどろりと彼の飛沫が流れ出てくる。
 それが何だか悲しくて唇を噛んだ。


 何分くらいそうしていたんだろうか。
 いつまでも浴室に籠っているわけにはいかないから、なんとかバスローブを纏って鈍くなった体を動かした。
 すっかり冷えた体で浴室から出ると、なぜか室内に甘い紅茶の香りが漂っている。


「ルス、勝手に入っているぞ」


 低い声が響いて、そちらの方を向くと、堂々とした様子で風竜のアスファーがソファに座っていた。
 いつの間にかメイドさんに紅茶まで用意してもらったみたいで、長い足を組んで優雅にくつろいでいる。

 竜人族らしいマイペースさに、僕ががっくりとうなだれると、彼は不思議そうに眉を上げた。



「……? どうした?何をへこんでるんだ」

「ア、アスファー……」


 彼が茶器を置いて、ほんの小さくかちゃりと音が鳴る。
 マイペースながらに心配そうな声を掛けられて、僕は縋るように情けない声を出した。



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