1 / 14
1.追放されたシーフ
「ふざけんなよ、あの野郎……」
ギルドの薄汚れた掲示板の、中でもランクの低いクエストを睨みつけながら俺は呟いた。
恨み言が、口を閉じていようと思っていても自然と湧いて出てくる。
きっと今の俺は禍々しい負のオーラを背負っているだろう。
自分でも分かる。
視線を合わせただけで運気が下がりそうな、関わりたくないと人に思わせるような雰囲気だ。
こんなんじゃダメだ。
後ろ向きに他人を恨んでもしょうがない、目の前のできることに集中しないと。
そう分かっているけど、どうにも止められなかった。
シーフという職業に俺は誇りを持っている。
屈強な戦士だって引っ掛かったら無事ではいられない罠を解き。
常人では見つけられない扉や通路を目ざとく見つけ。
近づいてくる魔獣にいち早く気が付き仲間の安全に気を配る。
戦士や魔術師の影に隠れてしまっているけど、旅には欠かせないメンバーのはずだ。
なのに。
突然それまで所属していたパーティーから解雇されたのだ。
いつもやたらベタベタしてくる戦士に押し倒されて、嫌だと抵抗したら翌日にクビになっていた。
『他に役に立つことなんてないんだから、大人しく抱かれてろ』
『そのためにお前みたいな弱っちいのを雇ってやったんだ』
筋肉だるまの戦士が吐いたそんな台詞にムカついて暴れたら、翌朝には急にポイと放り出されたのだ。
なんだよ。
シーフは下半身の面倒まで見ると思われてるのかよ。
だったら娼婦を雇ってくれ。
そしてせめて今までの給金くらい払っていけ。
そう思いながら低級者でもできる地味なクエストを探していた。
本当に残念ながら……俺はまだまだ腕がいいとは言い難い。
足も遅いし体はヒョロヒョロで腕力がない。
成人してからすぐにシーフになったから、辛うじて鍵開けや罠の解除はできるけど、戦闘向きではない体は一流には程遠かった。
戦闘が苦手なシーフは、誰かとパーティーと組まないと碌な仕事はこなせない。
たとえどれだけ鍵開けが上手くても、ダンジョンの深くまで潜れなきゃ意味がないのだ。
だけど二流のシーフが一人でできるものでは碌な仕事なんてない。
それでも何かしなければ、今晩の宿さえ怪しくなってしまう。
貯金も家もない、しがない冒険者なのだから。
大きなため息が出そうになって、負けるものかと歯を食いしばりそれを飲み込んだ。
……こんなところで、こんなことで負けてたまるか。
今回はたまたま仲間に恵まれてなかっただけだ。
俺だって少しづつ強くなってる。
今は弱くても鍛錬を欠かしたことはない。
遅い足もひょろひょろの体も、ほんの少しづつはマシになっているんだ。
まだまだ二流でも、きっと二流の中の上の方だ。
どこかに俺のスキルを必要とするパーティーだってどこかにいるはずだ。
たかが仲間に襲われかけた程度、大したことじゃない。
弱そうだからと組み敷かれたのだって、ちゃんと一人で撃退できた。
いつかもっと強くなってもっと強いパーティーに入って、そうすればこんなの笑い話になる。
そんなこともあったなって気にもしなくなる。
今はどうしようもなく腹立たしくて悲しくても、思い出すこともなくなる。
そうだ。
もっともっと腕を磨いて伝説とか言われる存在になって、俺の噂が轟くほどになれば、昨日の戦士だって後悔するだろう。
だからこんなところで立ち止まってる暇はないんだ。
そう自分に言い聞かせて掲示板を睨みつけていると不意に、大きな影が俺の体を包んだ。
俺の発育の悪い体をすっぽり包むほどの大きな影だ。
相当でかい男らしいけど、そいつも掲示板を見ているんだろうか。
そう思っていると、背後から穏やかにそっと声を掛けられた。
「……君、シーフだよね?俺たちのパーティーに入らない?」
俺に話しかけているのかと振り返ったそこには、筋骨隆々とした見上げるほどの大男が立っていた。
あなたにおすすめの小説
率先して自宅警備員してたら宅配業者に両思い判定されてた話
西を向いたらね
BL
[配達員×実家暮らしニート]
・高梨悠斗 (受け)
実家住みのニート。常に家にいるため、荷物の受け取りはお手の物。
・水嶋涼 (攻め)
宅急便の配達員。いつ荷物を届けても必ず出てくれる受けに対して、「もしかして俺のこと好きなのでは…?」となり、そのままズルズル受けの事が好きになる。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)
子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ
喰われるなんて聞いてないんだが(?)
俺はただ、
いちご狩りに誘われただけだが。
なのに──
誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に
なぜか俺が捕まって食われる展開に?
ちょっと待てい。
意味がわからないんだが!
いちご狩りから始まる
ケンカップルいちゃらぶBL
※大人描写のある話はタイトルに『※』あり
帝に囲われていることなど知らない俺は今日も一人草を刈る。
志子
BL
ノリと勢いで書いたBL転生中華ファンタジー。
美形×平凡。
乱文失礼します。誤字脱字あったらすみません。
崖から落ちて顔に大傷を負い高熱で三日三晩魘された俺は前世を思い出した。どうやら農村の子どもに転生したようだ。
転生小説のようにチート能力で無双したり、前世の知識を使ってバンバン改革を起こしたり……なんてことはない。
そんな平々凡々の俺は今、帝の花園と呼ばれる後宮で下っ端として働いてる。
え? 男の俺が後宮に? って思ったろ? 実はこの後宮、ちょーーと変わっていて…‥。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加