追放されたシーフは、ハーフオークに溺愛される~森の奥~

のらねことすていぬ

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1.追放されたシーフ




「ふざけんなよ、あの野郎……」



ギルドの薄汚れた掲示板の、中でもランクの低いクエストを睨みつけながら俺は呟いた。

恨み言が、口を閉じていようと思っていても自然と湧いて出てくる。
きっと今の俺は禍々しい負のオーラを背負っているだろう。
自分でも分かる。
視線を合わせただけで運気が下がりそうな、関わりたくないと人に思わせるような雰囲気だ。

こんなんじゃダメだ。
後ろ向きに他人を恨んでもしょうがない、目の前のできることに集中しないと。
そう分かっているけど、どうにも止められなかった。

シーフという職業に俺は誇りを持っている。

屈強な戦士だって引っ掛かったら無事ではいられない罠を解き。
常人では見つけられない扉や通路を目ざとく見つけ。
近づいてくる魔獣にいち早く気が付き仲間の安全に気を配る。
戦士や魔術師の影に隠れてしまっているけど、旅には欠かせないメンバーのはずだ。

なのに。
突然それまで所属していたパーティーから解雇されたのだ。

いつもやたらベタベタしてくる戦士に押し倒されて、嫌だと抵抗したら翌日にクビになっていた。
『他に役に立つことなんてないんだから、大人しく抱かれてろ』
『そのためにお前みたいな弱っちいのを雇ってやったんだ』
筋肉だるまの戦士が吐いたそんな台詞にムカついて暴れたら、翌朝には急にポイと放り出されたのだ。

なんだよ。
シーフは下半身の面倒まで見ると思われてるのかよ。
だったら娼婦を雇ってくれ。
そしてせめて今までの給金くらい払っていけ。

そう思いながら低級者でもできる地味なクエストを探していた。

本当に残念ながら……俺はまだまだ腕がいいとは言い難い。
足も遅いし体はヒョロヒョロで腕力がない。
成人してからすぐにシーフになったから、辛うじて鍵開けや罠の解除はできるけど、戦闘向きではない体は一流には程遠かった。

戦闘が苦手なシーフは、誰かとパーティーと組まないと碌な仕事はこなせない。
たとえどれだけ鍵開けが上手くても、ダンジョンの深くまで潜れなきゃ意味がないのだ。

だけど二流のシーフが一人でできるものでは碌な仕事なんてない。
それでも何かしなければ、今晩の宿さえ怪しくなってしまう。
貯金も家もない、しがない冒険者なのだから。

大きなため息が出そうになって、負けるものかと歯を食いしばりそれを飲み込んだ。


……こんなところで、こんなことで負けてたまるか。

今回はたまたま仲間に恵まれてなかっただけだ。
俺だって少しづつ強くなってる。
今は弱くても鍛錬を欠かしたことはない。
遅い足もひょろひょろの体も、ほんの少しづつはマシになっているんだ。
まだまだ二流でも、きっと二流の中の上の方だ。
どこかに俺のスキルを必要とするパーティーだってどこかにいるはずだ。

たかが仲間に襲われかけた程度、大したことじゃない。
弱そうだからと組み敷かれたのだって、ちゃんと一人で撃退できた。

いつかもっと強くなってもっと強いパーティーに入って、そうすればこんなの笑い話になる。
そんなこともあったなって気にもしなくなる。
今はどうしようもなく腹立たしくて悲しくても、思い出すこともなくなる。

そうだ。
もっともっと腕を磨いて伝説とか言われる存在になって、俺の噂が轟くほどになれば、昨日の戦士だって後悔するだろう。
だからこんなところで立ち止まってる暇はないんだ。

そう自分に言い聞かせて掲示板を睨みつけていると不意に、大きな影が俺の体を包んだ。
俺の発育の悪い体をすっぽり包むほどの大きな影だ。

相当でかい男らしいけど、そいつも掲示板を見ているんだろうか。
そう思っていると、背後から穏やかにそっと声を掛けられた。


「……君、シーフだよね?俺たちのパーティーに入らない?」


俺に話しかけているのかと振り返ったそこには、筋骨隆々とした見上げるほどの大男が立っていた。


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