追放されたシーフは、ハーフオークに溺愛される~森の奥~

のらねことすていぬ

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8.町

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辿り着いた町は、俺が予想したよりも大きく賑わっていた。
これまで数日とは言え険しい山道を通ってきたので秘境のようなところかと思っていたのに、足を踏み入れたそこは行きかう人の活気で溢れている。
俺たちが来た獣道に近い山道はどうやら近道で、商人なんかは整備された道を使ってこの町へとやってくるらしい。

綺麗に敷き詰められた石畳の道を歩きながら物珍しくてきょろきょろと辺りを伺う。
故郷の村とは大違いの人の多さ、それから店の多さに圧倒されそうだ。
そんな俺を見て戦士は『田舎者だな』とせせら笑ったが、それもその通りなので俺は黙って皆の後をついて歩いた。

まずはギルドに立ち寄って、この先の遺跡の情報を得る。
遺跡はここから歩いて3日もあれば着けるらしく、数日この町で疲労を回復したら出発することになった。すぐにでも出立したいと戦士は息巻いていたが、確実に疲労は溜まっているし無理は禁物だとウォーレンが冷静に告げ、他のメンバーはそれに従うことにしたらしい。

そして。
なぜかウォーレンは俺の手を引いて、他のメンバーに軽く挨拶を告げてその場を離れた。

「えっと、ウォーレン? ……その、俺たちどこ行くの?」

手を握られたまま歩くウォーレン。
彼の掌は大きいから、俺の手はすっぽりと包まれてしまう。
少し引っ張っても離してくれる気配はないし、体の大きさが全然違うからまるで大人に手を繋がれた子供みたいだ。

なんで他のメンバーと違うところへ行くのだろうと尋ねると、見上げるほど背の高いウォーレンは少しだけ屈んで俺の顔を覗き込んだ。
金の髪がキラキラと光を反射してそれに俺は少しだけ瞳を眇める。

「今日の宿だ。戦士とかはギルドの近くに泊まるらしいけど、ロルドもたまにはもっといい所に泊まりたいだろう?」
「ギルドの近くの宿も十分いい所だよ……っていうか、そうじゃなくて……」

ギルドの近くの宿だって十分高級だ。
ちょっと前までパーティーに解雇されて安宿すら取れなかった俺にとってはもったいないほど。

ふ、とどこか嬉しそうに笑われて、俺はなぜかどぎまぎして口の中でごにょごにょ呟く。

「そうじゃない?じゃあ何?」
「そこ、俺も一緒に泊まるの?」
「当たり前だろ」

手を引かれているということは、俺も一緒に泊まるのだろうか。
なんとなくそんな気はしていたけれど、当たり前だと頷かれて、俺は眉尻を下げた。

「でも、……エイダさんに会わなくちゃ、」

『エイダさんに会わなくちゃいけないんじゃないの?』
戦士と話していたじゃないか。
俺じゃあ股を開かれても嫌だけど、エイダさんは口説きたいって。
だったら俺をそんな高い宿に連れていくよりも、俺のことは適当に捨て置いて彼女のところに行く方がいいだろう。

そう思って途中まで言葉を口に乗せると。
それまで穏やかに微笑んでいたウォーレンが、急に立ち止まって。
掴んでいた俺の手を強く握りしめた。

「っい、!」

痛いと思った瞬間には手の力は抜かれていたけれど、その場に立ち止まったウォーレンはなぜか冷たい雰囲気を発してこちらを見下ろしている。
どうしたんだろう。
何か気に障ることでも言ってしまったんだろうか。
もしかして、そう言えば戦士もエイダさんを口説くと言っていたし、振られでもしていたんだろうか。

ごめんと咄嗟に謝ろうとすると彼の掌が俺の頬を包んだ。

「……ロルド、なんでそんな娼婦の名前を知ってるんだ?」

体を大きく屈められて、至近距離で見つめられる。
全てを見透かすような淡い青い瞳と、力づくで全てを奪われそうな濁った黒の瞳。
その両方から向けられる鋭い視線に体が震える。

「まぁ、あの女はこの辺では有名だから名前くらいは知ってるかもしれないけど、でも会いに行くって? 戦士とかと同じように、まさか口説こうなんて思ってないよな?」

口説く?
なんで俺がエイダさんを口説きに行くんだ。
違う。
そうじゃない。
俺じゃなくて、ウォーレンが口説きに行くかと思っていたんだ。
変なところで言葉が途切れてしまったのは、ウォーレンが急に立ち止まったからだ。

「ち、ちが、」
「じゃあどういうつもりだったんだ? 顔だけでも見たいとか言うなよ」

だけど違うと首を横に振っても、ウォーレンは一向に納得してくれないようで、冷え冷えとした怒気を体中から発している。

「なぁロルド。……どういうつもりか、しっかり教えてもらうからな?」

低い声でそう囁かれて彼の怒りと奥に潜められた色気に肌が粟立つ。
そのまま呆けたような俺を引き摺って、ウォーレンは再び歩き出した。







---









これはどういうことだろうか。
全くさっぱり分からない。

爽やかな風が頬を撫でるけど気持ちは一向に晴れず、ギルドまで続く石畳の街道をのろのろと歩きながら俺は破裂しそうな頭を抱えていた。



結局昨日は、ウォーレンに手を引かれて連れられた宿に閉じ込められて。
誤解だと叫んでも散々ウォーレンに責め立てられた。

俺が泣いて『他の人には使いません』と言うまで、下肢を舐められ、扱かれ、先端に細い棒のようなものまで突っ込まれた。
前と後ろを同時に弄られて涎を垂らしながら喘ぐほど感じてしまった。
ここ数日の間だけで、俺の後孔はすっかり開発されていて、前を触られなくても後ろの窄まりを指で拓かれるだけで性器からとろとろと蜜を零してしまう。
粘ついた音を立てて指を抜き差しされて、泣きじゃくりながら感じる俺を可愛いとウォーレンは笑うけれど、どう考えてもそんなわけない。


本当に、これはどういうことなんだ。
性欲処理として使われるにしても……おかしくないか。

ここが辺りに何もない山道なら分かる。
他に相手がいないんだな。
好みじゃなくてもヤってみたら意外と良かったんだな、で済ませられる。

だけどここは町だ。
ウォーレンは一流の冒険者で金も名誉もあって、彼の相手をしたいという女の子も可愛い男の子もいくらでもいるだろう。
それなのに何でわざわざ俺なんかを抱くんだ。
しかも、あれほど執拗に。

ベッドの上では俺はウォーレンにされるがままでそんなに床上手とは思えない。
それに嫌悪感すら感じていそうだった相手に、そこまで嵌るだろうか。
タダだから?
でも随分と高い宿をとってたみたいだし、金に困っているようには思えない。
明らかにおかしい。
おかしすぎる。

それに……他にも変なことと言えば、最近のウォーレンはやたらと俺を傍に置きたがる。
今だって、俺が『レベル確認のためにギルドに行きたい』と告げたら、彼も付いてくる気でいた。
彼自身の薬の調達や武器の手入れなんかがあるから、と別行動を提案しても、本当になかなか頷いてくれなかった。
誘拐されるかもしれないだの、変質者が出たらどうするだの理解できないことを言っていたウォーレン。
本当に何なんだろうか。

あまりにも可笑しくて、……どこか甘い執着を匂わせる彼の態度に、俺が特別になったんじゃないかと誤解しそうだ。

そんなわけない。
だってあの時、戦士にきっぱりと否定していたじゃないか。
そう自分に何度も言い聞かせるけど、昨夜も散々蕩かされた体がじわりと疼く。

強い性欲はオーク特有のもので、誰に対しても同じように性欲をぶつけるのかもしれない。
でもあの蕩けるような笑みも、気遣いを感じさせる眼差しも、ただの性欲処理の相手には過ぎたもののような気がして。

そこまで考えて、期待に跳ねそうになる胸をそんなわけないと戒める。
きっと俺には分からない理由で彼は俺を使っているだけだ。
そう考えないと変な期待をしてしまいそうだ。



混乱にため息をつきそうになりながら足を進めていると……目の前に灰色の影が立ちふさがった。
何事かと視線を上げた先には。



「やぁ、ロルド。君もギルドに行くところ?」


穏やかな……だけど得体のしれない笑みを浮かべた僧侶が立っていた。
ゆったりとした仕草で彼は俺の方へ一歩近づく。

その薄気味悪さに後ずさろうとすると、彼は憐れなものを見るような視線を俺へ向ける。


「丁度良かった。君を探しに行こうと思ってたんだ」


なんだろうか。
この男は好きじゃない。

だけどそれ以上に嫌な予感がする。
ごくりと唾を飲み込む俺に、僧侶は静かに口を開いた。


「君の代わりが見つかったよ」


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