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 熱い。それに体が揺れてる。あと……あれ、気持ちいい。

「ん、ぁ゛! ♡ あ、! あ゛ぁ……ッ!??♡」
「はは、すげ、締まった♡」

 軽井の笑い声が聞こえる。と思ったら、強い快感が襲ってきて僕は高い嬌声をあげた。
 揺れる体。溶けそうな快感。突然のことに混乱して目の前の軽井の体を押しのけようとすると、軽井はギラギラ光る瞳をすっと細めた。
 
「逃げんなよ、おい」
「え? 何っ………ん、ぁ゛あ゛ッッ!?♡♡♡」

 ずんと奥を突かれて悲鳴のような声が漏れる。同時に背筋にぞくぞくと痺れるような快感が走って腕の力が抜け、逆に軽井の胸にすがりついてしまった。
 
 それに気をよくしたのか、お仕置きのように突かれていた奥がまたずりゅずりゅと甘いストロークで蕩かされる。

 え。嘘。僕セックスしちゃってんの!? なんで。しかも軽井に挿れられてるなんて。

 なんで。なんで、なんで。

「ぁ゛ッ♡♡ やだ、やめッ! あ゛ッ♡♡ んん゛ッ♡♡ん゛ッ♡♡ や、らぁッッ!♡♡」
「あ? やだじゃねぇだろ。さっきまでノリノリだったくせにさぁ♡」

 混乱しきって嫌々と首を横に振ると、ぐりぐり♡とまた奥まで挿れられて快感で脳みそが溶ける。いつの間にかすっかり体が快感に蕩けてしまっていて、あんあんと高い声で喘ぐことしかできなかった。

 突かれながら少しづつ記憶がよみがえってくる。
 
 そうだ、僕は酒が苦手なのに負けられないと思って飲んじゃって、ぐにゃぐにゃになったまま軽井に絡んで……。

『僕の奥さんに手を出すなよぉ!』
『出さないって。あいつ女が好きだし……俺も、あいつより湊人みたいなのがタイプだし』
『嘘ばっかり言うなっ……!』
『嘘じゃねぇって。嘘だと思うなら、試してみる? 俺の本気』


 そう言った軽井の瞳がにやりと歪んだのを覚えている。それでラブホに連れてこられたんだ。そうだと思い出して呆然としていると、僕の陰茎が大きな掌で握り込まれた。

「集中しろよ。初心者のくせに生意気~♡」
「や゛、や゛らぁッ!! 、ぁ゛ッ……♡♡ やら゛ッ!!」
「嫌じゃなくて、気持ちい♡ だろ?」

 軽井はそう言いながら僕の陰茎を擦り、同時に前立腺を狙うようにして腰を打ち付けてくる。その快感に中が甘えるようにきゅう♡と彼の陰茎を締め付けた。

「僕、奥さん゛! 奥さんいるのに゛ぃぃ! ぁ゛!! セックス、しちゃ、だめぇ゛!♡ うわき、浮気になっちゃうッ♡♡ んぁ゛あ゛ッッ♡♡」
「は、こんだけチンポ美味そうに咥えてなに言ってんだよ♡ もうとっくに浮気だって」

 とっくに浮気。軽井の口から出てきた言葉に愕然とするが、ぱん、と音を立てて腰を打ち付けられると体は面白いくらいに跳ねて口からは喘ぎ声が漏れる。それを嘲笑うように眦をゆるませた軽井は僕の後孔にじっとりとした視線を投げる。

「お前のここも、俺のチンポの方が好きだって言ってるぜ♡」
「ちが!♡ ぃ゛、♡ や゛ら゛ッッ!♡♡ やだぁッッ! 好きじゃな゛ッ!♡」
「へぇ~~~?」

 そんなはずないと首を横に振る僕に、腰を揺すっていた軽井は笑みをひっこめる。そして緩く擦っていた僕の陰茎を一気に強く扱き上げる。さらにリズミカルにぐりゅぐりゅ♡と前立腺を押し潰され、僕の体は一気に追い詰められた。

「ぁ、や、~~~~ッ!♡♡ でる、出るぅ゛ッッ♡♡、で、ちゃ、ぅ゛ッッ♡♡……ぁ゛あ! 、~~~~~ッッ!!!♡♡♡」

 ぴゅるる、と精液がだらしなく僕の腹の上に飛ぶ。精液がまるで軽井の陰茎に押し出されるようにぴゅるぴゅると何度もふきあげる。熱い飛沫が尿道を辿る快感に、頭の中が白く濁った。

 僕、ヤっちゃったんだ……。どうしよ、めちゃくちゃ気持ちよかった……♡

「ぁ、……あっ♡♡…………あ、んッ♡♡」

 まだ長く出る精液に合わせて荒い息を吐いて、僕はぼんやりとしでかしてしまったことへ意識を飛ばす。でも今までのセックスと違ってめちゃくちゃ気持ちよくて体が芯から溶けそうで、こんな快感味わっちゃったらもう忘れられないかもしれない。いやダメだ。僕には千恵里がいるんだから、この後軽井を殴って、千恵里に謝って……そう思いながら疲れて襲ってくる睡魔に意識を手放そうと瞳を閉じた。

「あ、こら。まだ寝るなよ」

 が、軽井が叱るようにごりごり♡と内壁を陰茎で緩く擦る。その刺激に、射精して弛緩していた体が小動物のように飛び跳ねた。

「まだまだ楽しもうな♡ この強情な体、一晩でチンポの虜にしてやるから♡」





◇◇◇◇



 薄闇の中でスマホの画面が光っているのが見える。

……あれ? 僕なにしてたんだっけ?

 寝ぼけているのか記憶があいまいでここがどこかも分からない。光るスマホを自分のものだと思って手を伸ばして、見慣れないスマホケースに包まれていることに気が付いた。

 これ僕のじゃない。じゃあ誰のだ?

 頭が回らない。なぜか体も怠いし痛い。

 手に取ったスマホを、回転していない頭のまま覗き込むと、朝の4時という時間表記の下に、深夜に送られたらしいメッセージ。

『千恵里:湊人のことちゃんと落とせた? 昔から狙ってたんでしょ? いい加減私も彼女と付き合いたいから、早くヤっちゃいなよ。絶対湊人もゲイだからいけるって。あ、でも乱暴はしないでよ』

 千恵里? 彼女? ……どういうこと?

 メッセージの意味が分からなくてぼんやりと画面を見つめていると、ひょいと大きな掌に奪い取られた。

「湊人起きたの? ダメだよ彼氏のでも勝手に携帯見たら」

 スマホの光に照らされた軽井がこちらを見てにこりと微笑んでくる。その顔をただ見つめていると、すぅと瞳が細められた。ずっと僕が苦手だった肉食獣みたいな……食べられちゃいそうな瞳。

 ぶる♡と体を震わせると、軽井は楽しそうに唇の端を吊り上げて笑みを浮かべた。

「じゃ、もっかいヤろっか♡ また勃っちゃった」

 ベッドに押し倒されてシーツが背中にあたる。だめ、俺には奥さんが。そう言うつもりだった口は、勝手に『うん♡』と言葉を紡ぐと甘えるように彼にキスをした。




◇◇◇◇◇


浅木 湊人:無自覚ゲイ
軽井 雄壱:チャラいけど付き合うと結構大事にする。実はずっと湊人を狙ってた。
千恵里:バイ。湊人のプロポーズを偽装結婚だと思って受けたら違った。



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