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●別離
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しおりを挟む「じゃぁ、俺そろそろ帰るわ・・・」
隆也がソファーから立ち上がった。
隆也に出したお茶はもうすっかり冷めてしまっている。
冷めたお茶と、おそろいのマグカップが、すごく物悲しい。
隆也は玄関に向かう。
私はその後をゆっくりついていく。
隆也は靴を履くと、私の方を見た。
私は隆也から、顔をそらして言った。
「私とはもう二度と会わないっていうことだよね?まどかと幸せにね」
「寂しいけど、その方がいいよな・・・由希も元気でな」
隆也は柔らかく微笑んだ。
もう隆也と会えないんだ。
最後の微笑み。
しっかりと目に焼き付けておこう。
「そういえばお前、今シュンとつきあってるんだろ?」
柔らかい微笑みのまま、思いがけない一言。
私は驚いて言葉が出ない。
「シュンはすげー真面目でいい奴だから、うまくやれよ。あいつは由希にピッタリだと思う」
隆也はそう言って、片手を上げると、玄関のドアを開けて出て行った。
寂しい音をたてて、ドアが閉まる。
それは隆也から私が追い出された音。
シュンとつきあってるなんて、誤解してた。
否定もさせてくれないんだね。
私が好きなのは、隆也なのに―――
隆也を好きでたまらなくて、だけど必死に忘れようとしてたんだよ。
私のこんな気持ち、全然知らないでしょ?
知ろうともしなかったね。
隆也の中にはまどかしかいない。
もう二度と隆也に会えなくて、ちょうどいい・・・
隆也を諦める事ができるから。
忘れる事ができるから。
だいたい何で、私はあんなひどい奴好きになったの?
自己中で、
面倒くさがりやで、
女ったらしだった隆也。
私は隆也の嫌な面をたくさんたくさん・・・、思い出そうとした。
私はその場にへたりこんだ。
だけど何でだろう?
隆也のいい面しか浮かんで来ないんだよ。
口は悪いけど、落ち込んでると必ずバッティングセンターにいつも誘ってくれた。
からかいながらも、いつも頭を優しく撫でてくれた。
学校でむかつく先生の愚痴を言うと、私より怒っていた。
何でも適当だけど、仕事だけはきっちり責任を持ってやっていた。
どんな人でも明るく楽しく飲めるバーを作るという夢を持っていた。
そしてあの大好きな笑顔―――
大好きだった。
本当に大好き。
忘れられないよ。
いいことばかりしか浮かんで来ない。
私の目からはせきをきったように、涙がどんどんこぼれ落ちてきた。
床にどんどん涙が落ちて、小さなみずたまりができる。
隆也。
隆也。
嫌だよ。
もう会えなくなるなんて嫌だよ。
私の事好きじゃなくてもいいから、側にいてよ。
結婚なんてしないでよ。
お願い。
お願い!
隆也の事、忘れられる訳なんてないんだよ・・・
私は一生分の涙を流し尽くすほど、泣いた―――
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