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辻晴香の策略
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一目惚れだった。
入るつもりもないサークルの新歓で出会った彼に、俺は恋に落ちた。
外見に惚れたわけじゃないと思う。恋に盲目な今でも、彼・・・坂本凪の外見は平凡だと感じる。ただ、そこすらも可愛いと思うから、恋とは恐ろしい。
俺が坂本に落ちたのは、俺が彼の一人暮らしを褒めたときの彼の顔だった。好意の表情を示されることは多くて、そんなものには何にも惹かれもしないし、むしろ媚びの見える笑顔は、不快ですらあった。
でも、坂本が見せた笑顔は、そんなものではなかった。
あまりにうれしそうで、目が奪われる。一方でその笑顔の裏に暗いところも見てて、そのギャップに惹かれた。そして、気付いた時には、好きになっていた。
どうすれば、思いは返ってくるのか。
そこから俺の策略ははじまっていた。
まず、図書館で再会する。これは、彼がバイトをしているから、難しいことじゃない。ただ、再会のときのアクションは大切だ。
図書館での再会では、俺は坂本と初対面を装った。つまり新歓のことは綺麗さっぱり忘れているように見せたのだ。
坂本は十中八九俺のことを覚えているだろうと思った結果の作戦だ。人はネガティブな気持ちのあと、ポジティブな出来事があると、後者の印象が強くなる。わざと気持ちを乱高下させて、俺は坂本を揺さぶった。
坂本は、おもしろいくらい俺が想像した通りの反応を返してくれた。寂しそうで切なそうな顔を見て、坂本が自分の手の中に一歩近づいたのがわかった。
そこからは距離をゆっくりつめるだけ。
ただし、距離感を間違えてはいけない。一気に近づくと警戒心の強い小動物は、逃げ出してしまうから。少しずつ少しずつ、逃げられないように、囲われていくことに気付かないようにしなくてはならない。
彼が俺に恋愛感情を寄せていることは、すぐに気が付いた。気を付けてみると、大学内でも、彼は結構俺を見つめていた。
でも、それじゃだめだ。
もっと強い感情で俺に縛り付けないと。
坂本の恋心はどうやら淡いものみたいで、俺と結ばれたいだなんて露ほどにも思ってないみたいだった。
それじゃ、だめなんだよ、坂本。
ゆっくりと坂本との距離を詰めていく日々はとても楽しかった。坂本に気付かれないように、日常に食い込んでいく。坂本はどうやら自己肯定感が低いらしく、そこを突くようにして、言葉を紡いだ。
この作戦は、大学卒業までに遂行を予定したものだった。人を懐に入れるのを好まない坂本を取り込むために、それくらの長丁場を予定していたのだ。だから、新歓後のファーストコンタクトもすぐにはしなかった。
けど、予定は今崩れつつある。
坂本が俺の前から行方をくらましたのだ。
坂本との仲は良好だと思っていたから、そんなことが起こるとは想定外で、さすがに少し狼狽えた。でも、すぐに坂本・・・凪の動向は掴めた。大学に来ていないわけではなかったから、本人には会えずとも、彼の様子を把握することはできたのだ。
そして俺は凪の置かれている状況を知って、笑うことしかできなかった。
あぁ、予定よりもずっとはやく、彼を手に入れられそうだ。
入るつもりもないサークルの新歓で出会った彼に、俺は恋に落ちた。
外見に惚れたわけじゃないと思う。恋に盲目な今でも、彼・・・坂本凪の外見は平凡だと感じる。ただ、そこすらも可愛いと思うから、恋とは恐ろしい。
俺が坂本に落ちたのは、俺が彼の一人暮らしを褒めたときの彼の顔だった。好意の表情を示されることは多くて、そんなものには何にも惹かれもしないし、むしろ媚びの見える笑顔は、不快ですらあった。
でも、坂本が見せた笑顔は、そんなものではなかった。
あまりにうれしそうで、目が奪われる。一方でその笑顔の裏に暗いところも見てて、そのギャップに惹かれた。そして、気付いた時には、好きになっていた。
どうすれば、思いは返ってくるのか。
そこから俺の策略ははじまっていた。
まず、図書館で再会する。これは、彼がバイトをしているから、難しいことじゃない。ただ、再会のときのアクションは大切だ。
図書館での再会では、俺は坂本と初対面を装った。つまり新歓のことは綺麗さっぱり忘れているように見せたのだ。
坂本は十中八九俺のことを覚えているだろうと思った結果の作戦だ。人はネガティブな気持ちのあと、ポジティブな出来事があると、後者の印象が強くなる。わざと気持ちを乱高下させて、俺は坂本を揺さぶった。
坂本は、おもしろいくらい俺が想像した通りの反応を返してくれた。寂しそうで切なそうな顔を見て、坂本が自分の手の中に一歩近づいたのがわかった。
そこからは距離をゆっくりつめるだけ。
ただし、距離感を間違えてはいけない。一気に近づくと警戒心の強い小動物は、逃げ出してしまうから。少しずつ少しずつ、逃げられないように、囲われていくことに気付かないようにしなくてはならない。
彼が俺に恋愛感情を寄せていることは、すぐに気が付いた。気を付けてみると、大学内でも、彼は結構俺を見つめていた。
でも、それじゃだめだ。
もっと強い感情で俺に縛り付けないと。
坂本の恋心はどうやら淡いものみたいで、俺と結ばれたいだなんて露ほどにも思ってないみたいだった。
それじゃ、だめなんだよ、坂本。
ゆっくりと坂本との距離を詰めていく日々はとても楽しかった。坂本に気付かれないように、日常に食い込んでいく。坂本はどうやら自己肯定感が低いらしく、そこを突くようにして、言葉を紡いだ。
この作戦は、大学卒業までに遂行を予定したものだった。人を懐に入れるのを好まない坂本を取り込むために、それくらの長丁場を予定していたのだ。だから、新歓後のファーストコンタクトもすぐにはしなかった。
けど、予定は今崩れつつある。
坂本が俺の前から行方をくらましたのだ。
坂本との仲は良好だと思っていたから、そんなことが起こるとは想定外で、さすがに少し狼狽えた。でも、すぐに坂本・・・凪の動向は掴めた。大学に来ていないわけではなかったから、本人には会えずとも、彼の様子を把握することはできたのだ。
そして俺は凪の置かれている状況を知って、笑うことしかできなかった。
あぁ、予定よりもずっとはやく、彼を手に入れられそうだ。
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