ファンタジー世界で運び屋やります。たまに戦います。

アズ

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第一章

04 遺跡

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「休暇ってのはいいもんだ」
 ウォルターとケイブはエリア2に出来た露天風呂にいた。広々とした温泉にはその時間帯は客がおらず、二人だけの貸し切り状態だった。
「これで風呂上がりの酒がもう少し最高だったら文句ねぇんだけどな」
「ウォルター、それが来月のバージョンアップでは状態異常が酔い、二日酔いが追加されることになったんだ。味覚の再現度も修正される」
「本当か?」
「なんでも味覚に関する研究をしているところが協力することになったらしい。人間が感じる味覚をより詳しいデータが書き込まれることになる」
「メタバースの世界の再現度は素晴らしいがまだまだデータ化出来ない問題が多いと思っていたが、やはりこの分野の進歩は目まぐるしく成長を遂げているわけだな」
「そういえば話しは変わるが次のエリアの情報知ってるか?」
「いや」
「さっきブルーチームから聞いたんだ。今度は極寒の吹雪がずっと振り続ける大地らしい」
「そりゃまた過酷なことで」
「水魔法を使ったらそれは一瞬で凍ってしまう程らしい」
「防寒用の防具が必要だな」
「あぁ」
「全く新しいエリアの度に環境に合わせた全装備を揃えなきゃならないなんて金がかかって仕方がねぇ」
「それと、前回のエリアボス戦のかかった費用、今日ブラックから一括で支払いがあったよ」
「早いな。まぁ、そういうところがあいつらしいんだが」
「信頼関係はお互い大事にしないといけないからね」
「そろそろ俺はあがる」
「あぁ、俺もあがるよ」



 温泉街には店やギャンブルが集まっていた。その提灯が飾られた通り道には犬耳や猫耳装備アイテムの他に水着やドレスといった戦闘には関係のない娯楽用品まで揃っていた。
 美味しい食べ物屋もあり、例えアレルギー持ちでもここでは心配がいらない。
 エリア2では一番規模の大きい街で、その賑わいは毎日が祭りのようだった。
 どこかで爆竹の音がする。
「ん? さっき銃声がしなかったか?」
「え? いや、聞こえなかったけど。それにここは街の中だよ、銃だなんて」
「だよな」



◇◇◇◇◆



 暗闇は人を恐怖させる。明かりのない底にどんな財宝が眠ろうとも勇気のいることだ。
 一つの閃光手榴弾が投げ込まれ、そこにいた暗闇モンスターは普段浴びない光の量を一瞬で大量に受け、それによって麻痺したモンスターを一斉の弾丸がその狭い部屋に撃ち込まれた。そこにいたコウモリ系モンスターや虫系モンスターが次々と倒れていく。
 部屋にいたモンスターが全滅するのを確認すると魔法使いは「ライト」の呪文を詠唱する。
 損害はゼロ。
 更に下へ続く階段を見つけ、財宝、狩りが目的で集まったプレイヤー達は陣形を崩さず下へ向かう。
 先頭のプレイヤーが耳をすますとカサカサと下から音がした。
 後ろの仲間へ合図を送り、魔法のライトを解除し暗視ゴーグルに切りかえる。
「敵は4体」
 銃口はそれぞれその4体に向けられると、3秒で終わらせた。
 更に下への階段を見つけ、それを段取りよく降りていく。
「敵は……いないな」
 そして、下の階へプレイヤー達が降り終わると、突然後ろの出口、上から壁が降りて閉ざされた。
「出口が!?」
「罠か! 全員警戒態勢」
 暗闇の部屋に赤い光が幾つも浮かび上がる。それは敵意であり殺意だ。それがプレイヤー達に向けられた。



◇◇◇◆◆



「ん?」
「どうしたウォルター?」
「仕事の依頼だ。クラークからの救援要請だ」
「クラークっていったらグリーンチームのお得意様だろ?」
「そうだがそのグリーンチームは新しいエリアの攻略に向かっているから本隊からの救援は難しいだろ。第一、俺達にメッセージを寄越したってことはそういう意味だろ」
「でも、今は俺達しかいないよ? 今日は休みってことになってるからね。因みに彼らは今どこにいるんだ?」
「一緒に送られた地図によるとエリア1の遺跡だな」
「エリア1ならたいしたモンスターはいないだろ」
「いや、海底都市や遺跡とかダンジョンにいるようなモンスターはフィールド上にいるモンスターより手強い」
「だとしたら尚更無理だな」
「あぁ、そうだな。クラークには悪いが断るか」
 ウォルターはそう言ってメッセージを返信した。すると、相手からの返信は思った以上に早かった。
「クラークからまたメッセージだ。休暇は無しだなこりゃ」
「え? そんなに報酬がいいのか?」
「クラーク達はなんとか最深部までいってレアアイテムを回収出来たそうだ。それにあの遺跡から麻痺耐性と毒耐性の宝石がある。今後どんな敵が現れるか分からない以上、欲しいアイテムだ」
「それじゃ、後はどうメンバーを集めるかだね。一様色んなところにメッセージを送ってみるよ」
「あぁ。だが、あまり時間は残されてない。急いでくれ。相手はアイテムと弾が尽きそうだ」




 10分後、集まったのは5人。ペニー、アメリア、武器屋のジョン、それにケイブの知り合い高プレイヤーの2名。
「10分で5人も集まればまずまずだ。任務はメッセージで送った通りだ。エリア1にある遺跡地下にいるクラーク達の救出。クラーク達によれば遺跡に罠が仕掛けてある。だが、俺達はクラークと違うのは事前の情報を知っているかどうかだ。クラーク達が寄越したトラップの情報と敵の情報からクラーク達のいる場所まで最短で救出する」
 勿論、だからこそ情報は金になる。一旦全滅し再チャレンジすればそれこそ最短ルートとトラップの位置と対策で遺跡の攻略はクラーク達だけでも可能だろう。ペナルティが無ければ。ゲームによってペナルティの存在はその安易な攻略を打ち消す。遺跡で得た経験値、アイテムは失われ、それどころかレベルと所持金も減少し、死亡前に装備していたもの全てが失う。それに、レアアイテムは同じ場所に何度も出てはくれない。
「報酬は分け前だ。何か質問はあるか?」
 そう言っても誰も質問がなかったのでウォルターは話しを進める。
「よし、それじゃ遺跡まではこの転移魔法石を使う。因みに言うまでもないだろうが中に入ったらこのアイテムは使用出来ない。それじゃ行くぞ」
 ウォルターはそう言って青い結晶のアイテムを輝かせた。光に包まれた皆は全員その場から遺跡へと転移していった。



 遺跡前にウォルター達が一瞬で到着すると、そこは削って出来た人の顔をした巨大な岩や所々にある柱、更に奥には寺院らしきものがあった。その手前ではカンガルーのような見た目をしたモンスターが数体立ちはだかっており、鎧と兜を武装してある。二足歩行でボクサーの真似事のようにシャドーをしている。
 すると、ウォルターはあの敵について仲間に説明し出す。
「連中は敵を発見したら全速力で追いかけ近距離戦に持ち込もうとする。銃の弾はあの武装では弾かれるから厄介そうに見えるが、奴らは長い尻尾を使ってバランスをとっている。尻尾を狙い撃ちしバランスを崩せばあとはこっちのもんだ」
 全員が頷くと、あとは手際よく敵の尻尾を狙い撃ちし、次々とそのモンスターは倒れた。上手く逃げ出しだモンスターはプレイヤーに襲いかかるが、そこにネットが放たれそのモンスターの身動きを封じると、あとは全て射殺するなり斧や剣で突き刺すなりして殲滅した。
「敵はいなくなった。中へ急ぐぞ」
 ウォルターの指示に従い全員は寺院へと向かった。寺院の中はダンジョンと化しており、モンスターが住み着いていた。地下へ向かう階段があり、その階段をウォルター達は降りていく。事前に知らされた罠を通り抜け、モンスターとの戦闘も最小限にパーティ被害ゼロのまま最深部へと向かった。



「ここが最深部の筈だ」
 広い部屋に出ると、そこには明かりがあり、負傷したプレイヤー達がいた。
「おぉ、助けが来たぞ」
「被害状況は?」
 すると、一人の屈強そうな男が前に出た。
「私はチームリーダーのクラークだ。なんとか最深部まで来れたが、その間に3人がやられた。うち一人は回復役の魔法使いだった。アイテムは尽きて残りの弾数も僅かだ」
「武器とアイテムの補充は任せろ。回復はアイテムがある。しかし、どんな敵にやられたんだ?」
「罠からのモンスターとの連戦で激しい消耗戦を強いられた。それでも最深部まではパーティは全員生き残っていた。最深部のボスが中々厄介な相手でね、ギリギリの戦いだった。3人やられたが、それでも少ない犠牲で済んだと思っているよ」
「最深部までのルートを確認し、一旦引き返してもう一度チャレンジすれば問題はなかっただろ。何故そんなに急いだ」
「俺達の背後に別のプレイヤー達の気配を感じたんだ。俺達を先頭に行かせモンスターと戦わせて罠の情報と最小限の消耗で多分最深部のレアアイテムを狙っている感じだった」
「なるほど。どうやらマナーのなってないプレイヤーがいるようだな。しかし、俺達はそいつらとはすれ違わなかったぞ」
 すると、ケイブが前に出る。
「因みにそいつらはどんな奴だった?」
「知らない奴らだった」
「どのカラーにも所属していないとなると見つけるのは大変そうだね」
 ウォルターは腕を組み「まぁ、深手を狙ってこなかっただけマシだろう」と言った。
「しかし、なんだこの場所は? 本当に寺院の地下か?」
 その地下の最深部の壁には絵が描かれており、その壁画には見たことがない兵器やミサイルと真っ赤に燃える街並み、その崩壊する街を眺めながら手を合わせ祈りを捧げる人々。その天には女神が。
「ウォルター、実は少し気になっていたことがあってね」
「なんだ?」
「このゲームの世界では街とかNPCが全くなくて最初からプレイヤーが一から揃えるだろ? まぁ、それがこのゲームの特徴だと最初は思っていたんだけど、そうなるとおかしなことになるんだよ。この遺跡がそうさ。それだけじゃない。エリア3の海底都市だってそう。ちゃんと街の痕跡があるんだ。でも、それはどれもかなり前に滅んだ痕跡ばかり。この最深部にこんな無意味な絵画があるとは思えない。となると、この絵画や遺跡、海底都市はこのゲームに関わる重要なヒントが隠されているんじゃないのかな。例えばだけど、このゲーム世界の設定とか」
「この絵がか?」
「うん。多分、遺跡や海に沈んだ都市のように他のエリアにも似たような場所があって、そして滅んだ理由がある。この絵を見る限り、戦争で街が真っ赤に燃え、人々は神に祈りを捧げている。この寺院はとても重要な役割で、その歴史を残す為に最深部にこの絵画を残したんじゃないのかな」
「まぁ、もしそうだとしたら連絡会議で報告だな。さぁ、詮索はこれぐらいにしてとっとと脱出しよう。全員、残りの弾倉、アイテムを確認してくれ」
 全員がウォルターに言われた通りに確認する。といってもここまでたいした戦闘をしなかったから帰りまでは全然保つだろう。
「よし、行くぞ」
 ウォルターがそう言った時、ペニーが「ちょっと待って」と言った。その後ろでアメリアが武器を構えだした。それを察したウォルターは小声で後ろにいる全員に言う。
「お客はまだ帰っちゃいないようだ」
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