6 / 10
第一章
06 裏
しおりを挟む
山奥にひっそりと佇む城がある。タロン・ミケルセンは邸宅をフレッチャーの部下達に襲撃をされた以降、新たな拠点をそこに移した。元々は狩猟に適した場所を求めた貴族が建てた城であり、完成する前にこの国が民主主義国家となって貴族達に与えられた特権も廃止され、主がこの城に住むことは結局叶わなかった。故に『主なき城』とも呼ばれたりしたが、後に売りに出された城をタロン・ミケルセンは買い取り、この城の主となっていた。
その城にはコナーズとサヤカも一緒だった。ミケルセンが二人をこの城に招待したからだ。理由は3つある。1つは、フレッチャーが持っていた縄張りを手に入れ範囲拡大に成功したことのお祝いパーティ。2つ目は、コナーズに戦い方を教える為に格闘戦術と、銃の扱い方を叩き込む為。そこでは色んな銃を持たせたり、例えば今日なんかは5.56mm小銃を使って森の奥で撃ちまくっている。3つ目はミケルセンの個人的な用事、サヤカはその護衛としてだった。
ミケルセンは香りの立つお茶を飲みながら目の前に座るスーツ姿にサスペンダーの太った男を見た。彼の額には汗が流れており、それを何度もハンカチで拭っている。よっぽどミケルセン相手に緊張しているのだろう。そのそばにサヤカとアール・リップとレイフ・アボットが壁際に立って彼をじっと見ていた。来客の男は大統領選出馬のノーブルの秘書だった。正直、彼はこの仕事を断りたかった筈だ。彼が来たのは言うまでもなく選挙結果についてだ。大統領選、何が起こるか分からないと言われる一大イベントで終盤接戦を繰り広げた結果、ペックが当選した。最初はリードしていたノーブルだったが、最後の最後にペックに大逆転を許してしまったのだ。
「正直に言いますと私は信じておりませんが、ノーブル氏は選挙に負けた一因があなたにあるのではないかと疑っているようでして。ノーブル氏に不都合な情報がいきなりマスコミが報じた点、あなたなら息のかかったマスコミを抑え込むことが出来た筈だと言っていまして」
「それから?」
「ノーブル氏には分からない点が一つだけあると。ペックは銃規制派であり、あなたにとっては不都合な筈だと。ノーブル氏は銃規制には否定的な立場です。だからこそ、あなたが裏切る理由が分からないと。私達は互いに利害関係で一致していた筈です」
「そうだな……銃規制は正直意味がないと思う。現に銃の違法改造は今に始まった話ではない。昔から続いていることだ。例えば、最近ではフルオートに改造された銃をぶっ放して遊ぶのが流行っているらしいが、フルオートだって昔からあった。銃規制がどこまで出来るかは懐疑的だ。選挙戦でも銃規制についてより経済についての方が国民に響いていた」
「しかし、あなたがフレッチャーと銃撃戦をした結果、銃規制に対する関心が高まったのは事実です」
「あれはフレッチャーが仕掛けたことだ」
「では、マスコミにアレが流れたのは何故です?」
「ああ、アレか。未成年とやっちまった件か?」
そう言いながらミケルセンは微笑する。
「俺が一番嫌いなことを教えてやる。卑怯者とロリコンだ」
「では最初から!?」
「ああ、そうだ。選挙で最初にリードを見せ、夢を見せてから逆転出来るギリギリまで接戦に持ち込み、最後は逆転。ロリコンは落選というわけだ。分からないなら教えてやる。この国のトップにロリコンは不要だ。死んでもゴメンだね」
「最初からそのつもりで我々に接触してきたと言うんですか」
「そうだ。奴には大統領の椅子より刑務所がお似合いだ」
「店を紹介したのはあなただ。外に決して漏れないと」
「ああ、そうだったか?」
「約束と違う。それも証拠をつくる為の罠だって言うなら、あなたも終わりだ」
「いいや。トカゲの尻尾切りと同じだ。俺には届かない。決してな」
「信用を失ってもか」
「あの店の信用か? 気にするな。そもそもやる気なんてなかった。それにフレッチャーの部下が店を襲ったおかげで店仕舞いのタイミングも早くについたしな」
「あなたはロビイストにはなれない」
「なるつもりはない。俺の居場所はここだ。ここがホームだ。それに、お前達はどうせ俺を裏切る。方法は単純だ。フレッチャーを使う。奴にとっては俺は不都合だからな。勝手に潰し合ってくれれば直接手を汚す必要もない。フレッチャーの連中が俺達の持っているルート以外で銃を持ち込めたのは何故だ? 連中が現れたのはノーブルが市長をしていた市の港からだ。偶然か? 情報屋が簡単に我々を裏切ったのは何故か? 情報屋は私ではなくフレッチャーに乗り換えたのはフレッチャーを裏で支えてるのが次期大統領だったらどうだ?」
「考え過ぎでは?」
「そう思うか?」
「想像でしかない」
「証拠はある」
「そんな!?」
「警察は驚くだろうな。フレッチャーがどうやって武器を持ち出せだか」
「わ、私は止めた。でも」
「でも、止められなかった」
「……」
「単純な話、自分の邪魔をする者を排除する。気に入らない者もだ。それは変わらない。今もな。奴もそうだった。それだけの話だ。大統領になったら、自分の弱点は潰しておきたいだろう」
「私は殺されるのか?」
「仲間が何人も死んだ。ノーブルを止められなかったのは秘書として失態だ」
そう言って立ち上がり銃口を彼に向けた。そして、額にむけ引き金を引いた。
銃声は一発。彼の額からは血が流れ出た。
◇◆◇◆◇
たまに、終わらない夜が来るんじゃないかって思う時がある。ミケルセンは油断出来る相手ではない。今日味方でも明日敵になるかもしれない。あれを見てしまっては。
数日後、逮捕され拘留中だったノーブルが死亡した。死因は不明。何故なら公表された死因はアテにならないからだ。そして、世間はそれを知ることはない。表にいる限りは。知らないほうがいいこともある。知った時は、自分は既にそっち側に踏み込んだことになるからだ。
その城にはコナーズとサヤカも一緒だった。ミケルセンが二人をこの城に招待したからだ。理由は3つある。1つは、フレッチャーが持っていた縄張りを手に入れ範囲拡大に成功したことのお祝いパーティ。2つ目は、コナーズに戦い方を教える為に格闘戦術と、銃の扱い方を叩き込む為。そこでは色んな銃を持たせたり、例えば今日なんかは5.56mm小銃を使って森の奥で撃ちまくっている。3つ目はミケルセンの個人的な用事、サヤカはその護衛としてだった。
ミケルセンは香りの立つお茶を飲みながら目の前に座るスーツ姿にサスペンダーの太った男を見た。彼の額には汗が流れており、それを何度もハンカチで拭っている。よっぽどミケルセン相手に緊張しているのだろう。そのそばにサヤカとアール・リップとレイフ・アボットが壁際に立って彼をじっと見ていた。来客の男は大統領選出馬のノーブルの秘書だった。正直、彼はこの仕事を断りたかった筈だ。彼が来たのは言うまでもなく選挙結果についてだ。大統領選、何が起こるか分からないと言われる一大イベントで終盤接戦を繰り広げた結果、ペックが当選した。最初はリードしていたノーブルだったが、最後の最後にペックに大逆転を許してしまったのだ。
「正直に言いますと私は信じておりませんが、ノーブル氏は選挙に負けた一因があなたにあるのではないかと疑っているようでして。ノーブル氏に不都合な情報がいきなりマスコミが報じた点、あなたなら息のかかったマスコミを抑え込むことが出来た筈だと言っていまして」
「それから?」
「ノーブル氏には分からない点が一つだけあると。ペックは銃規制派であり、あなたにとっては不都合な筈だと。ノーブル氏は銃規制には否定的な立場です。だからこそ、あなたが裏切る理由が分からないと。私達は互いに利害関係で一致していた筈です」
「そうだな……銃規制は正直意味がないと思う。現に銃の違法改造は今に始まった話ではない。昔から続いていることだ。例えば、最近ではフルオートに改造された銃をぶっ放して遊ぶのが流行っているらしいが、フルオートだって昔からあった。銃規制がどこまで出来るかは懐疑的だ。選挙戦でも銃規制についてより経済についての方が国民に響いていた」
「しかし、あなたがフレッチャーと銃撃戦をした結果、銃規制に対する関心が高まったのは事実です」
「あれはフレッチャーが仕掛けたことだ」
「では、マスコミにアレが流れたのは何故です?」
「ああ、アレか。未成年とやっちまった件か?」
そう言いながらミケルセンは微笑する。
「俺が一番嫌いなことを教えてやる。卑怯者とロリコンだ」
「では最初から!?」
「ああ、そうだ。選挙で最初にリードを見せ、夢を見せてから逆転出来るギリギリまで接戦に持ち込み、最後は逆転。ロリコンは落選というわけだ。分からないなら教えてやる。この国のトップにロリコンは不要だ。死んでもゴメンだね」
「最初からそのつもりで我々に接触してきたと言うんですか」
「そうだ。奴には大統領の椅子より刑務所がお似合いだ」
「店を紹介したのはあなただ。外に決して漏れないと」
「ああ、そうだったか?」
「約束と違う。それも証拠をつくる為の罠だって言うなら、あなたも終わりだ」
「いいや。トカゲの尻尾切りと同じだ。俺には届かない。決してな」
「信用を失ってもか」
「あの店の信用か? 気にするな。そもそもやる気なんてなかった。それにフレッチャーの部下が店を襲ったおかげで店仕舞いのタイミングも早くについたしな」
「あなたはロビイストにはなれない」
「なるつもりはない。俺の居場所はここだ。ここがホームだ。それに、お前達はどうせ俺を裏切る。方法は単純だ。フレッチャーを使う。奴にとっては俺は不都合だからな。勝手に潰し合ってくれれば直接手を汚す必要もない。フレッチャーの連中が俺達の持っているルート以外で銃を持ち込めたのは何故だ? 連中が現れたのはノーブルが市長をしていた市の港からだ。偶然か? 情報屋が簡単に我々を裏切ったのは何故か? 情報屋は私ではなくフレッチャーに乗り換えたのはフレッチャーを裏で支えてるのが次期大統領だったらどうだ?」
「考え過ぎでは?」
「そう思うか?」
「想像でしかない」
「証拠はある」
「そんな!?」
「警察は驚くだろうな。フレッチャーがどうやって武器を持ち出せだか」
「わ、私は止めた。でも」
「でも、止められなかった」
「……」
「単純な話、自分の邪魔をする者を排除する。気に入らない者もだ。それは変わらない。今もな。奴もそうだった。それだけの話だ。大統領になったら、自分の弱点は潰しておきたいだろう」
「私は殺されるのか?」
「仲間が何人も死んだ。ノーブルを止められなかったのは秘書として失態だ」
そう言って立ち上がり銃口を彼に向けた。そして、額にむけ引き金を引いた。
銃声は一発。彼の額からは血が流れ出た。
◇◆◇◆◇
たまに、終わらない夜が来るんじゃないかって思う時がある。ミケルセンは油断出来る相手ではない。今日味方でも明日敵になるかもしれない。あれを見てしまっては。
数日後、逮捕され拘留中だったノーブルが死亡した。死因は不明。何故なら公表された死因はアテにならないからだ。そして、世間はそれを知ることはない。表にいる限りは。知らないほうがいいこともある。知った時は、自分は既にそっち側に踏み込んだことになるからだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
竜華族の愛に囚われて
澤谷弥(さわたに わたる)
キャラ文芸
近代化が進む中、竜華族が竜結界を築き魑魅魍魎から守る世界。
五芒星の中心に朝廷を据え、木竜、火竜、土竜、金竜、水竜という五柱が結界を維持し続けている。
これらの竜を世話する役割を担う一族が竜華族である。
赤沼泉美は、異能を持たない竜華族であるため、赤沼伯爵家で虐げられ、女中以下の生活を送っていた。
新月の夜、異能の暴走で苦しむ姉、百合を助けるため、母、雅代の命令で月光草を求めて竜尾山に入ったが、魔魅に襲われ絶体絶命。しかし、火宮公爵子息の臣哉に救われた。
そんな泉美が気になる臣哉は、彼女の出自について調べ始めるのだが――。
※某サイトの短編コン用に書いたやつ。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる