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第一章 魔法の剣
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「あの巨大な鳥がこっちに来るぞ! なんとかしろ!」
「こっちはあんた達を飛ばしているのに必死なんだよ!」
サイモンは慌てて腰にあるピストルを抜き、巨大な鳥に向かって発砲した。しかし、届く筈もない。
「な、なんとか逃げろ!」
三人は燃える山に向かいながら、飛んでくる巨大な鳥から距離をとろうとするも、あの巨大な鳥の方がスピードがあり、徐々に距離が縮まっていく。
「ああ、ダメだ!!」
「勝手に決めつけるな!」
ミアは弱音を吐くサイモンに吠えた。
燃える山に近づくにつれ、暑く感じる。
よく見ると、山の様子がおかしい。なにか、嫌な音がするのだ。
「ねぇ、ミア! なんか変だよ、あの山」
ミアは「まさか!」と叫ぶ。
「火山にもレベルがある。最大レベルの噴火が起きようとしてるんだ」
「それってどれぐらいやばいの?」
「気温が5度以上下がるぐらいに」
「そんなに!?」
「なんで今、そんな噴火が起きそうなんだよ」とサイモンは言った。
サイモンの言う通り今のタイミングというのはミアもおかしいと感じていた。
あの山が最大レベルで大噴火を起こしたのは人間がまだ誕生していない年数になる。あれからは、あの山が大噴火を起こしたことはない。
日常的な噴火を起こすこの山にとって、魔女や旅人にとっては今までの噴火など珍しい光景ではない。それはここ以外の山でも日常的な噴火をしている山があるぐらいだ。
無論、日常的だからといって油断してはならないこともある。
それがこの山だった。大噴火で温暖化にブレーキをかけ不作となった事例がある山が実在するように、この山の大噴火がもたらす影響もそれに達すると言われている。無論、その近くにいれば我々だって無事ではすまされない。
山は自然界でも恐ろしものだ。単に雪山で遭難させたり、雪崩を起こすだけが山の脅威ではないのだ。
「ミアの魔法で噴火をどうにかすることは出来ないの」
エドは思いつきで提案した。それを聞いていたサイモンは答えを知っていた。エドが知らないのは無理もなかった。ちゃんと教育を受ける環境に今の子どもらにはなかったからだ。
「魔法じゃ無理よ」
「そんな!」
「少年、火山についてはいくら人間の科学が進歩したからといってもまだまだ解明できていないことはあるし、コントロールできる科学はないんだ。大噴火ってなると、そりゃ莫大なエネルギーってことだ。その巨大なエネルギーに対抗するには、此方もそれなりのエネルギーを必要とする。噴火を止めることは人間の科学では出来ないんだ。コントロールでさえな。それは魔法も同じことだろう。魔法という言葉を聞くと、便利な道具と考えちまう奴もいるが、なんでもできるわけじゃない。そうだろ、ミア?」
「ええ、そうよ」
目の前には大噴火を今にも起こしそうな山、後方には巨大生物が三人を挟み撃ちにしている。
鳥をどうにかしたところで、噴火を止められなければまず助からない。
突如、巨大生物が方向を変え、山の頂上へ向かって飛び始めた。
「あの鳥、どうするつもりだ!?」
サイモンは驚いた。
あの鳥も山の異変に気づいたのだろう。だが、そうであれば山から遠ざかるものだ。なのに、真逆のことを……何故?
しかし、ミアはあの鳥の今からやろうとしていることを理解したのか、涙を流していた。
何故、僕らを襲っていたあの生物に涙を流せるのか。
その時、僅かにミアの小さな声が聞こえた。
「……行ってしまうのね」
それはとても悲しそうな声だった。悲痛な叫びのように。まさか、あの鳥に言っているのか!?
あの巨大生物は噴火口の真上にきて、翼を広げ、蓋をするかのように噴火口を塞いだのだ。
そして、あの生物が持っている魔力をもって、あの山の怒りをおさえようとしていた。
直後、白い光りが三人の視界を襲い、耳鳴りで聴覚を奪った。
朦朧とする意識は三人をそのまま夢の中へと導いていった。
◇◆◇◆◇
ミアは夢をみていた。
自分の目の前には老婆がいた。山姥と違い優しい目をした老婆だ。灰色の目をしており、髪は美しい雪のような白い髪だった。ミアはそれが好きだった。
「お前を魔女の弟子にするのを反対する魔女がいるが、私はお前を弟子にすると決めた」
老婆は魔女だった。そして、私の師匠だ。
私はこの人から魔法を教わり、自然を学んだ。
魔女にとって自然の知識は重要だった。それだけ、魔女にとって魔法を使うのに自然が重要な意味を持つということだ。
「どうして師匠は私を弟子としてとってくれるんですか? 他の魔女は反対してるんですよね」
「魔女はずっと使い魔を持たない。昔はいたんだ。だが、ある時をさかいに魔女は動物と会話が出来なくなった。それは自然を守る役目である魔女にとって致命的だ」
「魔女は動物とお話できないんですか」
「そうだ。魔女は昔、やってはならない禁忌を犯したのだ。ミアよ、禁忌を犯せば取り返すことは不可能だ。だから、禁忌なのだ。そのこと、絶対に忘れるでないぞ」
「はい」
◇◆◇◆◇
ミアはゆっくりと目を開けた。いつの間にか眠っていた。体は痛いが、地面が柔らかい場所に墜落したようで、大きな怪我には至っていなかった。
腕と足が擦りむいて血が出てはいるが。
まだ、耳は元に戻らない。時間がかかりそうだ。
山の天辺を見ると、巨大な鳥は燃えていた。
「起きたか」
そう言ったのはサイモンだった。近くにいたエドはまだ意識を失っていた。どうやら彼が先に目覚めたようだ。
「あの鳥に感謝しなきゃな」
「全ての魔力で噴火をおさえていた。自らを犠牲にして、あの鳥は最後まで守り主としての役目を果たしたのよ。おかげで、山の怒りはあの生物の死をもっておさまった」
「……なんでそんな悲しそうなんだ」
「あの噴火は自然ではなかった」
「なんだって!?」
「意識を失う前、魔法を使用したあとに出る魔力痕を感じた。あなたの言う通り確かに魔法では噴火は止められないわ。でも噴火を引き起こすなら話は別よ」
「まさか……」
「噴火に水は大きな関係を持つわ。その水は汚れがない。この土地の持つ水なのだから。これは、誰かの仕業よ」
「どうしてそんな馬鹿なことをする奴がいるんだ」
「決まってるでしょ。あの巨大生物を始末する為に。こうなることを誰かが計算し実行に移した」
「一歩間違えれば死んでいたかもしれないのにか」
「人間はいつだって傲慢で愚かよ」
「こっちはあんた達を飛ばしているのに必死なんだよ!」
サイモンは慌てて腰にあるピストルを抜き、巨大な鳥に向かって発砲した。しかし、届く筈もない。
「な、なんとか逃げろ!」
三人は燃える山に向かいながら、飛んでくる巨大な鳥から距離をとろうとするも、あの巨大な鳥の方がスピードがあり、徐々に距離が縮まっていく。
「ああ、ダメだ!!」
「勝手に決めつけるな!」
ミアは弱音を吐くサイモンに吠えた。
燃える山に近づくにつれ、暑く感じる。
よく見ると、山の様子がおかしい。なにか、嫌な音がするのだ。
「ねぇ、ミア! なんか変だよ、あの山」
ミアは「まさか!」と叫ぶ。
「火山にもレベルがある。最大レベルの噴火が起きようとしてるんだ」
「それってどれぐらいやばいの?」
「気温が5度以上下がるぐらいに」
「そんなに!?」
「なんで今、そんな噴火が起きそうなんだよ」とサイモンは言った。
サイモンの言う通り今のタイミングというのはミアもおかしいと感じていた。
あの山が最大レベルで大噴火を起こしたのは人間がまだ誕生していない年数になる。あれからは、あの山が大噴火を起こしたことはない。
日常的な噴火を起こすこの山にとって、魔女や旅人にとっては今までの噴火など珍しい光景ではない。それはここ以外の山でも日常的な噴火をしている山があるぐらいだ。
無論、日常的だからといって油断してはならないこともある。
それがこの山だった。大噴火で温暖化にブレーキをかけ不作となった事例がある山が実在するように、この山の大噴火がもたらす影響もそれに達すると言われている。無論、その近くにいれば我々だって無事ではすまされない。
山は自然界でも恐ろしものだ。単に雪山で遭難させたり、雪崩を起こすだけが山の脅威ではないのだ。
「ミアの魔法で噴火をどうにかすることは出来ないの」
エドは思いつきで提案した。それを聞いていたサイモンは答えを知っていた。エドが知らないのは無理もなかった。ちゃんと教育を受ける環境に今の子どもらにはなかったからだ。
「魔法じゃ無理よ」
「そんな!」
「少年、火山についてはいくら人間の科学が進歩したからといってもまだまだ解明できていないことはあるし、コントロールできる科学はないんだ。大噴火ってなると、そりゃ莫大なエネルギーってことだ。その巨大なエネルギーに対抗するには、此方もそれなりのエネルギーを必要とする。噴火を止めることは人間の科学では出来ないんだ。コントロールでさえな。それは魔法も同じことだろう。魔法という言葉を聞くと、便利な道具と考えちまう奴もいるが、なんでもできるわけじゃない。そうだろ、ミア?」
「ええ、そうよ」
目の前には大噴火を今にも起こしそうな山、後方には巨大生物が三人を挟み撃ちにしている。
鳥をどうにかしたところで、噴火を止められなければまず助からない。
突如、巨大生物が方向を変え、山の頂上へ向かって飛び始めた。
「あの鳥、どうするつもりだ!?」
サイモンは驚いた。
あの鳥も山の異変に気づいたのだろう。だが、そうであれば山から遠ざかるものだ。なのに、真逆のことを……何故?
しかし、ミアはあの鳥の今からやろうとしていることを理解したのか、涙を流していた。
何故、僕らを襲っていたあの生物に涙を流せるのか。
その時、僅かにミアの小さな声が聞こえた。
「……行ってしまうのね」
それはとても悲しそうな声だった。悲痛な叫びのように。まさか、あの鳥に言っているのか!?
あの巨大生物は噴火口の真上にきて、翼を広げ、蓋をするかのように噴火口を塞いだのだ。
そして、あの生物が持っている魔力をもって、あの山の怒りをおさえようとしていた。
直後、白い光りが三人の視界を襲い、耳鳴りで聴覚を奪った。
朦朧とする意識は三人をそのまま夢の中へと導いていった。
◇◆◇◆◇
ミアは夢をみていた。
自分の目の前には老婆がいた。山姥と違い優しい目をした老婆だ。灰色の目をしており、髪は美しい雪のような白い髪だった。ミアはそれが好きだった。
「お前を魔女の弟子にするのを反対する魔女がいるが、私はお前を弟子にすると決めた」
老婆は魔女だった。そして、私の師匠だ。
私はこの人から魔法を教わり、自然を学んだ。
魔女にとって自然の知識は重要だった。それだけ、魔女にとって魔法を使うのに自然が重要な意味を持つということだ。
「どうして師匠は私を弟子としてとってくれるんですか? 他の魔女は反対してるんですよね」
「魔女はずっと使い魔を持たない。昔はいたんだ。だが、ある時をさかいに魔女は動物と会話が出来なくなった。それは自然を守る役目である魔女にとって致命的だ」
「魔女は動物とお話できないんですか」
「そうだ。魔女は昔、やってはならない禁忌を犯したのだ。ミアよ、禁忌を犯せば取り返すことは不可能だ。だから、禁忌なのだ。そのこと、絶対に忘れるでないぞ」
「はい」
◇◆◇◆◇
ミアはゆっくりと目を開けた。いつの間にか眠っていた。体は痛いが、地面が柔らかい場所に墜落したようで、大きな怪我には至っていなかった。
腕と足が擦りむいて血が出てはいるが。
まだ、耳は元に戻らない。時間がかかりそうだ。
山の天辺を見ると、巨大な鳥は燃えていた。
「起きたか」
そう言ったのはサイモンだった。近くにいたエドはまだ意識を失っていた。どうやら彼が先に目覚めたようだ。
「あの鳥に感謝しなきゃな」
「全ての魔力で噴火をおさえていた。自らを犠牲にして、あの鳥は最後まで守り主としての役目を果たしたのよ。おかげで、山の怒りはあの生物の死をもっておさまった」
「……なんでそんな悲しそうなんだ」
「あの噴火は自然ではなかった」
「なんだって!?」
「意識を失う前、魔法を使用したあとに出る魔力痕を感じた。あなたの言う通り確かに魔法では噴火は止められないわ。でも噴火を引き起こすなら話は別よ」
「まさか……」
「噴火に水は大きな関係を持つわ。その水は汚れがない。この土地の持つ水なのだから。これは、誰かの仕業よ」
「どうしてそんな馬鹿なことをする奴がいるんだ」
「決まってるでしょ。あの巨大生物を始末する為に。こうなることを誰かが計算し実行に移した」
「一歩間違えれば死んでいたかもしれないのにか」
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