マーズと小さな弟子

アズ

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angel

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 シシリーの防具は身軽に胴体にのみプレートアーマを装備している。着物の男にとってはもはや防具は身につけてはいない。彼にとってはすばやさが大事なのだろう。魔法による防御もあるので、いざとなればそれがいいのかもしれない。そう考えれば、マーズも防具と呼べる装備はしていなかった。
 対してマットは違った。
「武装!」と唱えると、魔法によって錬成された防具が全身に装着されていく。ガチャ、ガチャと音を立てて装備されたそれは、魔法防具と呼ばれる。その全身武装だ。
 これは、防御系魔法とも呼ばれ、防御の着脱を自由にできる魔法で、接近戦を得意とした戦闘スタイルでは戦いながら防御魔法を唱えるより、遥かに最初からずっと防御していた方がいいということで、マットのような武装を魔法で錬成することは珍しくはなかった。
 ただ、黄金に輝くその全身の鎧はかなり強度が高い、最高レベルの魔法だ。
(凄い……)
「さて、はりきって参りますか!」
 マットはそう言って、掌を広げた。そこには、手の大きさサイズのハンマーがある。
「ビック!!」
 すると、ハンマーはどんどん巨大化していき、あっというまに巨大ハンマーになってしまった。
「これが俺様の武器さ。なんでもこいつでミンチにしてやる」
「お前に武器がないのかと思ったら、武器のサイズを操作していたのか」とマーズも感心した。
 そこへ、天使のようなものが此方に向かって飛んできた!
「あれは俺にやらせろ!」
 マットがハンマーを持ち上げると、ハンマーの先がどんどん伸びていき、ハンマーが更に巨大化していく。あっという間に自分より大きなハンマーとなったものを、飛んできた天使に向かって上から押し潰した。
「これがテコの原理だぁ!!」
「いや、明らかに違うだろ」とマーズは思わずツッコミを入れた。
 何故なら、支点と力点の位置が変わらないのに、作用点が長くなってしまっては、むしろ今以上の力がいるからだ。むしろ、逆にしなければ、小さな力で大きな作用は生み出せない。
 だが、シシリーは知っている。
「頭が馬鹿だから、教えても無駄よ」とバッサリ。
「馬鹿力とはよく言ったものだ」とスイまで言う。
 しかし、天使は今ので消滅した。キラキラと光の粒となって空中で消えていく姿を見た親玉(仮)は、激昂しているのが、悲鳴のような煩い鳴き声を出した。
「お? 怒らちまったかな」
 マットは面白そうにそう言った。まるで余裕そうだ。
 すると、親玉(仮)が蛇のような手に持っている巨大な杖を持ち上げると、杖の上の玉になっている部分から強い魔力が感じられると、そこから白い閃光がマットに向かって放たれた。
(あんなの直撃したら即死!?)
 いくら、魔法で防御していてもとレイチェルが心配になっても、マットはおろか、皆は平然としていた。
 マットに至っては「望むところだ!」と言い出した。
「武装変幻!!」
 すると、黄金色から銀色に鎧が変化した。
 直後、親玉(仮)を直撃したマットだったが、その閃光はマットを倒すどころか、完全に反射され、それは親玉(仮)の杖と蛇に直撃した。
 杖はへし折られ、蛇は青い血を流しながら、閃光によって切断されてしまい、山の下へと落ちていった。
 その衝撃で大きな揺れと共に、マット達のいる辺りより下から、積もっていた雪が崩れ、雪崩を起こした。無論、その上にいるマット達には無害だ。
 マットは武装をまた黄金の鎧に戻した。
(さっきの鎧は放出系を跳ね返すんだ)
「アハハハハ!! どうだ、思い知ったか。これが俺の鎧だ。俺は倒したモンスターを自分の魔力取り込み己を纏う鎧に変えられる! 魔力消費が著しいがな」
「全部防具しか出来ないけどね」とシシリーは意地悪く言った。
「アハハハハ!!いいじゃないか。ドラゴンの鎧ってのもあるぞ。武装変幻!!」
 今度は緑色の鎧となり、まるで鱗のような鎧になった。
「この鎧になると、俺は空を飛べるようになる」
 マットはそう言って、地面から足が離れ浮遊しだした。高度をどんどんとり、親玉(仮)の正面までいく。
「ようやく、同じ目線の高さになれたな」
 マットは嬉しそうに言うと、ハンマーをまたさっきみたいに巨大化させ、そのハンマーを敵頭上目掛けて振り下ろした。
 直撃した巨大な敵は……ハンマーが頭上に触れる直前で勢いが全て殺され、そこで完全に停止した。マットは驚いた後でもう一度力を入れ直すも全くそこから微動だにしなかった。
「どうなってやがる」
「マット! 早くハンマーを戻せ」とスイが叫んだ。
「やろうとしてるんだが……」
「時魔法でハンマーだけ身動き出来ないんだ。マット、ハンマーから手を離せ」
 マットは舌打ちし「仕方ねぇ」と言って手を離した。
 直後、ハンマーは変系し銀色の液体状に変えられ、地面に落ちていった。
「物質を変えたか。同じ原理で、人間が触れれば俺達は人ではなくなるかもな」とマーズはあれを見て言ったが、マットはそれよりも自慢のハンマーを失ったことの方がなによりのショックだった。
「よくも……ムカつく野郎だぜ! 俺のフルパワーを見せてやる!」
 すると、マットの全身を包むかのように強い光が現れ、それは巨大化された。そして、光が消え現れたのは緑色の完全なるドラゴンの姿だった。
「完全武装!」
「変身魔法じゃないのか?」とマーズは驚くと、シシリーが説明に入る。
「マットは魔法による武装以外に倒した敵を自分の魔力に取り込み、そのモンスターの特性を活かしたオリジナルの鎧をつくる、それが彼の魔法……つまり、その究極があれってわけ」
「成る程」
「でも、ドラゴンになってもアレを倒すのは難しい」
「仕方ない」とスイは刀を抜いた。
 すると、刀が赤色になる。同時に鞘と髪の色まで赤色に変色しだした。
「斬れ!」
 刀を振るうスイ。しかし、刀と本体は明らかに距離が離れている。が!! 本体に赤色の斜め線が走った。刀を振るった方向と同じ方向にだ。
 まるで、本当に斬ったみたいだ。
「スイの刀は相手に触れる必要はないの」
「言霊か」
「そう。スイは自分の刀身に魔力を込めるの。でもね、単に言霊なら、刀は必要ない」
 直後、斬られた敵は悲鳴をあげた。本当の悲鳴だ。
「今、スイは赤色してるでしょ? 火属性を宿している。今、斬られた相手の内側から高エネルギーの炎が内側を切り裂いてるわ。丁度、あの斜め線に沿ってね。真っ二つになるのも時間の問題かな。でも、あれだけ大きいと時間かかるかもね」
「いや、完全には斬れない」とスイは言った。
「斬られながら再生してやがる」
「でも、それじゃ長く苦しむだけじゃない? 相手の方が折れるわよ」
 そうシシリーは楽観視していたが、その期待とは逆に、スイが斬りつけた傷が消えていった。
「そんな!」
 シシリーが驚いていると、本体の周りを飛んでいた天使にかわりに同じような傷ができ、天使がかわりに真っ二つになった。
「あれは単なる手下じゃなく、替え玉だったのか」
 倒された2体の天使。残りは目視できるだけで5体いる。しかし、そこに更なる絶望を与えるかのように、親玉(仮)は掌から沢山天使達を生み出していく。
 天使をドラゴンになったマットが炎を口から吐き倒していく。だが、天使はどんどん出てくる。
「まずいな。魔力量でいったら、相手が上だ。対してマットは完全武装したせいか、かなり魔力量を減らしている。あの姿じゃ、かなり魔力を消費するんだ」
「スイ!」
「ああ、分かってる!」
 スイはまた刀を振るった。
「ひと振り百殺!」
 スイが狙ったのは、右手だった。
 真っ二つに腕は切り落とされ、そこから大量の青い血液が流れ出た。
 再び悲鳴があがる。
「体は無理でも腕なら再生より攻撃が勝る! あとは、残っている天使だけを倒せば」
 直後、今度は流石の本体もブチ切れ、本体に異変が現れだした。先程までの天使達が急に悪魔の姿に変化し、本体も女性のようなヒト型から、男性のようなヒト型へと変化した。
 色も白から真っ黒にハッキリと変化する。
「まさか、こっからが本気モードってことなのか?」とスイは言った。
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