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気づけば例の真っ白な空間に俺はいた。
上を見ると黒の46が浮かんでいる。前回の数字が45だった為、この世界は老人が言っていた通り46の世界になる。
次に周辺を見渡して見た。が、特に変わったことはない。
(いや……そう言えばあの蛇がいないな)
ウロボロス、それが今回はいなかった。あれは45の時にいたから、どの場所にもいるわけではないということなのだろうか。
すると、再び強い光が俺の視界を襲った。
◇◆◇◆◇
気づけば草原に立っており、風車が目の前にあった。仄かに海の匂いがする。
どうやらテレポート説は成功したらしい。ある意味ではこれはスキルだ。
ラノベのような魔力を消費して発動という感じではなく、むしろそこまで使い勝手がいいわけではない。
だが、もしかすると他にも法則があってそれを逆手に取って利用出来れば、テレポートのようなスキルを自分は使用できるのではないのか?
こうなるともっとこのシステムについて研究したくなった。
となれば、まず気になるのが2度目の死後の転生先で俺がクルーが俺を黒ひげと勘違いしたことだ。この世界の黒ひげがどんな奴かは知らないが、勘違いしてしまう程に似ていたとは思えないし、大公襲撃事件でも俺を誰かと勘違いされた。
これも何らかの法則があるみて考えらるんじゃないのか。
まだ、どのようなルールか見えないが、転生を繰り返していくうちに見えてくるかもしれない。
とりあえず、ここがどこなのかそこから情報収集しなくては。
俺は近くにある道を見つけ、その道に沿って歩くことにした。そうすれば、町や村に辿り着けるだろう。
◇◆◇◆◇
歩いて流石に一時間はしなかったがそれでも体感としては30分以上は歩いた筈だ。電車やバス、せめて自転車があると便利だが、もう歩くのが普通になっていた。
足腰が鍛えられたと思いながら辿り着いた町の景観は、石造りのとんがり屋根が特徴な建物が並ぶ場所といったところだ。
普通に上下ジャージ姿の俺が歩いていると、その一風変わった格好にすれ違う通行人から注目の的となった。
全員バスケット選手並の身長があり、体格差で俺はここの男性達に負けていた。
男女共にシンプルな服装に、女性は全員頭巾をしていた。
そこに、馬の鳴き声がした。
それを耳にした通行人は急いで道を開ける。開いた道に甲冑を武装した騎士が白馬に跨ったまま此方に向かって走ってくる。俺は避けるように横にそれたが、馬は俺に用があるように止まり、引き返し俺の前に立った。
ブルーが入った甲冑をしており素顔が見えないが、隙間から此方を見ているのは分かる。
更に、仲間の騎士達も遅れてこの場に到着する。
周囲の人々はその場の様子をただ静観していた。
「お前、どこから来た」
最初に現れた騎士が俺にそう聞いてきた。
すると、そばにいた騎士が「こいつ、黒ひげじゃないのか」と言った。
「黒ひげ!? 確かに手配書の似顔絵とそっくりだな……よし、捕らえるぞ」
勿論、抵抗できるわけもなく、俺は突然現れた騎士達によってあっさり捕らえられてしまった。
◇◆◇◆◇
取り調べを受けるような部屋に連れてこられた俺は、椅子に座らされると早速尋問が始まった。
騎士はまだ素顔を隠したままだった。
「まさか、大海賊の船長がこんな田舎にまで現れたとは。お前の仲間はどうした?」
「仲間はいない。嘘はつかない」
「信用できるか。海賊の言うことなんて」
なら、なんで聞くと言い返しそうになったが、ぐっと堪える。ここでは俺が生まれ育った国とは違うんだ。平和ボケしたゆとりが生意気な態度で通じる世の中じゃないのだ。
「海賊船は反乱で乗っ取られ船はない。本当だ。なんなら周辺の海域を調べてくれ。船は見当たらない筈だ」
「そんなことは知っている」
俺は首を傾げた。もう調査済みという意味か? 確かに尋問をする前に調べることぐらいしてそうだが、かなり早い対応だと思った。
だが、騎士の次の言葉で俺は予想を裏切る衝撃な事実を知らされることとなる。
騎士は新聞を開くと、それを机の上に叩きつけるように置いた。
あまりの迫力に少し驚いてから、俺は恐る恐るその新聞記事を見た。
「すまないが……俺は文字が読めないんだ」
「そうか。海賊だもんな。なら、教えてやるよ」
騎士はそう言って新聞を朗読しだした。
「各国は海賊を殲滅させる為に恩赦を与え引退を誘うと同時に恩赦を受けなかった海賊に対して海軍は武力をもって対抗した。大海賊黒ひげの船、アン女王の復讐号は海軍の総攻撃を受け海賊達を乗せたまま沈没した」
新聞を置き「だから、お前の海賊船はない。問題はどうやって逃げ切ったのかだ」と騎士は言った。
まさか、俺が降りた船がそんなことになっていたとは。
だが、他に重要なことも聞けた。
「待ってくれ。あんたさっき恩赦がどうとか言ってなかったか? なら、その恩赦を受けるよ」
「馬鹿なのか? 捕らえた海賊になんでわざわざ恩赦を与える必要がある。捕らえた海賊は処刑に決まってるだろ」
「そんな……」
(また、俺は死ぬのか!?)
「しかし哀れだよな。泳いで逃げたのか小船を出して一人だけ助かったのか、いずれにせよ悪党はこうして捕まった。あっさりとな。お前、本当に黒ひげか?」
騎士達は笑った。
多分、本当は黒ひげじゃない! と言ったところで信用なんてされず、処刑が決まって縛り首なんだろう。それともこの世界ではギロチンなのか?
せめて、自分の死ぐらいは知りたいと思った。
「なぁ、教えてくれ。俺はどうやって処刑されるんだ?」
「この国では重犯罪は公開処刑と決まっている。残念だな、この国は重犯罪者には火刑となっている」
あろうことか一番苦しい死に方だ。
駄目だ、逃げなきゃ。
だが、今捕らえられている状況でどうやって逃げる?
いや、あるじゃないか。
「なら、死ぬ前に俺の隠し事を聞いてくれないか」
「なんだ? 財宝の隠し場所か? 是非とも俺達に教えてくれよ」
「俺は黒ひげじゃない。俺はて」
白い光がまた視界を襲った。
これなら、何度でも死を回避出来ると思った。
◇◆◇◆◇
今度はあの白い空間には行かず、深い森の中に俺は気づいたらいた。
あの場所から逃げ出すことは出来た。
うまくいったことに俺は思わず大笑いした。
長く、長く笑った。
こんなにうまくいったことはなかったからだ。
これはこれで便利で、利用できると思った。
「さて、次はどこに飛ばされたんだ」
その時の俺は気楽だった。このテレポートという手段には大きな欠陥があることに気づかずに。
俺はとりあえず森を出ることにした。
適当に歩いても迷うだけなので木登り出来そうな木を見つけると、それを登り始めた。
木を登っていった先に何が見えるのか。
そんなわくわくをしながら登った先に見えたのが、海だった。
海がある方向が分かると、俺は木を降りて真っ直ぐその方向に向かって歩いた。
海の方に向かえば何かあるだろう。
今のところ順調だ。問題なんてない。
そんな自信に満ち溢れながら森を抜けていくと、そこは崖だった。
海は見えるが港はない。
俺はとりあえず島周辺を沿って歩くことにした。
それも暫く歩くと、俺は簡単に島を一周した。
そこで元きた場所に戻ってから俺は大きな焦りを感じるようになった。
(まさかまさかまさか)
無人島なんて言葉は絶対に思いたくもないし、言葉にしたくない。まるで、それが現実になるのが怖かったからだ。
当たり前のように人のいる場所に点々と出来たが、最大のデメリットは行き先が此方では指定出来ないこと。
つまり、無人島に来てしまったら、2度と瞬間移動が出来なくなってしまう。
テレポートが出来る条件には明らかに自己では出来ず他者に依存していることだ。それがいない無人島はまさに行き止まり。
島のあちこちを歩いても人工物は一切見当たらない。そもそも崖で浜辺のない島に上陸することすら困難だろう。
俺は絶望になりながら海をじっと体育座りしながら眺めた。
この島には木の実すら見当たらなかった。草でも食べて空腹を耐える以外に空腹をおさえれそうなものは見当たらない。
もし、近くに船が通らなかったら俺は餓死するまでこのままなのだろうか。
火刑から逃れられたのに、餓死とか…… 。
いっそ、自殺した方が早いのか?
俺はずっとこの退屈な時間で死について考えていた。
◇◆◇◆◇
俺は死神に取り憑かれているのだろうか? でなければ何故こんな目に自分は合っているのだろうか。
異世界転生という現実から外に飛び出したのに、そこに待っていたのは現実に似た世界で、そこでは過酷と、すぐそばに死が存在した。
俺は事故でむしろ被害者で死んだ筈なんだ。なんで……
暗闇の中に聞き覚えのあるアナウンサーの声が頭の中で流れた。
「事故にあったのは柏木正樹さん。道路を横断中にトラックに跳ねられ、搬送先で死亡が確認されました」
あれ? 俺って横断歩道を歩いていたんじゃないのか?
映像が出る。そこにはちゃぶ台の前で酒に溺れるトラックの運転手だった男の姿だった。すっかり酒に生力を吸われた縮んだ男の背中が映りだされた。
それは見覚えのない記憶。
トラックの運転手は人を跳ねてしまったことをずっとトラウマのように感じ、酒に逃げていた。そして、酔いがさめればそれが無意味で自分の弱さを現実が彼を責めた。
衰弱し、それでも泥酔し、体を悪くし、早く人生を終えようとする男の姿があった。
そうか。俺は勘違いしていたんだ。俺は地獄に落とされるべき男なんだ。
せめて、俺がしてやれるのは、あの男性を救いはできないが……
俺は立ち上がった。
そして、深い海の底を見た。そこにあるのは太陽の光が届かない暗闇。
俺は崖から飛び降りた。
◇◆◇◆◇
死んだ先にあったのは真っ白な空間だった。
天井には47という数字が浮いていた。
そこにはウロボロスではなく、仮面を付けた女の人がいた。黒いドレスを身に着けて。
この空間で人と出会うのは初めてだった。
「あ、あの……」
俺は声をかけようとしてやめた。どうにかしようなんて間違えていると思ったからだ。俺は地獄に落ちて正解の人間だ。
「あなた、死の島に行ってしまったのね」
女性は俺に近づき、黒くよどんだ両目の瞼を閉じさせ、何かを唱えだした。
「いいわよ」
そう言われ目を開けると、なんだか不思議と気持ちが楽になっていた。
「死の島に行った人は死に取り憑かれてしまうの。ないものをあったように幻覚を見せてしまう。そして、自殺へ追い込むの。それが死の島を出た後も続いてしまうから、その島に知らずに入ってしまったらずるずると死を繰り返してしまう。気をつけなさい。瞬間移動は同じ世界で一度までにしといた方がいい。具体的な回数は分からないけれど、私は2回目で死の島であなたみたいになってしまった」
俺は気づけば涙を流していた。
記憶が蘇り、俺はあの時ちゃんと横断歩道で青信号で渡っていたのを思い出した。
「死をこのまま繰り返していたら、地獄へ行っていたわ」
「どうしてそれを……あなたは?」
「ごめんなさい。もう、時間がないの」
「ちょっと待って! 俺を置いて行かないでくれ!」
「ごめんなさい。それは出来ないわ。もうすぐで天使が私を追いかけてくるの」
「天使?」
「天使は地獄から抜け出した人を追いかけるの」
「もしかしてあなたは地獄から」
しかし、此方が言い終わる前に仮面を付けた女の人は光に包まれ、そして消えてしまった。
上を見ると黒の46が浮かんでいる。前回の数字が45だった為、この世界は老人が言っていた通り46の世界になる。
次に周辺を見渡して見た。が、特に変わったことはない。
(いや……そう言えばあの蛇がいないな)
ウロボロス、それが今回はいなかった。あれは45の時にいたから、どの場所にもいるわけではないということなのだろうか。
すると、再び強い光が俺の視界を襲った。
◇◆◇◆◇
気づけば草原に立っており、風車が目の前にあった。仄かに海の匂いがする。
どうやらテレポート説は成功したらしい。ある意味ではこれはスキルだ。
ラノベのような魔力を消費して発動という感じではなく、むしろそこまで使い勝手がいいわけではない。
だが、もしかすると他にも法則があってそれを逆手に取って利用出来れば、テレポートのようなスキルを自分は使用できるのではないのか?
こうなるともっとこのシステムについて研究したくなった。
となれば、まず気になるのが2度目の死後の転生先で俺がクルーが俺を黒ひげと勘違いしたことだ。この世界の黒ひげがどんな奴かは知らないが、勘違いしてしまう程に似ていたとは思えないし、大公襲撃事件でも俺を誰かと勘違いされた。
これも何らかの法則があるみて考えらるんじゃないのか。
まだ、どのようなルールか見えないが、転生を繰り返していくうちに見えてくるかもしれない。
とりあえず、ここがどこなのかそこから情報収集しなくては。
俺は近くにある道を見つけ、その道に沿って歩くことにした。そうすれば、町や村に辿り着けるだろう。
◇◆◇◆◇
歩いて流石に一時間はしなかったがそれでも体感としては30分以上は歩いた筈だ。電車やバス、せめて自転車があると便利だが、もう歩くのが普通になっていた。
足腰が鍛えられたと思いながら辿り着いた町の景観は、石造りのとんがり屋根が特徴な建物が並ぶ場所といったところだ。
普通に上下ジャージ姿の俺が歩いていると、その一風変わった格好にすれ違う通行人から注目の的となった。
全員バスケット選手並の身長があり、体格差で俺はここの男性達に負けていた。
男女共にシンプルな服装に、女性は全員頭巾をしていた。
そこに、馬の鳴き声がした。
それを耳にした通行人は急いで道を開ける。開いた道に甲冑を武装した騎士が白馬に跨ったまま此方に向かって走ってくる。俺は避けるように横にそれたが、馬は俺に用があるように止まり、引き返し俺の前に立った。
ブルーが入った甲冑をしており素顔が見えないが、隙間から此方を見ているのは分かる。
更に、仲間の騎士達も遅れてこの場に到着する。
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「お前、どこから来た」
最初に現れた騎士が俺にそう聞いてきた。
すると、そばにいた騎士が「こいつ、黒ひげじゃないのか」と言った。
「黒ひげ!? 確かに手配書の似顔絵とそっくりだな……よし、捕らえるぞ」
勿論、抵抗できるわけもなく、俺は突然現れた騎士達によってあっさり捕らえられてしまった。
◇◆◇◆◇
取り調べを受けるような部屋に連れてこられた俺は、椅子に座らされると早速尋問が始まった。
騎士はまだ素顔を隠したままだった。
「まさか、大海賊の船長がこんな田舎にまで現れたとは。お前の仲間はどうした?」
「仲間はいない。嘘はつかない」
「信用できるか。海賊の言うことなんて」
なら、なんで聞くと言い返しそうになったが、ぐっと堪える。ここでは俺が生まれ育った国とは違うんだ。平和ボケしたゆとりが生意気な態度で通じる世の中じゃないのだ。
「海賊船は反乱で乗っ取られ船はない。本当だ。なんなら周辺の海域を調べてくれ。船は見当たらない筈だ」
「そんなことは知っている」
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だが、騎士の次の言葉で俺は予想を裏切る衝撃な事実を知らされることとなる。
騎士は新聞を開くと、それを机の上に叩きつけるように置いた。
あまりの迫力に少し驚いてから、俺は恐る恐るその新聞記事を見た。
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「そうか。海賊だもんな。なら、教えてやるよ」
騎士はそう言って新聞を朗読しだした。
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まさか、俺が降りた船がそんなことになっていたとは。
だが、他に重要なことも聞けた。
「待ってくれ。あんたさっき恩赦がどうとか言ってなかったか? なら、その恩赦を受けるよ」
「馬鹿なのか? 捕らえた海賊になんでわざわざ恩赦を与える必要がある。捕らえた海賊は処刑に決まってるだろ」
「そんな……」
(また、俺は死ぬのか!?)
「しかし哀れだよな。泳いで逃げたのか小船を出して一人だけ助かったのか、いずれにせよ悪党はこうして捕まった。あっさりとな。お前、本当に黒ひげか?」
騎士達は笑った。
多分、本当は黒ひげじゃない! と言ったところで信用なんてされず、処刑が決まって縛り首なんだろう。それともこの世界ではギロチンなのか?
せめて、自分の死ぐらいは知りたいと思った。
「なぁ、教えてくれ。俺はどうやって処刑されるんだ?」
「この国では重犯罪は公開処刑と決まっている。残念だな、この国は重犯罪者には火刑となっている」
あろうことか一番苦しい死に方だ。
駄目だ、逃げなきゃ。
だが、今捕らえられている状況でどうやって逃げる?
いや、あるじゃないか。
「なら、死ぬ前に俺の隠し事を聞いてくれないか」
「なんだ? 財宝の隠し場所か? 是非とも俺達に教えてくれよ」
「俺は黒ひげじゃない。俺はて」
白い光がまた視界を襲った。
これなら、何度でも死を回避出来ると思った。
◇◆◇◆◇
今度はあの白い空間には行かず、深い森の中に俺は気づいたらいた。
あの場所から逃げ出すことは出来た。
うまくいったことに俺は思わず大笑いした。
長く、長く笑った。
こんなにうまくいったことはなかったからだ。
これはこれで便利で、利用できると思った。
「さて、次はどこに飛ばされたんだ」
その時の俺は気楽だった。このテレポートという手段には大きな欠陥があることに気づかずに。
俺はとりあえず森を出ることにした。
適当に歩いても迷うだけなので木登り出来そうな木を見つけると、それを登り始めた。
木を登っていった先に何が見えるのか。
そんなわくわくをしながら登った先に見えたのが、海だった。
海がある方向が分かると、俺は木を降りて真っ直ぐその方向に向かって歩いた。
海の方に向かえば何かあるだろう。
今のところ順調だ。問題なんてない。
そんな自信に満ち溢れながら森を抜けていくと、そこは崖だった。
海は見えるが港はない。
俺はとりあえず島周辺を沿って歩くことにした。
それも暫く歩くと、俺は簡単に島を一周した。
そこで元きた場所に戻ってから俺は大きな焦りを感じるようになった。
(まさかまさかまさか)
無人島なんて言葉は絶対に思いたくもないし、言葉にしたくない。まるで、それが現実になるのが怖かったからだ。
当たり前のように人のいる場所に点々と出来たが、最大のデメリットは行き先が此方では指定出来ないこと。
つまり、無人島に来てしまったら、2度と瞬間移動が出来なくなってしまう。
テレポートが出来る条件には明らかに自己では出来ず他者に依存していることだ。それがいない無人島はまさに行き止まり。
島のあちこちを歩いても人工物は一切見当たらない。そもそも崖で浜辺のない島に上陸することすら困難だろう。
俺は絶望になりながら海をじっと体育座りしながら眺めた。
この島には木の実すら見当たらなかった。草でも食べて空腹を耐える以外に空腹をおさえれそうなものは見当たらない。
もし、近くに船が通らなかったら俺は餓死するまでこのままなのだろうか。
火刑から逃れられたのに、餓死とか…… 。
いっそ、自殺した方が早いのか?
俺はずっとこの退屈な時間で死について考えていた。
◇◆◇◆◇
俺は死神に取り憑かれているのだろうか? でなければ何故こんな目に自分は合っているのだろうか。
異世界転生という現実から外に飛び出したのに、そこに待っていたのは現実に似た世界で、そこでは過酷と、すぐそばに死が存在した。
俺は事故でむしろ被害者で死んだ筈なんだ。なんで……
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あれ? 俺って横断歩道を歩いていたんじゃないのか?
映像が出る。そこにはちゃぶ台の前で酒に溺れるトラックの運転手だった男の姿だった。すっかり酒に生力を吸われた縮んだ男の背中が映りだされた。
それは見覚えのない記憶。
トラックの運転手は人を跳ねてしまったことをずっとトラウマのように感じ、酒に逃げていた。そして、酔いがさめればそれが無意味で自分の弱さを現実が彼を責めた。
衰弱し、それでも泥酔し、体を悪くし、早く人生を終えようとする男の姿があった。
そうか。俺は勘違いしていたんだ。俺は地獄に落とされるべき男なんだ。
せめて、俺がしてやれるのは、あの男性を救いはできないが……
俺は立ち上がった。
そして、深い海の底を見た。そこにあるのは太陽の光が届かない暗闇。
俺は崖から飛び降りた。
◇◆◇◆◇
死んだ先にあったのは真っ白な空間だった。
天井には47という数字が浮いていた。
そこにはウロボロスではなく、仮面を付けた女の人がいた。黒いドレスを身に着けて。
この空間で人と出会うのは初めてだった。
「あ、あの……」
俺は声をかけようとしてやめた。どうにかしようなんて間違えていると思ったからだ。俺は地獄に落ちて正解の人間だ。
「あなた、死の島に行ってしまったのね」
女性は俺に近づき、黒くよどんだ両目の瞼を閉じさせ、何かを唱えだした。
「いいわよ」
そう言われ目を開けると、なんだか不思議と気持ちが楽になっていた。
「死の島に行った人は死に取り憑かれてしまうの。ないものをあったように幻覚を見せてしまう。そして、自殺へ追い込むの。それが死の島を出た後も続いてしまうから、その島に知らずに入ってしまったらずるずると死を繰り返してしまう。気をつけなさい。瞬間移動は同じ世界で一度までにしといた方がいい。具体的な回数は分からないけれど、私は2回目で死の島であなたみたいになってしまった」
俺は気づけば涙を流していた。
記憶が蘇り、俺はあの時ちゃんと横断歩道で青信号で渡っていたのを思い出した。
「死をこのまま繰り返していたら、地獄へ行っていたわ」
「どうしてそれを……あなたは?」
「ごめんなさい。もう、時間がないの」
「ちょっと待って! 俺を置いて行かないでくれ!」
「ごめんなさい。それは出来ないわ。もうすぐで天使が私を追いかけてくるの」
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