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12 御伽話
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とある国の中心には白い城がある。そこには王様がいて、その王様目当てに謁見に来た客を玉座の間で毎日応じていて、城下町はいつも賑わっていて活気に満ち溢れている。緑豊かなその国を囲むように森と山と海があって、その遠くの土地で突如雲行きが悪くなって、枯れた緑もない大地に古城が建っている。そこから悲鳴と恐怖と怒号と不気味な笑い声とカラスの鳴き声がその城からずっと響いていた。その古城の地下深くには地獄があり、それは螺旋階段で繋がっている。地獄からは罪と闇が地上を支配しようと企む魔王が住んでいる。古城はかつては修道院でそれを城へと改築されたもの。そこでは古くから地獄に蓋をし封じてきた。それが解き放たれ、魔王の城と変貌した。国を守るには、勇者が必要だ。だが、この世界にはまだ勇者はいなかった。そこで王様は勇者を見つける為、闘技場をつくった。そこで勝ち残った13人を勇者とした。その勇者になるのに身分は問われなかった。それは奴隷でも。一生を奴隷として生きるか、戦うか。多くが出場し、沢山の血が流れた。大量の血を吸った闘技場はその地下に墓地をつくった。やがて、魔王軍が国を攻めてきた時、その闘技場の地下から通路を伸ばし、短時間の移動を可能にして侵入者を袋小路にして撃退した。最終的に選ばれた13人は勇者として王様の命令で魔王退治へと向かった。うち1人は唯一奴隷だった。あとは名のある騎士達だった。12人はその1人だけ違う身分、奴隷の男を見下していた。だが、それが最初の罠だったのだ。魔王はずっと前から王様が勇者を集めていたことに気づいていた。そして、7つの罠をその勇者達の行く手に仕掛けていたのだ。
最初の罠は「傲慢」だった。行く手に山のてっぺんから岩が転がり落ちてきた。その岩で1人の騎士がまず狙われた。彼は死ぬと思った。だが、近くにいた奴隷はその騎士を救った。自分を虐げた騎士を当然のように救った奴隷だったが、その足場が崩れ今度はその奴隷から足場から落ちそうになった。それを救ったのは助けたばかりの騎士だった。魔王は舌打ちをした。最初の罠は失敗したのだ。
次の罠は「貪欲」だった。過酷な長旅で疲労した騎士達は次第に帰りたくなった。幻覚を見せる濃い霧は勇者達に家に返って女と飯と風呂の夢を見せる。だが、元からそんな暮らしを持っていなかった奴隷にはそれが通用しなかった。奴隷は他の騎士達の目を覚まさせた。またしても罠は失敗したのだ。
その後の「邪淫」「怠惰」の罠も乗り越え、古城は目前まで来た。
城の鉄壁には龍が描かれた赤い旗が掲げられてあった。城壁には頭蓋骨が埋め込まれ、辺りは死臭で漂っていた。鼻がもげそうになり、口元を布で覆いながら城へと近づいた。
扉は鍵がかかっておらず開くと同時に埃が舞った。蜘蛛の巣がかかった家具や矛を被った窓や絵画を見るに、長年放置されてきた様子だった。
ふと、1人の騎士が広間の床に描かれた魔法陣を見つけた。
どうやら悪魔崇拝者がここを密かに利用していたようだ。
勇者達の目的は最深部、螺旋階段を降りていった先にある。
城内はまるで迷路のようで、まだ魔王が勇者に向け用意した罠が残っている。そのうち、魔王はそれまでの罠を突破出来たのもその奴隷の男のせいだと気づいた。そこで魔王はその奴隷から始末する為、奴隷なら最も引っ掛かるであろう「貪食」と「嫉妬」の罠を仕向けた。奴隷にとってみれば他の12人には持っていても自分が手に入らなかったもの、それによる嫉妬や食べ物もろくに与えられない奴隷にとって食べ物の誘いは耐えかねないだろう。真っ先に罠に引っ掛かってくれるであろうと魔王は楽しみにしていたが、奴隷はそのどちらも引っ掛かることはなかった。それは奴隷の身でありながら信仰を捨てずにここまで来たからである。その強い信仰により打ち勝つことが出来た奴隷はその罠を突破し、遂に勇者達は地獄へ続く螺旋階段を見つけた。その真下は深い闇へと繋がっており、地下なのに風が下から吹いていた。それは鳥肌を立たせる程の寒けと、そして幾つもの悲鳴だった。
魔王は言った。地獄へ来いと。そこで永遠の苦痛と悲しみを与えようと言った。無論、それで怯む勇者ではない。螺旋階段を降りていくうち、最後の罠が勇者達を襲った。最後の罠「憤怒」である。魔王は最後に勇者達で仲間割れをさせ戦わせようとした。だが、やはり奴隷の信仰は直ぐに魔王の罠であると気づき、それを仲間に説得する。またしても魔王の企みは打ち破られた。
魔王の企みは神をこの手で殺すこと。その神を信仰し続ける奴隷が一番気にくわなかった。
「人は神を完璧なものと想像するが、何故その神がつくった世界はこうも混沌で悪があるのか? 何故お前は人として生まれず奴隷として生まれたのか?」
「王様は言った。お前との戦いが終われば私は自由だと」
奴隷は自由の為に戦っていた。
「なら、お前だけを生かそう。あとは皆殺しだ。そうすれば、お前は自由だ」
「それじゃ何も残らない。魔王よ、何故そうまでして神を憎む」
「神は私を救わなかったからだ。与えたのは地獄だった」
「神は罪を赦すことだ。私は赦してもらう為、神に祈る。お前は告白をしたのか?」
魔王は嘲笑った。
騎士は奴隷に言う。魔王と口を利くな。操られるぞと。悪霊と違い魔王の力は格別だった。国随一の剣士の腕前をもって清めた剣が折れた。魔王の肉体はそれ程までに頑丈だった。魔王は地獄から炎を呼び出し、灼熱が勇者達を襲った。だが、それは本物の炎ではない。それは守護天使によって守られた。魔王は悪意に満ちた闇を解き放った。それは古城を突き抜け、世界へと散った。人を悪へ誘い、罪を犯させる闇だ。それは世界を包んだ。だが、勇者達は闇に溺れることはなかった。
「何故だ?」
「人は闇に抵抗出来る」
奴隷が放った闘技場のボロい剣は魔王を貫いた。
魔王は言った。
「悪は消えたりせん」
それは魔王もだった。
魔王の体が崩壊をする直前、魔王の魂はその奴隷へと乗り移ったのだった。
勇者達はそれに気づかず、魔王を倒したとされ一緒に英雄として国は迎え入れ、奴隷は王様との約束通り自由の身となった。闘技場の地下はその英雄を称える間として建造し治した。
今、その魔王の行方を知る者はいない。
最初の罠は「傲慢」だった。行く手に山のてっぺんから岩が転がり落ちてきた。その岩で1人の騎士がまず狙われた。彼は死ぬと思った。だが、近くにいた奴隷はその騎士を救った。自分を虐げた騎士を当然のように救った奴隷だったが、その足場が崩れ今度はその奴隷から足場から落ちそうになった。それを救ったのは助けたばかりの騎士だった。魔王は舌打ちをした。最初の罠は失敗したのだ。
次の罠は「貪欲」だった。過酷な長旅で疲労した騎士達は次第に帰りたくなった。幻覚を見せる濃い霧は勇者達に家に返って女と飯と風呂の夢を見せる。だが、元からそんな暮らしを持っていなかった奴隷にはそれが通用しなかった。奴隷は他の騎士達の目を覚まさせた。またしても罠は失敗したのだ。
その後の「邪淫」「怠惰」の罠も乗り越え、古城は目前まで来た。
城の鉄壁には龍が描かれた赤い旗が掲げられてあった。城壁には頭蓋骨が埋め込まれ、辺りは死臭で漂っていた。鼻がもげそうになり、口元を布で覆いながら城へと近づいた。
扉は鍵がかかっておらず開くと同時に埃が舞った。蜘蛛の巣がかかった家具や矛を被った窓や絵画を見るに、長年放置されてきた様子だった。
ふと、1人の騎士が広間の床に描かれた魔法陣を見つけた。
どうやら悪魔崇拝者がここを密かに利用していたようだ。
勇者達の目的は最深部、螺旋階段を降りていった先にある。
城内はまるで迷路のようで、まだ魔王が勇者に向け用意した罠が残っている。そのうち、魔王はそれまでの罠を突破出来たのもその奴隷の男のせいだと気づいた。そこで魔王はその奴隷から始末する為、奴隷なら最も引っ掛かるであろう「貪食」と「嫉妬」の罠を仕向けた。奴隷にとってみれば他の12人には持っていても自分が手に入らなかったもの、それによる嫉妬や食べ物もろくに与えられない奴隷にとって食べ物の誘いは耐えかねないだろう。真っ先に罠に引っ掛かってくれるであろうと魔王は楽しみにしていたが、奴隷はそのどちらも引っ掛かることはなかった。それは奴隷の身でありながら信仰を捨てずにここまで来たからである。その強い信仰により打ち勝つことが出来た奴隷はその罠を突破し、遂に勇者達は地獄へ続く螺旋階段を見つけた。その真下は深い闇へと繋がっており、地下なのに風が下から吹いていた。それは鳥肌を立たせる程の寒けと、そして幾つもの悲鳴だった。
魔王は言った。地獄へ来いと。そこで永遠の苦痛と悲しみを与えようと言った。無論、それで怯む勇者ではない。螺旋階段を降りていくうち、最後の罠が勇者達を襲った。最後の罠「憤怒」である。魔王は最後に勇者達で仲間割れをさせ戦わせようとした。だが、やはり奴隷の信仰は直ぐに魔王の罠であると気づき、それを仲間に説得する。またしても魔王の企みは打ち破られた。
魔王の企みは神をこの手で殺すこと。その神を信仰し続ける奴隷が一番気にくわなかった。
「人は神を完璧なものと想像するが、何故その神がつくった世界はこうも混沌で悪があるのか? 何故お前は人として生まれず奴隷として生まれたのか?」
「王様は言った。お前との戦いが終われば私は自由だと」
奴隷は自由の為に戦っていた。
「なら、お前だけを生かそう。あとは皆殺しだ。そうすれば、お前は自由だ」
「それじゃ何も残らない。魔王よ、何故そうまでして神を憎む」
「神は私を救わなかったからだ。与えたのは地獄だった」
「神は罪を赦すことだ。私は赦してもらう為、神に祈る。お前は告白をしたのか?」
魔王は嘲笑った。
騎士は奴隷に言う。魔王と口を利くな。操られるぞと。悪霊と違い魔王の力は格別だった。国随一の剣士の腕前をもって清めた剣が折れた。魔王の肉体はそれ程までに頑丈だった。魔王は地獄から炎を呼び出し、灼熱が勇者達を襲った。だが、それは本物の炎ではない。それは守護天使によって守られた。魔王は悪意に満ちた闇を解き放った。それは古城を突き抜け、世界へと散った。人を悪へ誘い、罪を犯させる闇だ。それは世界を包んだ。だが、勇者達は闇に溺れることはなかった。
「何故だ?」
「人は闇に抵抗出来る」
奴隷が放った闘技場のボロい剣は魔王を貫いた。
魔王は言った。
「悪は消えたりせん」
それは魔王もだった。
魔王の体が崩壊をする直前、魔王の魂はその奴隷へと乗り移ったのだった。
勇者達はそれに気づかず、魔王を倒したとされ一緒に英雄として国は迎え入れ、奴隷は王様との約束通り自由の身となった。闘技場の地下はその英雄を称える間として建造し治した。
今、その魔王の行方を知る者はいない。
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