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人は過ちを犯す。だが、それがまだ引き返せるものなら、後悔だけで済む話だ。だが、世の中には引き返すことが出来ないものがある。殺人だ。人を殺すという一線をこえてしまったらそこからどう足掻いたところで、引き返すことは出来ない。一生の重い十字架を背負って生きていくしかない。
落合は煙草の煙を天に向かって吐いた。
空は灰色をしていた。
「天気悪いな」
今回の事件、分からないことが犯人の動機だ。犯行可能な人物は絞り込めても、問題はどのようなトラブルがあったのか、どの教師から訊いても、トラブルはなかったとまるで口裏を合わせるかのように同じ答え方をした。
しかし、職場の中で孤立するのは何らかの原因があると思うのが普通だ。
「落合さん」と岡田が呼んだ。
「なんだ」
「校長が16時に記者会見を行うそうです。流石にずっと黙っておくことは出来ないと」
「構わないが、校長にはくれぐれも警察から訊かれたことは話さないよう言うんだぞ」
「分かってます。そのように言ってあります」
「校長の様子は」
「かなり疲れた感じでした」
「だろうな。学校で殺人が起こったんだ。更に、疑われているのは教師だ」
「しかし、動機は見当たらないですね」
「それは気になっていたところなんだが、まだ訊いていない人物がいる」
「あれ? 他にいましたっけ。用務員にも事務員からにも全員話を訊いてきましたが」
「児童だ」
「えっ!」
「ガキの言うことだが、子ども達から見て先生がどのように見えたのか気になる。実際、第一発見者の児童の証言で担任が問題児で苦労していたのが分かったしな」
「しかし、いいんですか? 警察が殺人事件の捜査で子どもに聞き取りするのは……」
「本部にはさっき電話して許可をもらった」
「よく取れましたね」
「不満そうだったが、事件を早期に解決するには止む終えないと判断したんだろう。ただし、条件付きだ。相手が拒否したらそれ以上は無し、保護者と同伴だそうだ」
煙草を吸い終わり、落合は早速岡田と一緒に車へと向かった。
◇◆◇◆◇
落合が最初に向かったのは問題児の宮脇という少年の自宅だった。一軒家で、インターホンで玄関から出てきたのは若いお母さんだった。
事情を話すと中へ案内され、リビングで息子の少年と母と向かい合うように席に座った。
「あ、お茶をお出しします」と、母親が座って直ぐに立ち上がろうとしたので、落合が「いえ、結構です。直ぐに終わりますから」と言って遠慮した。
「あ、そうですか」
「では早速訊きたいんだけどもいいかな」
少年は頷いた。スポーツ少年といった雰囲気のある子どもだが、刑事二人を前にしているのか大人しい。
「まず、お名前は」
「宮脇洋介」
「洋介君、もうニュースで知っているかもしれないが、おじさん達は事件の捜査で来ている」
「先生が殺されたんですよね」
声が怯えていた。当然かもしれない、学校で殺人が起こったんだ。自分が何気なく通っていたその学校にまさか殺人犯が潜んでいるのを考えれば尚の事だ。
「大丈夫、我々が必ず犯人を捕まえるから。その為には君に訊きたいことがあるんだ。まず、小林先生について。小林先生はどんな先生だった?」
「……普通」
「普通? そうか。それじゃ、君にとって小林先生は好きだった? 嫌いだった? 因みに、君が正直に話してくれたことは誰にも話さないから、おじさん達に正直に話をして欲しい」
「嫌い」
「嫌い、理由を訊いても?」
「気味が悪いから」
落合と岡田は思わず顔を合わせた。
「先生は女子の躰をやたら触ってたんだ。でも、手を掴んだりとかぐらいだったけど」
「具体的に教えてくれないかな」
「女子に訊いてよ。一番知っていると思うから」
すると、隣にいたお母さんは「なんで、私に言わなかったの」と息子に言った。
「まぁまぁ……それで、君は先生のことをそれじゃ嫌っていたんだね。君以外はどうかな」
「気づいている奴は多分嫌いだったと思う。特に女子は」
それから訊いた話では、少年がからかっていたのはロリコンではないかという先生に対しての意地悪な発言ばかりで、先生は必死に否定をしていたが、周りの皆はそうは思っていなかったことだった。
落合は煙草の煙を天に向かって吐いた。
空は灰色をしていた。
「天気悪いな」
今回の事件、分からないことが犯人の動機だ。犯行可能な人物は絞り込めても、問題はどのようなトラブルがあったのか、どの教師から訊いても、トラブルはなかったとまるで口裏を合わせるかのように同じ答え方をした。
しかし、職場の中で孤立するのは何らかの原因があると思うのが普通だ。
「落合さん」と岡田が呼んだ。
「なんだ」
「校長が16時に記者会見を行うそうです。流石にずっと黙っておくことは出来ないと」
「構わないが、校長にはくれぐれも警察から訊かれたことは話さないよう言うんだぞ」
「分かってます。そのように言ってあります」
「校長の様子は」
「かなり疲れた感じでした」
「だろうな。学校で殺人が起こったんだ。更に、疑われているのは教師だ」
「しかし、動機は見当たらないですね」
「それは気になっていたところなんだが、まだ訊いていない人物がいる」
「あれ? 他にいましたっけ。用務員にも事務員からにも全員話を訊いてきましたが」
「児童だ」
「えっ!」
「ガキの言うことだが、子ども達から見て先生がどのように見えたのか気になる。実際、第一発見者の児童の証言で担任が問題児で苦労していたのが分かったしな」
「しかし、いいんですか? 警察が殺人事件の捜査で子どもに聞き取りするのは……」
「本部にはさっき電話して許可をもらった」
「よく取れましたね」
「不満そうだったが、事件を早期に解決するには止む終えないと判断したんだろう。ただし、条件付きだ。相手が拒否したらそれ以上は無し、保護者と同伴だそうだ」
煙草を吸い終わり、落合は早速岡田と一緒に車へと向かった。
◇◆◇◆◇
落合が最初に向かったのは問題児の宮脇という少年の自宅だった。一軒家で、インターホンで玄関から出てきたのは若いお母さんだった。
事情を話すと中へ案内され、リビングで息子の少年と母と向かい合うように席に座った。
「あ、お茶をお出しします」と、母親が座って直ぐに立ち上がろうとしたので、落合が「いえ、結構です。直ぐに終わりますから」と言って遠慮した。
「あ、そうですか」
「では早速訊きたいんだけどもいいかな」
少年は頷いた。スポーツ少年といった雰囲気のある子どもだが、刑事二人を前にしているのか大人しい。
「まず、お名前は」
「宮脇洋介」
「洋介君、もうニュースで知っているかもしれないが、おじさん達は事件の捜査で来ている」
「先生が殺されたんですよね」
声が怯えていた。当然かもしれない、学校で殺人が起こったんだ。自分が何気なく通っていたその学校にまさか殺人犯が潜んでいるのを考えれば尚の事だ。
「大丈夫、我々が必ず犯人を捕まえるから。その為には君に訊きたいことがあるんだ。まず、小林先生について。小林先生はどんな先生だった?」
「……普通」
「普通? そうか。それじゃ、君にとって小林先生は好きだった? 嫌いだった? 因みに、君が正直に話してくれたことは誰にも話さないから、おじさん達に正直に話をして欲しい」
「嫌い」
「嫌い、理由を訊いても?」
「気味が悪いから」
落合と岡田は思わず顔を合わせた。
「先生は女子の躰をやたら触ってたんだ。でも、手を掴んだりとかぐらいだったけど」
「具体的に教えてくれないかな」
「女子に訊いてよ。一番知っていると思うから」
すると、隣にいたお母さんは「なんで、私に言わなかったの」と息子に言った。
「まぁまぁ……それで、君は先生のことをそれじゃ嫌っていたんだね。君以外はどうかな」
「気づいている奴は多分嫌いだったと思う。特に女子は」
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