おかしな学校

アズ

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 落合が呼んだのは白髪の学年主任だった。
「お座り下さい」
「失礼します」
 相変わらず姿勢がいい。
「実は小林先生について昨日新たに分かったことがありました」
 すると、一瞬だが妙な間が間いた。
「新たなことですか?」
「はい。何か分かりますか」
 ここはあえて此方が説明する前に訊いてみた。
 だが、考える様子を見せてから何か困った顔をした。
 ようやく出てきた言葉は「それは事件と関係のある話しでしょうか」と言った。
 落合は確信した。この主任は知っていたのだ。
「それは今後調べていきます」
 学年主任は観念したかのように二人の刑事の前で告白した。
「実を言うと小林先生について児童が妙な噂をしているのを知り、児童に直接聞きました。すると、驚くべきことに小林先生は女子児童に対して……その……なんと言えばいいか分からないのですが」
「構いませんよ、続けて下さい」
「先生は女子児童にイヤらしい気持ちを持っていたようで。まさかとは思いましたが、先生を呼び出して直接本人に聞きました。小林先生は最初驚いた顔をして、その後困惑した表情で言ったんです」



「宮脇とその周りが勝手にありもしないことを嘘をついてからかっているんです。本当にそんなことはありません」



「私も証拠はありませんでしたし、話しを広げたくないこともあってか、他の先生には言わず直接訊くことにしたのですが、結果先生の機嫌を悪くさせてしまいました。先生は私にそのような疑いをかけられショックを受けた様子でした」
「小林先生は子ども達は嘘をついていると言ったんですか」
「はい。そんなことはないとハッキリと言われました」
「それでは教頭や校長にはそのことは報告しなかったのですね」
「はい。やはり、それが問題に?」
「いえ、今回の事件と関係があるかはまだ分かりません。しかし、気になったのです。小林先生は職員の中では孤立していた。その原因がどこにあるのか気になりましてね」
「私は誰にもこのことを話してませんよ」
「そうかもしれません。しかし、それが本当かどうかは重要ではありません。先生が気づいたように、他の先生も子ども達からの話しを耳にした可能性があるからです」
「やはり、私がしっかりと校長先生に報告をするべきでした」
「先生、まだ後悔するのは早いと思います。孤立した原因が例え分かっても、殺害する動機にまでは至っていません。しかし、これだけはハッキリしているでしょう。小林先生にとっては自分を味方してくれる仲間があの職員室にはいなかった。そうではありませんか?」
「しかし、刑事さん。先生が否定したようにからかわれていただけかもしれません」
「私はある少年と話しを聞きました。大人刑事二人を前に小学生が嘘をつき通せると思いますか」
「では……」
「子ども達の言っていることは本当でしょう。むしろ、嘘をついているのは大人の方だ」
 落合は語気を強めた。
「先生、あなたは大事なことを我々に隠していました。しかも、クラスから人気のある先生だとあなたは言った。しかし、実際は真逆だった。それをあなたは気づいていた。あろうことか警察にそれを嘘をついて隠した。それは必要な嘘だったんですか」
「それは……」
 完全に圧倒されている。だが、落合は攻撃を緩めななかった。
「それは何です?」
「小林先生の名誉をと思って……」
「何が名誉なんですか? このごに及んで小林先生の名誉で警察に嘘をつきますか? 小林先生はもういないんです。嘘をつく理由がありますか? むしろ、小林先生のしたことに気づいていたら嘘などつかずに我々に言うべきでした。そうではありませんか?」
「事件とは関係のないことだと勝手に思っていました」
「勝手に? ええ、そうでしょう。この学校の教師達は失礼を承知でハッキリ言えば信用ならない。あなた達は我々に嘘をつき通せるとお考えのようだ。だが、あなた達と会話を重ねるごとに今もこうして隠れていた真実が見えてきている」
「嘘をついたことには大変申し訳なく思っています。しかし、先程も言いました。証拠がなかったのです。本当ではなかったかもしれません」
「いえ、あなた達は確信を持っていた。だから、あなた達は小林先生をのけ者にしたのです。あなた達の企みはその通りになり、小林先生は孤立したのです。あなたが言っていた通り証拠はなかったのは本当でしょう。それは真実でしょう。しかし、あなた達は小林先生より児童の、子ども達の話しを信じたのではありませんか?」
「……」
 気づけば、学年主任は涙を流していた。
「すいません」
「私は気になるのです。先生達が何故そこまでしてそれを隠していたのか? 誰です? それを命令したのは」
 もう確信していたが、落合はあえて言わせるような質問をした。
「教頭先生です……」
 涙ながらに学年主任は訴えた。
 落合は頷いた。答えが聞けたからだ。
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