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03 露天風呂
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再び夢の世界に入ると、目の前には美容の湯があった。確か、外に病を治す温泉があると言っていた。
私は外を探した。それは案外露天風呂への扉は直ぐ近くにあって、簡単に見つけることが出来た。引き戸で扉を開けると外の冷たい空気が肌に刺さる。
「お客さん、外気はより冷えます。体が完全に冷えきる前に温泉に入って下さいね」
背後に突然現れた少女はそう言った。
私は外へ出た。
外は森になっていた。緑溢れる景色が広がる所々に小道沿いに温泉があった。
最初に見つけたのは恋愛の湯。その温泉の湯は真っ赤に染まっていて、若い男女が狂ったように抱き合いながら入っている。この温泉は混浴らしい。これが夢でなかったら悲鳴をあげていたところだ。男女の表情はどこか人間味がなく、むしろ野獣に近い目をしていた。瞳の奥深くから鋭い眼光がこちらを向くと私は直ぐに目をそらした。若い女達がそれを見てクスクスと笑いだした。
妖艶な女性達とたくましい肉体の巨漢達の入る狂気な温泉から私は遠ざかるように足早に目的の温泉探しを続けた。
女と男の声が遠ざかると、今度は小鳥達の鳴き声が耳に入ってきた。枝に鳥がとまっていたのだ。私はその鳥を一瞥すると、次の温泉が見えてきた。
それは黄金の色をした温泉だった。看板にも黄金の湯と書かれてある。
「黄金の湯?」
「この中に入れば金持ち間違いなし! 金運アップです」
突然現れた少女が胡散臭い感じの説明をした。
「でも、皆の様子が変だよ」
表情は皆顔が真っ赤でのぼせているようにしか見えない。
「皆欲深くて出たがらないんだよ」
それを聞いてなんだか怖く感じた。
「病を治す温泉はどこにあるの?」
少女は指をさした。
「もっと向こうだよ」
「それってどれぐらい?」
「かなり」
「かなり……なんでそんなに遠いところにあるの?」
「そんなこと言われてもなぁ……」
少女はそう言うとまた消えていった。
まるで霧のように現れては消える不思議な子だった。
それから私は少女の言葉を信じて目的の温泉を探しに向かった。
だが、外は広くその日のうちに見つけることは出来なかった。
目が覚めた時、悪寒と倦怠感が酷く襲ってきた。
「お姉ちゃん、顔色凄く悪いよ。今、看護師さん呼ぶね」
顔色を覗いていたつばきはナースコールを押して看護師を呼んだ。
私はまた暫く休むことにした。
夢の中で私は気づけばサウナの中にいた。高温で、その中には私しかいなかった。
「どうしてサウナ?」
夢の続きなら、私は外にいる筈だけど…… 。
とりあえずサウナの中だと呼吸がしにくいので外に出ることにした。木の扉を開けようとするが、扉はびくともしなかった。押して駄目なら引くタイプか? 間違えたと思って引いてみたが扉はやはりびくともしなかった。
「え? どうして!?」
こんなことは初めてだった。私は怯え、扉を何度も押したり引いたりしてみたが、やはり扉はびくともしなかった。引き戸だったという冗談無しに本当に扉が開かず、サウナから出られなかった。
「ちょっとどうなってるの!?」
私は泣きそうになった。だからといって事態が解決してくれるわけでもなかった。脱出ルートを探してみたが、それらしきものはなかった。脱出不可能。完全に閉じ込められたと知った私は「誰か来て」と必死に叫んで呼んだ。これが普通の夢なら単なるトラウマで終わるんだろうが、この夢はどこかおかしかった。私はどうなってしまうのか? 死んでしまうのか? 汗が溢れ出る。ポタポタと汗が垂れながら、ふらつく頭の中で解決策を考える。夢なら何でも出来るでしょ? 想像して脱出するんだ! と考えてもサウナという密室は堅牢で何も起こらない。私は意識が朦朧として遂には床に座り込んだ。
「私……死ぬのかな……」
諦めかけたその時、私の意識は夢から現実へと変わる。そこでは看護師が私の看病をしていた。
「大丈夫ですか? どうしたんです? 急にひどい熱を出して。酷い風邪ね」
私はそこで夢の中の少女の言葉を思い出す。私は夢の中でずっと外にいた。そこで風邪をひいたのだ。それが現実になった。
熱が下がった頃、私はつばきに夢の話しをした。
「あの夢にはルールがあるんだと思う。あの夢で起こったは現実になる。そして、温泉に長いこと入るとのぼせてしまい、謎の少女に強制的に現実に帰される。逆に温泉に入っていないと風邪になってしまう。多分、そんなところだと思う」
「その夢見ない方がいいんじゃない?」
「そうしたくても出来ないんだよ。あの夢は」
私は外を探した。それは案外露天風呂への扉は直ぐ近くにあって、簡単に見つけることが出来た。引き戸で扉を開けると外の冷たい空気が肌に刺さる。
「お客さん、外気はより冷えます。体が完全に冷えきる前に温泉に入って下さいね」
背後に突然現れた少女はそう言った。
私は外へ出た。
外は森になっていた。緑溢れる景色が広がる所々に小道沿いに温泉があった。
最初に見つけたのは恋愛の湯。その温泉の湯は真っ赤に染まっていて、若い男女が狂ったように抱き合いながら入っている。この温泉は混浴らしい。これが夢でなかったら悲鳴をあげていたところだ。男女の表情はどこか人間味がなく、むしろ野獣に近い目をしていた。瞳の奥深くから鋭い眼光がこちらを向くと私は直ぐに目をそらした。若い女達がそれを見てクスクスと笑いだした。
妖艶な女性達とたくましい肉体の巨漢達の入る狂気な温泉から私は遠ざかるように足早に目的の温泉探しを続けた。
女と男の声が遠ざかると、今度は小鳥達の鳴き声が耳に入ってきた。枝に鳥がとまっていたのだ。私はその鳥を一瞥すると、次の温泉が見えてきた。
それは黄金の色をした温泉だった。看板にも黄金の湯と書かれてある。
「黄金の湯?」
「この中に入れば金持ち間違いなし! 金運アップです」
突然現れた少女が胡散臭い感じの説明をした。
「でも、皆の様子が変だよ」
表情は皆顔が真っ赤でのぼせているようにしか見えない。
「皆欲深くて出たがらないんだよ」
それを聞いてなんだか怖く感じた。
「病を治す温泉はどこにあるの?」
少女は指をさした。
「もっと向こうだよ」
「それってどれぐらい?」
「かなり」
「かなり……なんでそんなに遠いところにあるの?」
「そんなこと言われてもなぁ……」
少女はそう言うとまた消えていった。
まるで霧のように現れては消える不思議な子だった。
それから私は少女の言葉を信じて目的の温泉を探しに向かった。
だが、外は広くその日のうちに見つけることは出来なかった。
目が覚めた時、悪寒と倦怠感が酷く襲ってきた。
「お姉ちゃん、顔色凄く悪いよ。今、看護師さん呼ぶね」
顔色を覗いていたつばきはナースコールを押して看護師を呼んだ。
私はまた暫く休むことにした。
夢の中で私は気づけばサウナの中にいた。高温で、その中には私しかいなかった。
「どうしてサウナ?」
夢の続きなら、私は外にいる筈だけど…… 。
とりあえずサウナの中だと呼吸がしにくいので外に出ることにした。木の扉を開けようとするが、扉はびくともしなかった。押して駄目なら引くタイプか? 間違えたと思って引いてみたが扉はやはりびくともしなかった。
「え? どうして!?」
こんなことは初めてだった。私は怯え、扉を何度も押したり引いたりしてみたが、やはり扉はびくともしなかった。引き戸だったという冗談無しに本当に扉が開かず、サウナから出られなかった。
「ちょっとどうなってるの!?」
私は泣きそうになった。だからといって事態が解決してくれるわけでもなかった。脱出ルートを探してみたが、それらしきものはなかった。脱出不可能。完全に閉じ込められたと知った私は「誰か来て」と必死に叫んで呼んだ。これが普通の夢なら単なるトラウマで終わるんだろうが、この夢はどこかおかしかった。私はどうなってしまうのか? 死んでしまうのか? 汗が溢れ出る。ポタポタと汗が垂れながら、ふらつく頭の中で解決策を考える。夢なら何でも出来るでしょ? 想像して脱出するんだ! と考えてもサウナという密室は堅牢で何も起こらない。私は意識が朦朧として遂には床に座り込んだ。
「私……死ぬのかな……」
諦めかけたその時、私の意識は夢から現実へと変わる。そこでは看護師が私の看病をしていた。
「大丈夫ですか? どうしたんです? 急にひどい熱を出して。酷い風邪ね」
私はそこで夢の中の少女の言葉を思い出す。私は夢の中でずっと外にいた。そこで風邪をひいたのだ。それが現実になった。
熱が下がった頃、私はつばきに夢の話しをした。
「あの夢にはルールがあるんだと思う。あの夢で起こったは現実になる。そして、温泉に長いこと入るとのぼせてしまい、謎の少女に強制的に現実に帰される。逆に温泉に入っていないと風邪になってしまう。多分、そんなところだと思う」
「その夢見ない方がいいんじゃない?」
「そうしたくても出来ないんだよ。あの夢は」
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