湯屋

アズ

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04 諦めない心は希望

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 気づいた頃にはまたサウナにいた。今度は他のお客さんもいた。私は少し焦りながら扉に向かい手を伸ばした。今度は扉が開いた。
 温泉の室内でまた外へいちから向かわなければならない。
 この温泉に出口があるなら、温泉を出たらどうなるんだろうか? そう思って脱衣場へ向かおうとしたが、そこに扉はなく壁になっていた。
「どういうこと?」
「私こそどういうこと?」
 少女は突然現れた。
「お客さん、まさか帰りたいと思ってる? まだ目的も果たしていないのに? あれだけ体験すれば分かった筈だよ。私の言ったことが本当だって。ここでならなんでも揃ってる。それを叶えずに帰るの? そんな勿体ないことしないよね? あなたは普通を望んでいた。それがここでなら手に入るんだよ? それだけじゃない。金持ちにだって美人にだってなんでも手に入るんだから。病気を治すだけが全てじゃないでしょ?」
「私を帰さないつもり?」
「勿論、帰りたいと望むならその通りにするよ。でもこれだけは言わせて。一度出れば二度と訪れない。あなたはチャンスをそう簡単に諦めるわけ? それに、お客さんはあなただけじゃないわよ」
 少女はそう言って首を横に向けた。私も同じ方向を向いた。
「お姉ちゃん?」
 そこにはつばきちゃんが立っていた。
「ここってお姉ちゃんが言っていた夢の中だよね?」
「まさか、あなたが彼女をここに招いたの?」
「望まれたから案内したんです。あなたの話しを聞いて彼女もこの極楽湯に憧れたんです。さぁ、二人で楽しんでいって下さい」
 少女はそう言うとまた消えていった。
「お姉ちゃん」
「つばきちゃん、私が病室で言ったルールは覚えてる?」
「うん」
「とにかくこっちへ」
 そう言って案内したのはただの湯だった。
「とにかくこの中に入ろう」
 二人はその温泉の中に入って浸かった。
「お姉ちゃん、でもこの温泉にあるんでしょ? 私達の病気を治してくれるかもしれない温泉が」
「多分ね……あの少女が言うには外のかなり離れた場所にあるらしい。でも、ここの温泉、ナメてたら痛い目見ると思う」
「でも、私は自分の病気を治したい!」
「つばきちゃん……」
 つばきちゃんの気持ちは自分にも分かる。だからこそ私はつい頷いてしまった。
 そうとなれば私達は作戦をたてた。長湯はしない、体が冷えてきたらとりあえず温泉に入る。こうしながら目的の温泉を目指す。
 私達はただの湯から出ると外へと出た。それから私が黄金の湯まで行けた温泉までたどり着いた。そこで二人はその温泉に入った。今日の夢はそこまでだった。



 翌日。
 つばきは親からお小遣いが貰えたと喜んでいた。
「ねぇ、お姉ちゃん。もう少しあの湯に浸かってちゃ駄目かな」
「駄目!」
 もう少しと言って目的を忘れのぼせきった駄目人間のようにつばきちゃんもなって欲しくはなかった。
「分かったよ」
 少し残念そうに言ったが素直に受け入れてくれた。
 私は少し夢について自分のスマホで調べてみた。最初は夢オチでどうせ終わるだろうと思っていたのに、徐々にそれは想像を上回ることになってきた。この不思議体験を他にいないかSNSで調べてみても中々それらしきものは見つからなかった。
 ラジオ体操が流れる。
 つばきは勉強道具を出していた。
 あの夢での出来事が本当だとしたら私達には希望がある。そこで私達は二人だけの約束をした。生きることを諦めない。私達はその為に現実では勉強を頑張ることにした。
 あの温泉がなんなのか分からないけれど、私達は必ず生き残る。絶対に。
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