赤いリボンに包まれた七不思議

アズ

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 不思議な夢だった。しかし、目が覚めてしまうと、途中からの記憶がもう思い出せないでいた。あの後、どうなったんだっけ? それとも、見ていた夢はそれで途切れたのかもしれない。
 夢で感じた時間より現実の方が早く時が進んでいた。
 あっという間。そう感じるのは、眠り足りないという本音があるからだろう。
 しかし、いつまでも横になっているわけにもいかない。なんとか体を起こして洗面所へと向かう。
 顔を洗い、歯を磨き、昨日勉強したことを思い出す。そういう時は割と寝起きでも覚えていたりするのだが、どうでもいい記憶はどんどん消えていく。
 学校で女子とどんな話しをしていたのかもあまり覚えていない。そして、また同じ内容をついつい喋ってしまい、それ前にも聞いたよと言われて、そうだっけ? となる。そんな日常。
 朝食はパンを食べるだけで、サラダやヨーグルトを食べたりはしない。そもそも、食器を使えば、洗わなければならないので、その手間をなくしたかった。
 パンはなんでもよかった。いつも、母が買ってきて、なくなってきたら勝手に補充されてあった。
 でも、食パンの時はなかった。食パンは皿を使うからだ。
 そもそも、食パンをトーストして食べて……なんてことをしない。両親はそもそも朝食を食べない。いつもインスタントコーヒーを飲んでいた。それが朝食とでも言うのか。朝ご飯は食べた方がいい。そうでないと午前中はパワーが出ない。面倒でも、朝食は食べた方がいい。私は何度か朝食を抜いた時の実感から朝食は抜かない方がいいなと思っている。でも、テレビでたまに紹介される意識高めの朝食みたいにはいかないしそれは面倒で長く続けられそうにない。だから、簡単でいい。とにかく、腹になにか入ればそれでいいんだ。
 そんな中学生の腹にパンが入ると、後は荷物の確認だ。
 常に、朝は余裕がとれるように起きていた。基本的に体に染み付いているのか目覚ましが鳴る前に大抵は目が覚める。まるで、そろそろだぞと体内時計が私を目覚めさせているみたい。



◇◆◇◆◇



 学校では期末試験の範囲となる授業内容だった。中間テストも期末テストも、テストと呼ばれるものはどうしてこうも人を不機嫌にしてくれるのだろうか。そもそも、小学生の頃はテストなんてそこまで嫌なものではなかった。いい点数が取れた時だけ親に見せて、悪い点数はよく隠したものだ。両親はそれに気づきもしなかった。中学生と違い、数日かけてテストという感じではないからだ。いや、違う。中学生のテストの成績は進学に関わるからだ。それが大きな違いだろう。
 まぁ、それが小学生にはなかったプレッシャーを中学生は感じる。それに、学校は小学生の時とは違い、なにか楽しいという感じではない。勿論、行事は楽しみだ。だけど、そうでない時はとにかく楽しくなかった。友達が未だ少ないからか? いや、中学生は色々と忙しい。小学生みたいに放課後遊びに行こうとはならない。部活動、習い事、色々。
 昼休みのクラスでドッジボールも中学生にはない。
 かわりに、私は中学生になってから本を読む数を増やした。
 話を戻そう。そう、夢の話しだ。
 三つ子には私が見た不思議な夢の話しは昼休みの時間になんとなくすることにした。
 何故、夢の話しをしたのか。それが真っ先に話題のネタで浮かんだからだ。それしかないのは、普段はテレビを見ないから。夕方から夜の時間帯はチャンネルの権利は両親にある。その点、私は一度も(多分)不満を口にしたことはなかったと思う。そのテレビを買ったのは両親だし、テレビは一台しかない。そのテレビの為に家族と一緒にリビングにいるより、自室に戻って一人になる時間を長く確保するのが中学生の私だった。
 言っとくと、私にスマホはない。だから、動画とか最近の流行りとかはその分クラスの中ではおそらくは出遅れていると思う。でも、両親が私にスマホを与えない理由はなんとなく分かる。いや、実際聞いたわけじゃないけど、想像で予想だけど、まず第一にスマホは高価だ。その高価なスマホを私のような中学生に与えるのは果たしてどうなのだろうかという点。また、最近ではネット犯罪に巻き込まれるケースも度々報道になったりする。私もそれを聞くとちょっと怖いかなと感じなくもない。あと、これは個人的だが使いこなせるかどうかという問題もある。いや、これは実際に使ってみないと分からないことなんだけど、私は学校のパソコンの授業では正直に言えば、パソコンは苦手だった。だから、使いこなせる自信はちょっとない。
 そもそも、不便に感じたことはない。しかし、欲しいかと言われれば、他の子が持っているとちょっと憧れたりはしなくもない。しかし、私の家みたいにスマホを与えていない家庭はうちのクラスでは全然珍しくはなかった。
 因みに、というより当たり前だけど、学校にスマホの持ち込みは禁止されている。うちだけでなく、その周りもそうだし、前にいた学校でもそうだった。



 私が夢の話しをしたら「なにそれ、怖っ」と、まぁだいたい予想がつく答えが返ってきた。
「夢に墓とか……」
 占いに詳しい人ならそれで夢占いで私の状況を説明してくれるに違いない。しかし、占いに詳しい人物はクラスにはいなかった。せいぜい朝のテレビで流れる占いを見る人がいる程度だった。
 しかし、占いではないが、別の方面の専門家……というかそれに近い人物ならクラスにいた。そして、その男子は特に私の話しに三つ子より興味を持つような反応をしていた。
「なに、太郎。また、私達の話し勝手に聞いてたの」と裕子は怒り、周りの男子はからかうように太郎を笑った。しかし、太郎は気にもせず、此方に近づくと私の顔を見て言った。
「夢に墓を見たってのは本当か?」
「え? あ、うん」
「なら、もう父さんに話すしかないかもな」
 彼は真剣にそう呟きながら考え込んでしまった。
「やめてあげなよ、余計怖がっちゃうじゃん」と菜月は言った。
 しかし、太郎は別に怖がらせようとしていないことを私はなんとなくそう思っていた。彼の真剣そうな様子を見たら尚更…… 。
 すると、ようやく彼は次の言葉を喋りだした。
「俺の父さんが言うんだ。最近、近所を回っているが、今まで感じていた小さな霊も今は全く感じないって」
「幽霊がいるなら成仏させるべきじゃないの? 安らかになんちゃらとか。あなたのお父さんならそれぐらいできるでしょ?」と裕子は言った。
「霊にも悪いやつとそうでないやつがいるんだよ。それに、害がある程の霊じゃなきゃ、急ぐ必要もない。でも、問題はそこじゃない。父さんは異常な事態になっているって言ってるんだ。もしかすると、それはお前かもしれない。お前が来てから、この辺りはおかしくなった」
「佳代子のせいじゃないでしょ」と菜月が言っても、太郎は考えを変えようとはしなかった。むしろ、なにか確信を得たかのようだった。
「お前にだけオカルト現象が起きているなら、霊はお前に集まっているのかもしれたい。言ったろ? お前は霊を引き寄せてしまうって」
「え、それじゃあどうすればいいの?」
 これはまるで高いお守りとか買わせる商売文句にまんまと引っ掛かるようだが、私には残念ながら引っ掛かるような金はない。
「今日、学校が終わったらうちの寺に来い」
 太郎はまだ真剣だ。悪戯とかではない。マジだ。
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