赤いリボンに包まれた七不思議

アズ

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 不思議な気分だ。私は退院し、それからも夢遊病は起きていない。そして、例の夢も見ることはなくなっていた。確か探偵事務所の社長さんは私の中にある地縛霊を取り除くと約束していたが、それが果たされたのかと思ったが、退院した翌日、太郎のお父さんからは更に深刻になっていると私達に説明した。なんでも、あの女性の素人のせいで、私の中の霊が凶暴化したそうだ。しかし、私はなんともないし、なんなら夢遊病もなくなったので解決したかのように感じていたぐらいだ。
 まるで、症状がおさまり病気が治ったと思ったかのように。しかし、凶暴化しているとは。
 でも、特になにもないからとりあえず理由もなく学校を休むわけにもいかず、その翌日には登校をすることにした。
 両親からは無理しなくていいと言われたが、学校ではそろそろ期末が近づいてくるので、そうもいかなかった。それに、入院していたぶん、皆からの遅れもある。一様、私の手元に学校からプリントは送られてきたが、これ以上は休められない。
 しかし、どうしたことだろうか。頭がスッキリしたのか、授業がなんか楽しい。久しぶり過ぎてなのか、頭の中にどんどん勉強が入っていく。
 苦手だった教科も、今では何故苦手だったのかさえ分からない。
 なんだ、楽勝じゃん。
 もしかして夢ではないかと思い、何度頬をつねってみても、やはり現実だった。
 これなら、期末テストも楽勝だろう。



 そして、実際その通りになった。
 期末テスト、試験の結果全ての教科が満点。学年順位が真ん中から一気に一位になった。
 ありえない成長。入院して出てきたら頭がよくなったとか、まるで本当に病気で今まで本気が出なかったという嬉しい中二病の展開である。
 だが、太郎はそんな私をよくは思っていなかった。
 明らかに私の異変に気づいている。
 体育も、明らかに運動神経がよくなり、部活では試合に楽勝で勝ててしまうくらいに。このままなら全国を狙えるかもしれない。
 しかし、太郎はそんな調子のいい私を呼び出した。
「なに?」
「調子に乗りすぎだ」
 怒られた。
「お前の力じゃないんだぞ。これは、明らかにお前の中の霊のエネルギーによる作用だ」
「でもいいじゃない。悪くないわよ」
「お前、このまま全国に行ってプロになるつもりかよ? 中学生から本格的に始めたお前が、小さい頃からプロ目指して頑張っていた子を追い抜いて、楽しいか? 勉強もだ。このままいけば、偏差値の高い進学校を目指せるだろうな。で、そのまま東大合格か? お前の力じゃないんだぞ。少しはおさえろよ。全科目満点はまずいだろ」
「まさか、ああなるとは思わなかったのよ。だって、今まではそうはならなかったのよ?」
「だから、あの胡散臭い探偵の仕業でそう変化してしまったんだよ」
「でも、なんだか楽しいわよ。人生が明るくなった気分」
「俺、知らないからな」
「分かってるわよ。でも、それなら私の中の霊をどうにかしてよ」
「今は無理だ。父さんが方法を探っている。他の知り合いに連絡とってるんだ。だから、その間待ってろ」



◇◆◇◆◇



 期末が終わると残りの授業もほとんどなく、学校はそのまま夏休みへと突入した。
 夏休みと言えば海だが、私はあまり海に行きたいという子ではない。どちらかというと、外で遊ぶというより涼しい場所にいたいかな。それに、この町ではまだ友達は少ない。三つ子は試合だし、私も試合がある。
 というより、中学生の夏休みは皆部活じゃないのか。まぁ、それを言ったら私もだけど。
 部活のない日は普通に夏休みの宿題をすることにした。
 夏の試合だけど、太郎に言われた通り従うことにした。とは言っても、私に宿ってしまったとされる力をオフすることはできない。スイッチがあるわけではないのだ。仕方なく、わざと負けることにした。本当なら、中学校最後の試合なのだから、自分の力でいけるところまでいきたかったのだが、今の私では自分の力とは言い切れない。
 確かに、勉強ができるようになったのは嬉しいが、これは誤算だった。いや、元々狙ってたわけじゃないか。
 夏休み中、あの探偵さん達がまた私のとこに訪ねにくるのか疑問だったが、夏休み中、それは一度としてなかった。例の約束があるのだから、それを果たしてくれるかと期待していたのだが、太郎が言っていた通りあの探偵は素人で、あの人達は私の約束を果たさないまま逃げ出したのだろうか。
 結局、太郎のお父さんも各知り合いに連絡したようだが、私のようなものはやはり、その土地に縛られている何かを解決するしかないとのことらしい。しかし、今の私は夢遊病はおさまったものの、例の夢を見ることはなくなっていた。
 ただ、全く手掛かりがないわけではない。大戦と、例の男の人だ。この町では大きな空襲を受けていたという。夏休みで図書館を利用し、それらの資料を読んではみた。その時の貴重な写真があり、空襲の被害の大きさが分かる。だが、それは初めて見た光景ではなかった。夢で見た光景に凄く似ていた。
 あと男の人だが、手掛かりがないわけではない。というのも、名札を付けていたから、名前が分かっていた。勝俣修。この名前から何か得られないだろうか。
 あの探偵事務所で、その人について調べてもらうことは可能だろうか。
 だが、やってくれるだろうか。私はお金がないから、依頼料をとられるなら無理だし、その依頼料を前回の協力のかわりにタダでやってもらえないか交渉も考えなくもないが、そもそも太郎さんのお父さんから二度とその探偵に近づいたりしてはいけないと言われている。
 私はそのお父さんに救われた為に恩があり、恩を仇で返す真似はしたくないし、両親にこれ以上心配をさせたくなかった。
 このことはむしろ、先に太郎に相談すべきことか。



 こうして結局、彼氏もいない私は、中学校最後の夏をつまらないまま終わることになる。
 スイカ割りも花火も夏祭りも海も、私の思い出にはない。
 むしろ、2学期が楽しみなくらいだ。勉強ができると、学校も楽しくなるんだな。今まで自分は普通過ぎて、個性もないつまらない女子中学生から一変した、この能力を太郎には注意されたものの、使わない手はない。せめて、転校してから不幸な私にもこれぐらいの幸せは掴んでいい筈だ。
 神は私に最後に救いの手を差し伸べてくださったのだ。神は平等に幸運も不幸も与えるのだろう。そう考えることにした。



◇◆◇◆◇



 佳代子は調子に乗りすぎている。そう思うのは同じ教室の太郎だった。
 父が言うには、キューピットの無数の手は今までなら、男女の手を繋ぎ合わせる為のもの。それが、佳代子に取り込まれたことにより、その手は佳代子の為だけに使われてしまっている。勉強という各科目をキューピットのだった腕をフル活用しているようなものだ。結果、佳代子は苦労せず、キューピットの掌には各科目の暗記済みの記憶が集まっていく。
 これは決して嫉妬とかではない。正しいかそうでないかという意味だ。それを彼女はあまり本気にしていない。
 だが、父が言うには彼女に備わってしまった能力事態をコントロールしてオフにできるものではないと。つまりだ、佳代子が勉強したら勉強した分だけ記憶されてしまう。運動も動けばそこにプラスが自動的についてしまう。そういうことらしい。
 問題はそれで佳代子が図に乗らなければいいのだが。
 だが、1学期の期末であいつは全科目満点でさっそく目立ったというやらかしがある。だから、信用できないんだよ。
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