たとえば君が

遠之森きゃお

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Scene1 突然の出逢い

Cut6

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「はい、ミルクティー……で、良かった?」

「……ああ、好きだよ」

 一瞬その言葉にドキリとした朔夜の手からマグカップを受け取ると、智哉は両手で包み込むようにして飲み始めた。

「美味い……温まる、サンキュ」

「そう、良かった」
 
 素直に言う智哉に思わず笑顔になりかけたが、良く考えるとまだ昨日の件の謝罪さえされていない事に気付く。それに昨日に続き今朝もまたパジャマ姿を見せてしまっている。
 朔夜は今更着替える事も出来ず智哉の様子をチラチラと窺いながら何度も座りなおしていた。

 智哉の方はそんな朔夜を見て相当怒っているのだろうと勘違いし、勝手に緊張感を高めている。

 黙り込んだ二人の間には、ミルクティーを啜る音と時計の音だけが響いていた。

「あの……昨日の事なんだけど……、ごめん」

 先に沈黙を破ったのは智哉だった。朔夜が見ると真っ赤な顔をしている。

「……わかった。いいわよ、もう」

 実際真っ直ぐに目を見られると恥ずかしくなる。朔夜は照れ隠しにそこらのクッションや小物を移動し始めた。

「……俺、あの時どうかしてたんだ。あんたが来る前に喉が渇きすぎてビールなんか飲んだもんだから、なんかおかしくなってて」

「ビール? ビールなんてどこから?」

「空港で、知らないおじさんが貰いものだけど重いからってビールやらジュースやらくれて……そのまま鞄にしまってあって」

「……待って、じゃあ、昨日のは酔っていたせいだって言うの?」

「……多分……」

 朔夜は、全身の力が一気に抜けていくのを感じた。
 
「本当に、悪かったよ。あんな事するつもりじゃなかったんだ」

 赤い顔で毛布にくるまり智哉はもう一度呟く。

「もう、いいってば……飲酒なんて誉められた事じゃないけど。さ、温まったならそろそろ下に行きましょう? ママが朝ごはん作ってたから」

「ああ、いや……本当に怒ってないのか?」

 今度は上目遣いで見てくる智哉に、朔夜はまた頬が熱くなるのを感じた。

 その顔を見て、智哉はまた誤解したらしい。立ち上がり朔夜に近付くと、彼は頭を勢いよく下げながら再び謝罪した。

「本当にゴメン! 酔っぱらいとキスなんて……嫌だったよな? っつうか……免疫無いとは言ってたけどまさか初めて、なんて事は」

 その言葉を聞いて朔夜の表情が硬くなる。
 酔っぱらいと、までは合っている。免疫がないというのも自分で言った事だ。しかし、それがキスに関しての話となるとまた事情が変わってくる。

「ちょっと……キス⁉ が、初めてって……ちっ、違うわよ!」

「そっか、良かった! 流石にファーストキスがあんなのじゃ嫌だよな」

「ファ、そ、そうじゃなくて違う、してない! 私達キスなんてしてないから!」

 慌てふためく朔夜を余所に、智哉はわけがわからないと言った顔だ。

「ここっ! 智哉君の唇触れたのはここだから!」

 昨日の箇所を指差し智哉に見せる。彼は目を丸くし、少ししてから安堵の溜め息を洩らした。

「なんだそっか、でもどうせ許してもらえるならちゃんとしておけば良かっ……いってえ!」

 智哉の言おうとした事を言葉の途中で理解した朔夜は傍にあったクッションを思いきり投げつけた。 


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