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その後10
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2、3日だけ送り迎えをしてもらったが、無事仕事が私の手を離れたので早めの年末年始休みに入った。竜一さんは忘年会に新年会、予定の全てを断り、私に付き添ってくれていた。もう大丈夫なのに、子ガモのように後ろをついて回る。せっかくなので、数十……十数年ぶりにおせち料理をたっぷり作ることにし、大量の買い出しにでた。
黒豆、長老喜、八つ頭に昆布巻き、田作。調理器具と手順を思い浮かべる。どれから手をつけようかと私が豆をざらっと水に放つと、ハッと何かに気づいた竜一さんが外出した。しばらくして戻ってきた。
「手作りのおせちなんて、何十年振りかな。せっかくだからお重買ってきたよ。」
得意そうにお重を見せた。残念ながら手作りにすると、お重にちょうどよく収まる量で作れない。一の重がメインで入りきらない。二の重はいつのまにかカゴに入れられていた焼きえびだけでスカスカ。三の重の紅白なますはなぜか元旦に作り、与の重は筑前煮と八つ頭を、それぞれ大鍋いっぱいに作るのが私の実家の習慣だった。
「竜一さん、…残念ですが、明らかに保存容器の容量足りません」
再び竜一さんが買い物に出て居なくなると、私の頭はシンと冷えた。
彼とイルミネーションを見に行ったのはいつだった? 怒涛の様に過ぎ去ったと思う。私が一粒の涙もこぼれなかったのは、端から望んでいなかったから? 感情が出来事に追いついてないから?
「決った分量で決まった手順を踏めば、美味しい料理は出来上がる」
料理は、それで出来る。でも、しかるべき手順、十分な材料が揃っても当然出てしかるべきの結果は出ない、不条理な世の常。望むものほど手に入らない。
そうか、私は望んでいたのか。テスターの結果を見た瞬間嬉しいとも、困ったとも思わず、感慨深い事もなく、衝撃以外の何もなかった。いや、でも、事あるごとにその後のことを考え、望んだ時望まなかった時、天秤にかけ、自分で選んだのだ。悩み天秤にかけては、毎回同じ結論に達する。後戻りできなくなるところまで何度も悩んだ。どちらを選んでも、選ばなかった方に未練が残る。
出汁と醤油の香る湯気の漂うダイニングキッチンの椅子に一人座り、キッチンタイマーをボーッと眺めた。
泣いてくれたら、慰められるのに。
帰国した日の涙は安堵の涙だった。翌日夕方近く急変し、救急車で病院に運び込まれてから一滴の涙もこぼしていない翠。感情が高ぶるとすぐ涙目になる彼女にしては珍しい、いや、感情が追いついていないのか。状況は理解してる、意外と冷静に医師とのやりとりもしていた。だからこそ、見ているこっちは余計に辛い。
考えたり思い出したりする隙を作らないようにしているのか、彼女はおせち料理を大量に黙々と作っている。体に負担をかけないよう、キッチンの作業チェアを買った。重たいものは持たせたくなくて、八つ頭の下茹での茹でこぼす作業くらいは俺にもできると、重たい鍋を取り上げた。
彼女が料理を作り、俺は大掃除をした。
「んー、焼き物はえびしかないし、三段重にまとめましょうか。」
「まとめなかったら、何段の予定だったの?」
「正式は四段ですよ。うちの実家は家族が多かったし、それくらいがちょうどよかったんです。」
「正月中ずっと同じの食べてて、飽きない?」
「いいえ? ちょっとずつ色んなものが食べられるから、家族みんな好きでしたね。」
「そうなの?」
彼女は家族が多かったのか。また一つ、彼女のことを知る。大家族なら、一人当たりに割り当てられる量が少なくなって、飽きるほどは食べられないのか。
「多分飽きる、というのは既製品の料理ばかりだからじゃないでしょうか?」
「昔は家で作っていたメニューも買えるようになって、今じゃ、すでにお重に盛り付けられた状態のを買う人も少なくないよなあ。」
「そうそう。毎日ご飯と味噌汁とお新香、自炊の料理は飽きないのと同じ?」
そう言われてみれば、おせち料理が売られるようになったのと、おせちに飽きたら●●! というキャッチコピーのジャンクフードのCMが流れるようになったり、元旦や2日からスーパーや飲食店が営業するようになったのは同じ頃だ。
料理の粗熱が取れ、お重に詰め完成したのは大晦日の夕飯前だった。除夜の鐘を聞きながら年越しそばを食べるのではなく、夕飯に蕎麦を食べた。昆布巻きの余りで作ったニシンそばだった。味見を兼ねて、きんぴらと豆の煮物をおかずにいただいた。
既製品とは違い、しょっぱすぎず甘すぎず、味が濃くないので、確かにこれなら飽きずに食べられそうだ。優しい味わいだった。
「翠、余ったの、お裾分けにもらってもいい?」
「ん~…密封容器も余ってますよー…」
さすがにあれだけ大量の料理を作って、疲れたのか、誰にとかどこにとか質問もなく、風呂の沸く間にクッションを抱えソファでうとうとしだす。実家に電話してみれば、蒲鉾と伊達巻を買ったくらいで特におせちの準備はしていないとのことだったので、豆に昆布巻き、煮物にきんぴらごぼうを密封容器に詰め、実家に持って行った。
行って玄関先で渡し戻ってきただけなのに、渋滞に巻き込まれ数時間かかった。部屋に戻れば、翠はブランケットにくるまって眠っていた。除夜の鐘は一緒に聴けそうにない。このぶんじゃ姫初めも当分先かな、と気がついた。でも彼女をベッドに運ぼうと抱えると、ほんのり柑橘系の香りがしていつもと違う香りにムラムラすることもなく、気分が晴れる。それを狙ったのか、たまたまなのか、お風呂はすっきりとした香りのみかん湯だった。
十年後、数十年後、子供や孫がいなくてもいいの? 不安そうに俺の目を覗き込んだ彼女の表情が思い浮かんだ。
添い寝をして、彼女をそっと抱き寄せ、考えてみる。やっぱり、翠が隣にいてくれればそれでいい。滞在先のホテルで、寝ぼけて抱き寄せようと手が空を切った時の虚しさ。自分の体の幅しか暖まっていないベッドの冷たさ。添い寝すらできず、抱きしめることもできずに過ごした病院の一夜。
彼女の髪を撫でる。おでこにキスを落とし、頬に触れる。温かく柔らかな体を抱きしめ、やっぱり、彼女がいてくれる、それ以上に欲しいもの、望むものはない。手を伸ばせば届き、触れられる。触れてあたたく柔らかな存在を確かめられる幸せ。
俺も疲れていたのか、気がつくと眠っていた。
聞きなれないアラーム音に起こされる。
翠がもぞもぞしだす。
薄眼を開けて、時間を確認すれば、休日に起きるにはまだ早い時間。
「翠、おはよ。まだ早いよ。寝てよう?」
「…ん」
でも、布団の中で片腕ずつ伸びをしたり起きる準備をやめない。
足を絡め片腕でホールドし、寝かしつけようとしたが、腕枕をしている頭をイヤイヤと振ってゴリゴリされる。地味に痛い。
「ちょ、翠、それ勘弁……」
「んー、竜一さん起きましょう。初日の出見ましょう?」
スヌーズ機能で、またアラームが鳴る。
「もしかして、このアラーム、そのため?」
「そうです。せっかく屋上上がれるんですから、見ましょうよ。」
「…ん~、何時くらい日が出るの?」
「6時50分くらいです。」
妙にやる気を出している翠を逃し、ベッドサイドのリモコンを取り部屋の暖房を入れる。
「わかったから、ちゃんとあったかくして。毛糸の帽子と手袋、完全防備するんだよ。」
「はーい。」
さむーいと言いながら、ベッドを抜け出る翠を横目に、洗面所に行き顔を洗い、髭を剃る。彼女は服を脱がされるのも裸を見られるのもあまり恥ずかしがらないが、下着をつける、服を着て行く途中を見られるのはひどく恥ずかしがる。
だって、恥ずかしい。竜一さんが洗面所に向かったのを見て、バッと寝間着を脱ぎ、ブラをつける。ぺこりとお辞儀をした状態で、ぶら下がってる乳房をカップに収める。ホックを留め、起き上がって姿見を見ながらぐいっと肉を掴んでカップに収め直しアンダーの位置と肩紐を直す。正しいブラの付け方だ。歳も歳で体型の崩れを最小限に止めるために、おざなりな下着のつけ方はしない。
保湿効果のあるタンクトップに、発熱素材のアンダーシャツとタイツ。長袖Tシャツに、あったかコーデュロイのロングスカートにもこもこ靴下とセーター。着替え終わるころ竜一さんが着替えに戻って来たので今度は私が洗面所に向かう。
化粧水に、UVカット効果のある乳液に、こっくりした保湿クリーム。軽くフェイスパウダーをはたき、眉を薄く引く。防乾と防寒。ニット帽と手袋、コートを身につけると、キッチンからコーヒーの香りが漂う。
「準備万端?」
「はい。」
「じゃ、行こうか。」
竜一さんの手には、ブランケットと魔法瓶があった。
階段への扉を開け、屋上へ上がる。ピリピリと頬に凍りつきそうな冷たい空気が触れる。外も空ももう明るいのに、まだ日は出てない。ウッドデッキの東側へ、折りたたみ椅子を向け二人で座る。
キュッと魔法瓶の蓋を開け、付属のカップにコポコポとコーヒーを注ぐ。冷たい空気の中にホワリとコーヒーの香りが広がる。
温かいコーヒーを楽しみながら、東の空を眺める。カップの湯気をふうっと払うと、チカッと一際明るい点が見え、一筋の光になる。日の出だ。
ゆっくり竜一さんに振り向くと、彼も私に振り向いた。
「明けましておめでとうございます。」
「今年も、これからも、宜しくお願いします。」
黒豆、長老喜、八つ頭に昆布巻き、田作。調理器具と手順を思い浮かべる。どれから手をつけようかと私が豆をざらっと水に放つと、ハッと何かに気づいた竜一さんが外出した。しばらくして戻ってきた。
「手作りのおせちなんて、何十年振りかな。せっかくだからお重買ってきたよ。」
得意そうにお重を見せた。残念ながら手作りにすると、お重にちょうどよく収まる量で作れない。一の重がメインで入りきらない。二の重はいつのまにかカゴに入れられていた焼きえびだけでスカスカ。三の重の紅白なますはなぜか元旦に作り、与の重は筑前煮と八つ頭を、それぞれ大鍋いっぱいに作るのが私の実家の習慣だった。
「竜一さん、…残念ですが、明らかに保存容器の容量足りません」
再び竜一さんが買い物に出て居なくなると、私の頭はシンと冷えた。
彼とイルミネーションを見に行ったのはいつだった? 怒涛の様に過ぎ去ったと思う。私が一粒の涙もこぼれなかったのは、端から望んでいなかったから? 感情が出来事に追いついてないから?
「決った分量で決まった手順を踏めば、美味しい料理は出来上がる」
料理は、それで出来る。でも、しかるべき手順、十分な材料が揃っても当然出てしかるべきの結果は出ない、不条理な世の常。望むものほど手に入らない。
そうか、私は望んでいたのか。テスターの結果を見た瞬間嬉しいとも、困ったとも思わず、感慨深い事もなく、衝撃以外の何もなかった。いや、でも、事あるごとにその後のことを考え、望んだ時望まなかった時、天秤にかけ、自分で選んだのだ。悩み天秤にかけては、毎回同じ結論に達する。後戻りできなくなるところまで何度も悩んだ。どちらを選んでも、選ばなかった方に未練が残る。
出汁と醤油の香る湯気の漂うダイニングキッチンの椅子に一人座り、キッチンタイマーをボーッと眺めた。
泣いてくれたら、慰められるのに。
帰国した日の涙は安堵の涙だった。翌日夕方近く急変し、救急車で病院に運び込まれてから一滴の涙もこぼしていない翠。感情が高ぶるとすぐ涙目になる彼女にしては珍しい、いや、感情が追いついていないのか。状況は理解してる、意外と冷静に医師とのやりとりもしていた。だからこそ、見ているこっちは余計に辛い。
考えたり思い出したりする隙を作らないようにしているのか、彼女はおせち料理を大量に黙々と作っている。体に負担をかけないよう、キッチンの作業チェアを買った。重たいものは持たせたくなくて、八つ頭の下茹での茹でこぼす作業くらいは俺にもできると、重たい鍋を取り上げた。
彼女が料理を作り、俺は大掃除をした。
「んー、焼き物はえびしかないし、三段重にまとめましょうか。」
「まとめなかったら、何段の予定だったの?」
「正式は四段ですよ。うちの実家は家族が多かったし、それくらいがちょうどよかったんです。」
「正月中ずっと同じの食べてて、飽きない?」
「いいえ? ちょっとずつ色んなものが食べられるから、家族みんな好きでしたね。」
「そうなの?」
彼女は家族が多かったのか。また一つ、彼女のことを知る。大家族なら、一人当たりに割り当てられる量が少なくなって、飽きるほどは食べられないのか。
「多分飽きる、というのは既製品の料理ばかりだからじゃないでしょうか?」
「昔は家で作っていたメニューも買えるようになって、今じゃ、すでにお重に盛り付けられた状態のを買う人も少なくないよなあ。」
「そうそう。毎日ご飯と味噌汁とお新香、自炊の料理は飽きないのと同じ?」
そう言われてみれば、おせち料理が売られるようになったのと、おせちに飽きたら●●! というキャッチコピーのジャンクフードのCMが流れるようになったり、元旦や2日からスーパーや飲食店が営業するようになったのは同じ頃だ。
料理の粗熱が取れ、お重に詰め完成したのは大晦日の夕飯前だった。除夜の鐘を聞きながら年越しそばを食べるのではなく、夕飯に蕎麦を食べた。昆布巻きの余りで作ったニシンそばだった。味見を兼ねて、きんぴらと豆の煮物をおかずにいただいた。
既製品とは違い、しょっぱすぎず甘すぎず、味が濃くないので、確かにこれなら飽きずに食べられそうだ。優しい味わいだった。
「翠、余ったの、お裾分けにもらってもいい?」
「ん~…密封容器も余ってますよー…」
さすがにあれだけ大量の料理を作って、疲れたのか、誰にとかどこにとか質問もなく、風呂の沸く間にクッションを抱えソファでうとうとしだす。実家に電話してみれば、蒲鉾と伊達巻を買ったくらいで特におせちの準備はしていないとのことだったので、豆に昆布巻き、煮物にきんぴらごぼうを密封容器に詰め、実家に持って行った。
行って玄関先で渡し戻ってきただけなのに、渋滞に巻き込まれ数時間かかった。部屋に戻れば、翠はブランケットにくるまって眠っていた。除夜の鐘は一緒に聴けそうにない。このぶんじゃ姫初めも当分先かな、と気がついた。でも彼女をベッドに運ぼうと抱えると、ほんのり柑橘系の香りがしていつもと違う香りにムラムラすることもなく、気分が晴れる。それを狙ったのか、たまたまなのか、お風呂はすっきりとした香りのみかん湯だった。
十年後、数十年後、子供や孫がいなくてもいいの? 不安そうに俺の目を覗き込んだ彼女の表情が思い浮かんだ。
添い寝をして、彼女をそっと抱き寄せ、考えてみる。やっぱり、翠が隣にいてくれればそれでいい。滞在先のホテルで、寝ぼけて抱き寄せようと手が空を切った時の虚しさ。自分の体の幅しか暖まっていないベッドの冷たさ。添い寝すらできず、抱きしめることもできずに過ごした病院の一夜。
彼女の髪を撫でる。おでこにキスを落とし、頬に触れる。温かく柔らかな体を抱きしめ、やっぱり、彼女がいてくれる、それ以上に欲しいもの、望むものはない。手を伸ばせば届き、触れられる。触れてあたたく柔らかな存在を確かめられる幸せ。
俺も疲れていたのか、気がつくと眠っていた。
聞きなれないアラーム音に起こされる。
翠がもぞもぞしだす。
薄眼を開けて、時間を確認すれば、休日に起きるにはまだ早い時間。
「翠、おはよ。まだ早いよ。寝てよう?」
「…ん」
でも、布団の中で片腕ずつ伸びをしたり起きる準備をやめない。
足を絡め片腕でホールドし、寝かしつけようとしたが、腕枕をしている頭をイヤイヤと振ってゴリゴリされる。地味に痛い。
「ちょ、翠、それ勘弁……」
「んー、竜一さん起きましょう。初日の出見ましょう?」
スヌーズ機能で、またアラームが鳴る。
「もしかして、このアラーム、そのため?」
「そうです。せっかく屋上上がれるんですから、見ましょうよ。」
「…ん~、何時くらい日が出るの?」
「6時50分くらいです。」
妙にやる気を出している翠を逃し、ベッドサイドのリモコンを取り部屋の暖房を入れる。
「わかったから、ちゃんとあったかくして。毛糸の帽子と手袋、完全防備するんだよ。」
「はーい。」
さむーいと言いながら、ベッドを抜け出る翠を横目に、洗面所に行き顔を洗い、髭を剃る。彼女は服を脱がされるのも裸を見られるのもあまり恥ずかしがらないが、下着をつける、服を着て行く途中を見られるのはひどく恥ずかしがる。
だって、恥ずかしい。竜一さんが洗面所に向かったのを見て、バッと寝間着を脱ぎ、ブラをつける。ぺこりとお辞儀をした状態で、ぶら下がってる乳房をカップに収める。ホックを留め、起き上がって姿見を見ながらぐいっと肉を掴んでカップに収め直しアンダーの位置と肩紐を直す。正しいブラの付け方だ。歳も歳で体型の崩れを最小限に止めるために、おざなりな下着のつけ方はしない。
保湿効果のあるタンクトップに、発熱素材のアンダーシャツとタイツ。長袖Tシャツに、あったかコーデュロイのロングスカートにもこもこ靴下とセーター。着替え終わるころ竜一さんが着替えに戻って来たので今度は私が洗面所に向かう。
化粧水に、UVカット効果のある乳液に、こっくりした保湿クリーム。軽くフェイスパウダーをはたき、眉を薄く引く。防乾と防寒。ニット帽と手袋、コートを身につけると、キッチンからコーヒーの香りが漂う。
「準備万端?」
「はい。」
「じゃ、行こうか。」
竜一さんの手には、ブランケットと魔法瓶があった。
階段への扉を開け、屋上へ上がる。ピリピリと頬に凍りつきそうな冷たい空気が触れる。外も空ももう明るいのに、まだ日は出てない。ウッドデッキの東側へ、折りたたみ椅子を向け二人で座る。
キュッと魔法瓶の蓋を開け、付属のカップにコポコポとコーヒーを注ぐ。冷たい空気の中にホワリとコーヒーの香りが広がる。
温かいコーヒーを楽しみながら、東の空を眺める。カップの湯気をふうっと払うと、チカッと一際明るい点が見え、一筋の光になる。日の出だ。
ゆっくり竜一さんに振り向くと、彼も私に振り向いた。
「明けましておめでとうございます。」
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