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19.閨の花
しおりを挟むドクドクと全身に熱が駆け巡るのを感じる。
綾の国の隣国には、房中術というものがあるらしい。男女で肌を重ね気を高め交わし、巡らせることで不老長寿を得るというものだ。徒らに気を漏らし淫靡に耽るのではなく、互いを思いやる術。
今巡っているのは熱なのか、なんなのか。
「蒼月、俺はそんな我慢強い方だとは思わない。」
「ん」
抱き潰さないよう、必死に堪え、吐いた息は自分でびっくりするほど熱い。蒼月が首筋に唇を押し付け、頬ずりする。蒼月が顔を起こし、そっと目を覗き込んでくる。頬から顎に細い指が滑る。目を細め、とろりと微笑む表情はたまらなく甘く色っぽい。頬をすり合わせ、唇が押し付けられるのを興奮ともどかしさと嬉しさの綯交ぜになって受け止める。だんだんと口に近づく蒼月の唇が触れ合った時、理性とか箍とか呼ばれる何かが崩れた。
蒼月の腰を支え、ぐるりと反転させ、蒼月が俺にしていたことをやり返す。目を丸く見開いたあと、そっと目を瞑る。唇から頬、首筋。口付けては舌を這わす。手を握り、指を絡め、もう片手で頬を撫でる。唇に己のを合わせ、押し付ける。吸っては舐め、喰みながら舌先でくすぐる。緊張し硬くなっていたのが解けてきたところで少しずつ、口内に侵入する。これからすることを思わせるよう、深く口付け舌を絡める。いつの間にか、蒼月の体はくたりと力が抜けている。
全身を撫で、口づけ、寝間着の前をはだけ、また口づけを交わす。蒼月が俺の肩から寝間着を落とし熱い肌を重ねる。ゆっくり掌を下に滑らせていく。内股からそっと指先が触れれば、一瞬ピクッとするが抵抗もなく愛撫に身を委ねる。蜜口の周りまでトロリとした蜜が広がり、ぬめぬめと光っている。たっぷり蜜を絡めとり、周辺を優しく撫でる。また溢れる蜜を絡めとり、その上の薄い茂みに隠れる核に触れる。下から上に優しく撫でているうちに、蜜はさらに溢れてくる。もうぷっくりと膨らんでいるそこを、優しく剥ぎ蜜まみれの指で下からゾリっとなぞりあげた。
「はぁっう……はっ、はっ」
ビクビクと体を震わせている。電流が流れるような快感に見舞われているはずだ。体の力が抜け寝台に崩れ落ちるのを見届け、またなぞる。ツプリと中指を埋め込むが、ひくっと軽く反応しただけで、核への強烈な快感に隠され抵抗はされない。核をなぞりあげるたび、キュウキュウと吸い付き締め付け、体をガクガク震わせる。ぐったりと力が入らなくなっても執拗に繰り返す。
「旦那様、……もうっ……」
蒼月がぐっしょりと額に汗をかき、髪を張り付かせ真っ赤な顔で、懇願してくる。涙で潤み、眉を秘そませはっはっと荒い呼吸に胸を上下させ、たまらなく色っぽい。核から親指を離し、挿れたままの中指で入り口をぐるりとかき回し襞を撫でる。
「ん……はっ…ぁ……はぁっ」
荒い呼吸を漏らしながら、切なげな表情で左を向く。軽く握った手の、指の背に唇を押し当て、またたまらずに、枕の端を握りしめ、右を向く。枕の端を握っていた右手を唇に持っていき、胸の前で握り込み、左を向いて指の背を唇に押し当てる。せわしなく、顔を左右に向け唇に触れたりする。感じているのだろうか。色っぽく、たまらなく可愛い。
「もう、旦那様……蒼月は…あ……はっ……ああっ」
どくどくと蜜が溢れ、尻の下の寝間着をぐっしょりと濡らしている。だいぶ蕩けている。
指をもう少し奥まで挿れ、探る。ヒダヒダの奥の腹側の一帯を丁寧になぞる。明らかに違う感触の、ざらりとしたような吸い付くような箇所を見つけ、丁寧に撫でる。蒼月は特に抵抗は見せないが、核をなぞった時のような反応も見せない。ここで反応を見せないのは経験のない証拠だ。これから教えていってやればいい。
押し込んでみたり、軽く叩いてみたりコリコリと指の腹で引っ掻いてみたり、痛がらないか反応を確かめつつ蒼月に口付ける。唇を舌でつつけば顎が緩み舌の侵入を許す。舌先から奥へなめては絡ませて、引き抜く。指と同じ動きを何度か繰り返しているうち、ねっとりと舌を絡ませた瞬間、蒼月がちゅうっと舌に吸い付いた。指もキュッと締め付けられる。
興奮で頭がクラクラして、はちきれそうなその先端はこらえきれず、先走りで滑っている。蒼月の蜜と混ぜ合わせ、全体にまぶし付ける。ぬらぬらと光る自身をヒクヒク震えて待ちわびている蜜口にあてがう。
「蒼月、……力を抜いて」
「はい、」
「すまない。蒼月には、苦しいこと辛いこと痛いことたくさんあってきただろうから、もうそういう目には会わせたくないんだけど」
「旦那様……蒼月は奴隷だった時に、痛いの慣れてます」
「一度だけ、少しだけ、許してくれるか? それを過ぎれば快感と、それを知る悦びを教えてやる。」
「旦那様、蒼月に、たくさん教えてください。」
ふわりと微笑む蒼月に、ギリギリの理性を保ちながら乱暴にならないよう体を合わせた。よく蕩かせたおかげか先端はにゅるりと潜り込めた。そこからキツイ。
「……ん……ふ」
忠告通り、息を吐いて力を抜こうとしているのだろうが、短く浅い呼吸で息をゆっくりは吐けないし、力も抜けてない。辛そうなのはわかっていたが抑えきれず、根元まで押し込んだ。
「く、……ふっ……やっぱり狭いな」
緊張から中まで硬く、食いちぎられそうなほど、きつく締め付けられる。
「旦那様、」
「蒼月、力を抜いて。大丈夫だ、俺を受け入れてくれ。」
体を倒し、ビッタリと胸を合わせ、手を握り、指を絡めてやる。キュッと蒼月が握り込んでくる。鼻先をくっつけ、唇を触れ合わせながら声をかける。
「蒼月の中、旦那様でいっぱいで、嬉しい。」
「辛くないか?」
「……」
ふるふると静かに首を横に振る。とろけそうな甘い笑みを浮かべ、口を開く。
「旦那様、太くて硬くて、大きい。」
「それ褒め言葉だ……」
「はい。旦那様のすごい。」
わかって言ってるのか? もう爆発寸前だと思っていたものが、さらにギチギチと硬さと大きさを増す。
「蒼月、それ以上煽るな。」
「旦那様、辛い?」
「いや、気持ちいい。気持ちよすぎて乱暴にしないように必死なんだ。」
よく自分の脳みそが吹っ飛ばずにいられると、感心する。
奥まで先端を押し付け根元で入口を押し広げるように、ぐっと腰を押し付けたり、緩めたり、気がつけばかすかに腰が揺れている。蒼月と見つめ合い、ふと唇を触れ合わせ、揺れに身を任す。蒼月も少しずつ体の力が抜けてくる。
「気持ち良いのか? 蒼月」
「ん……わからない。」
「じゃ、痛いか?」
「……」
また、ふるふると首を横に振る。
「こうしてるの、嫌か?」
「……嫌じゃない。」
「なら、蒼月の体、どう感じてる?」
「旦那様の熱くて大きくて、じんじんしてる。」
「そうか、抵抗しないで、頑張らないでいい。もっと、俺のことを感じてくれ。」
はっと目を見開いたかと思うと、蒼月の体から力が抜け、でも中は俺に吸い付くように絡みついてきた。結合箇所からはとめどなく蜜が溢れ、グチュグチュと音がなりだす。もう大丈夫そうだと、体を起こし、蒼月を貫く自身を見る。ゆっくり腰を引き、ゆっくり腰を押し進める。自分と蒼月の触れ合う場所を陶然と眺める。ゆっくりゆっくりそれを繰り返すうちこらえきれなくなってくる。
「旦那様」
「蒼月」
快感を堪えることが必死すぎて、蒼月を忘れそうになっていた。蒼月がわずかな不安を表情にのぞかせる。
「旦那様、我慢しないで。蒼月、旦那様のもの。」
「そ……」
「旦那様のしたいように、蒼月にして良い。」
「蒼月!」
気がついたら蒼月の細い腰を押さえつけ激しく肌を打ち合わせていた。蒼月が俺に貫かれ揺すぶられているのを見て、カーッとまた血がのぼる。蒼月もせわしなく、顔を右に向けたり左に向けたり、指の背で唇を抑えたり、感じているのか。しっとりと全身汗をかき呼吸を荒げている。腰を叩きつける拍子に結合部から空気が押し込まれ抜ける音が響く。
ッバ
グプッ…グバッ、グボッ
蒼月が一瞬困惑の表情を浮かべるが、それは蒼月が感じてくれている証拠で、すぐに快感に流され熱い呼吸を漏らす。嬉しくてさらに腰を激しく振った。
激しくすれば、最終段階も早く近づく。
「蒼月……」
「旦那様……んっ……ぁぁああっ!」
蒼月の声を聞いた途端、もう一段階律動の速度が上がる。
激しさに耐えきれず声をあげた蒼月の中に放った。
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