英雄たちはもう一度。

鼓月幸斗

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英雄は再開する

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 オリリアと名乗るエルフの少女についていくエクトとザラ、そして霊体のカナカ。

 森を進んでいくオリリアにエクトは違和感を感じていた。

「あの……なんだか一周してないか?」

 道中、一見目印の無い場所で突然右に曲がる事が何度か会った。そのせいかエクトの目からはただ一周しているように感じていた。

「わたし達の村は入口がある、そこ以外からは入れない」

 そう言うと突然オリリアはエクト、ザラの手を繋ぎだした。

「ここからは、お守りがないとだめ」

「お守り……その胸についているペンダントか?」

 ザラが聞くとオリリアは頷き、二人を連れ真っすぐ森の中心へと向かって行った。

 そして、気づけば一対の門の前に三人は立っていた。

 オリリアは扉を叩くと程なくして一人のエルフが現れる。

『オリリア!駄目じゃないか村の外に出たら、君はまだ幼いんだから外に出るなら誰かと……』

 男のエルフはエルフ達特有の言語、エルフ後でオリリアに話しかけると背後に立つエクトとザラの存在に気づきオリリアを厳しい目で見た。

『オリリア、どうして人間をここへ招き入れた?』

『ちょっと耳貸して……―――――』

『何?―――――しかし……―――――わかった、そこの人間達」

 エルフの男は二人にわかる言葉で話しかけた。

「はい、何でしょう」

 ザラがエクトの前に立ち答えると男のエルフは二つの腕輪を取り出した。

「まさか使う事になるとはな……これはお前達を村に入れる許可証であると同時にお前達を縛る鎖でもある、我々に敵意を向けると麻痺の魔術が発動する、これを着けない限り村に入れない。いいな?」

「エクトさん、どうしますか?」

「僕達は争うために来たんじゃない、着けよう」

 そうして腕輪を受け取ると二人は着け、確認したエルフは門を重々しく開いてくれた。

「何の目的で来たかは知らないが……村長へ挨拶はしておけ、それとこの村の名前は知らないだろ」

「はい、そもそも私達人間はここに辿り着く事すら敵わなかったので……」

「覚えておけ、そこにある」

 そう言いながらエルフは上を指すと、門の上に看板がある事に気が付いた。

「エルフ語で「バータルア」と書かれている、ここはバータルア村。覚えたな?じゃあ入れ」

 ・
 ・
 ・

 村の景色は、エクトでも初めて見る様なものだった。

 何故ここに来るまでに気が付かなかったのかと思う程巨大な木を中心に、多くの建物が並び立っている。

 しかし見る限り多くは木組みで、都市の方で見る石材製は殆どなかった。

「こっち」

 オリリアは再び二人の手を取るとある一軒家に向かって歩き出す。途中、エクトとザラに気付いた村人たちは警戒するがオリリアに引っ張られている様子と腕輪、そして変なマスクを見ると気が抜けたように視線を外した。

 ふと、エクトはある事に気が付くとマスクを外す。

「エクトさん?」

「……やっぱり魔力が落ち着いている、ここだとマスクを外しても大丈夫そうだ」

 言われてザラもマスクを外す、そして確かに森を覆っていた魔力濃度が、少なくとも村で行動する程度は問題ないまでになっていた。

「結界の力でしょうか……」

「……わからないけど、しばらくピンクの猫にならなくていいのは助かるよ」

 そして着いた一軒家、他の建物と比べ随分と古く、柱の所々は朽ちてすらいた。

「ここがわたしの家」

「……随分と、その、年季が入っているな?」

「もらった家だから、入って」

「貰った家?……まあいいだろう。エクトさん、私が先に入っておきますのでぇっ!?」

 ザラがオリリアに続こうとした時、どういう訳かザラはボールの様に弾かれてしまった。

「い、一体何が……」

「ごめん、きみは入れないみたい」

「……あ、僕は入れる」

『どうやらあいつの家にも結界があるみたいだな……だが何故?』

 エクトはザラに外で待機するよう謝りつつ、中に入っていく。

 どうやらカナカも入れるようで、中に入るとエクトとカナカはその内装に驚いた。

『外は随分ボロいと思ってたが……なかなかどうして中は綺麗じゃないか』

「それで、オリリア、だっけ。どうして君は彼……カナカが見えるの?」

「それは―――――」

『それは儂を見れば自ずとわかるだろうさ』

 初めて聞いた声がした。

 若い声だが、不思議と老齢さを感じ取れる。

 そして酷く感覚的で……頼りないものだがエクトは確かにわかった。カナカと同じような

『お、お前は―――――』

『久しぶりだな、カナカよ。そして初めまして、人の子よ。儂はヴァルト・バータルア、嘗て魔王を封印した英雄の一人、謂わば

「―――――」

 そこに浮いていたのは一人の紫髪のエルフ。

 歴史には、五百年前四人の英雄が悪しき魔王と倒したとある。しかし、その後はどういう訳か英雄たちの本は余り無い。

 あるのも精々作家たちの憶測同人誌だけだ、しかしカナカと同じくその英雄が。

 死して尚世にとどまり、あまつさえ自分と会話をしていた。

『な、なんでヴァルトがいるんだ―――ああいや、生まれ故郷であるここならお前が居るのも理解はできるが……生きてる死んでるなら連絡ぐらいしろよ!?』

『ふ、その喧しさ。五百年経ってもなお変わらないようだな?カナカよ』

『お前は変わったな!なんだその儂様口調は!そのうざったい白ローブは相変わらずみたいだけどな!』

『五百年も経てばそれ相応の立ち振る舞いというものがあるものさ、お前は少年の心を忘れないようで結構』

「ま、まさかここで英雄に会えるなんて思いもしなかった……そうか、貴方がエルフの英雄ヴァルト……」

『そう堅苦しくなる必要は無い、人の子よ。推測するまでも無い、この無頼漢と出会ってからは毎日振り回されているのではないか?』

『あぁん!?エクト騙されるなよ!こいつは昔っから皮肉屋だからな!』

「おお……凄く英雄っぽい、というよりは魔術王っぽい……」

『む?おお、そういえば儂はそのようにも呼ばれていたな。しかしよくそちらの名を知っているな』

「えぇまぁ、カナカが現れる前から英雄譚は好きだったし……これでも歴史学者を名乗ってるので」

『成程、出で立ちからして旅慣れた者かと思ったが学者だったか』

「師匠、要件」

『おっとそうだ、儂はカナカと違って魔術師だ。死した身ではあるが抜け道はある、弟子であるオリリアを通して魔術を行使出来るのだよ』

『それで?俺達を呼んだ理由はなんだよ』

『これは偶然だが、探索の魔術をオリリアを起点に発していた時懐かしい魂を感知してね、丁度いいと思って再開も兼ねて頼みごとをしようと思ったのだよ』

「頼み事?」

『―――――ここ数ヶ月、不滅の森は不安定だ。魔物は理由不明の活性化が起き、この村では食べる為では無く殺すための狩りをしなければならなくなっている』

「今日もワイルドボアを狩った、五匹くらい」

『肉こそ食すが儂らエルフはどちらかと言えば採食寄りの種族だ、本来する必要のない狩りをするのは生態系にしても好ましくない』

『それで?俺達には原因を突き止めろって事か?』

『少し違うな、原因は既に突き止めている。この森には特殊な魔物がいてな、と呼んでいる鹿の魔物が居る』

「森の王……」

『正確に言えば森の王は魔獣だ、自らの許容量を超え魔物になって尚理性を失わずにいた個体――――それが森の王。奴は自らの生存のために魔物を統率し生態系を調整していた、言うなれば森の小さな神でもある』

「もしかして、その森の王が……」

『ああ、森の王は突如暴走、それに伴い魔物達も暴走を始め今や生態系は滅茶苦茶という訳だ』

『それなら森の王を倒せば済む話じゃねぇのか?』

『それが難しかった、仮にも奴は魔獣。儂ならともかくこの村のエルフだけでは奴には勝てない、それほどの強さを持っている。それに――――』

「皆やりたがらないの」

「……神様だから?」

「たぶん」

『オリリアはエルフとしては幼いが実力は高い、それでも一人で行かせるわけにはいかない……という所で現れたのがお前達だ、協力してくれるなら見返りを出そう』

『ほう?それなら丁度いい、ちょっと耳貸せヴァルト』

 カナカはヴァルトに耳打ちするとヴァルトは驚いた顔をした。

『何……?ここだけではないのか―――――成程それはありえるな―――――わかった』

『エクトと言ったな、一先ず協力してくれるか?』

「勿論、不滅の森の調査だけが僕の依頼だけど、原因を解決できるならそれに越した事は無い」

『助かる……だがその前に、オリリア』

「ん」

『エクトよ、一度儂の弟子と手合わせして貰おうか』
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