英雄たちはもう一度。

鼓月幸斗

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青年はエルフと出会った。

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 時刻は昼、エクトはザラと共に不滅の森の入り口に到着していた。

「ここが、不滅の森です。警備隊も滅多にこの内部には入らないので私も土地勘はないですね」

「慎重に行こう、目的はただの調査だから危険は少ない……筈」

 二人はマジックフィルター(仮)を装着すると中に入っていく。

 数分進むと太陽は木々に隠され、昼だというのに薄暗かった。

「エクトさん、聞きたいのですが歴史学者ってどうやって調査するのでしょうか」

「普通はその国の書物から調べたり現地に残る人や遺物から情報を得るんだけど、そもそも森の調査なんて植物学者やそう言った方向の研究者に任せるべきだ、なのに僕に頼むって事はどちらかと言うとフィールドワーク能力でも求められたのか……な―――――」

 エクトが視界に入ったのは一帯がことごとくへし折れた木々達だった。近づいていくと折れた木はどれも幹が一メートル近い太さをしていた。

「これは……まるで災害にでもあったみたいだけどどれも折れ方が同じだ、それにこの魔力に満ちた森で災害が起こるなんて考えにくいな……」

「人の手で切られたという事でしょうか」

「うーん……だとしたら不自然だな、周囲を見る限りこの木しか倒れていないしなにより無理矢理へし折ったみたいだ。それに折れた木は放置されているし加工目的で切った訳じゃ……」

 言い終える前に、エクトとザラは微かな振動を感じ取った。

「エクトさん、こちらへ!」

 ザラは剣を抜き、構えると振動に加え鳴き声が聞こえて来た。

「猪……?いやこれは……」

『エクト!あれは猪が魔物化した――――』

「ワイルドボアです!動かないでください!」

 突撃してきたワイルドボアは、その二メートル近い体格で紫がかった体毛を逆立てながら狂ったようにザラへ向かって来る。

「『剣の輝きよ!悪を退け!』」

 剣を縦に構えたザラは呪文を唱えると剣が眩く光り輝き、眼が眩んだワイルドボアは僅かに速度が落ちた。

「せああぁぁっ!!」

 一閃。

 すれ違う様に切り捨てられたワイルドボアは、その速度を急激に落としエクトに辿り着く前に倒れ伏した。

『やるな、あの一撃ならそこらの魔物じゃあいつには敵わないだろうよ』

「無事ですか?」

「大丈夫、ありがとう……ワイルドボアか、ここの木々が折れてたのはこいつが原因なのかな」

「ワイルドボアの鼻は固く、激昂すれば岩すら砕くと聞きます。ですがあそこまで興奮しているのは普通じゃないですね」

「そうだね、興奮している原因がわかれば……いや、案外すぐ見つかったかもだ」

 エクトはワイルドボアの体毛を切り取ると剥き出しになった肌を見せる、ザラが覗くとどうやら金属が埋め込まれているようだった。

「根元からへし折れているけどこれは矢じりだ、狩りかわからないが人の手によって追われていたみたい。……ワイルドボアの走ってきた方向を辿れば何かわかるかもしれない」

「では、そちらに向かいましょう。そのボアはどうしますか?解体するなら手伝いますが」

「……そういえば見せてなかったか。いいよ、僕が仕舞う」

 エクトは魔法を使い異空間にワイルドボアを仕舞い込む。

 初めてみたエクトの魔法にザラは驚いた表情を見せる。

「……驚きました、貴方は魔法使いでしたか。そういえば一度も魔術を使っていませんでしたね」

「うん、特に僕の魔法は珍しいからね。荷物持ちなんかに誘われるのは御免だからなるべく隠してるんだ」

「ですが、それなら荷物について心配はいりませんね」

「あー、そうだね。極端な話……民家でも仕舞わない限り大体は入るよ」

 手に付いた血を払うと先に進むことにした。

 そしてワイルドボアの足跡を辿り、程なくして足跡は途切れてしまった。

「ここで途切れてますね」

「そうみたいだ、……道中何もなかったし外れだったかな……」

「……?エクトさん、あそこに何か……」

『エクト!倒れろ!!』

「っ!!」

「ひゃっ!?」

 カナカが突然声を荒げたのを聞いたエクトは、反射的にザラを押し倒す様に地面に倒れ込む。

 そして二人が先程まで居た位置に矢が通り過ぎた瞬間、顔を赤らめていたザラの顔が急速に冷えていった。

「ありがとうございます……私が守るので動かないでください」

 剣を抜きながら立ち上がるやいなや、再び飛んできた矢を切り払うとザラは剣を軽く構える。

 三度目の矢を切り払うとザラは見えない敵に対し声を張る。

「一は北、二は東、三は西。どれも一発ずつという事はどうやら一人のようだな!姿を見せろ!!」

 沈黙。それ以降矢が飛んでくる事は無かったが相手が姿を見せる事も無かった。

「……エクトさん、元の道は覚えていますか?……相手は消えたか隠れているかわかりません、このまま仲間を呼ばれたら危険ですので一度戻るべきかと」

「……わかった、なら急いで戻ろう」

「待って」

 しかし、二人が退却する直前に一人の少女が目の前に降り立った。

 藍色の髪をハーフアップにして纏めている黄緑色の少女は、弓は持たずあるのは一本の矢と腰にあるワイヤーのみ。

 少女は一歩近づくとザラが剣を向け警告する。

「貴様があの矢を放ったのか?」

「……」

 少女は何も答えない、それどころか目線はザラを捕えず後ろに居るエクトに向けられているようだった。

「答えろ、そしてそれ以上近づくなら斬る」

「そこの男の人に用があるの」

「何?」

 ザラは思わずエクトを振り返るが、エクトは理由がわからず首を振る。

「僕に用だって?」

「違う、

『げっ!?俺が見えてんのかよ!?』

「なんだ……?一体何を言っている……?」

 ザラが困惑するがエクトは全身から、嫌な汗をかいていた。

「見えてる」

『マジか……お前さん名前は?』

「オリリア・タリオン、ついてきて」

 オリリアと名乗ったエルフの少女は背を向けると森の奥へ歩いていく。

「……エクトさん、どうしましょう?」

「ついていこう、あのエルフは何かある」
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