78 / 88
第11章 船出
第78話 海中での激闘
しおりを挟む
第78話 海中での激闘。
体中が冷たい。
僕が意識を取り戻した時、目の前にミレーヌの姿があった。
長く美しい緑髪が広がって闇に落ちていく。
僕はここが水中だとすぐにわかった。
海底へと沈んでいくミレーヌの手を取って僕は光の差す明るい場所。
海面へ向かって泳いでいく。
「ぶはっ!!」
僕は海面に顔を出して慌てて飲み込んだ海水を吐き出した。
一緒に海面に脱出したミレーヌも激しく咳き込み海水を吐き出す。
僕とミレーヌはサ・セント号から遠い海面へ飛ばされたようだ。
ウォーターブレスの直撃を受ける寸前にクヌートとフェリシアがシールドの魔法を張ってくれたのだろう。
そうでなければ僕とミレーヌは死んでいたはずだ。
シーサーペントは巨大な蛇のような身体を振って僕とミレーヌを探している。
見つかるのは時間の問題だろう。
僕の隣にいるミレーヌは海水の寒さと恐怖で震えている。
僕は震えるミレーヌを優しく抱きしめて身体を触れあわさせた。
「ユキナ…ボク怖いよ」
「大丈夫。ミレーヌは僕が守るから。絶対に死なせない」
もって数分。
長くても10分もしないうちにシーサーペントに見つかった僕とミレーヌは、先ほどの冒険者のように食い殺されるのだろう。
折角生まれ変わって美しくて優しくて少し頑固で意地っ張りで、とても可愛いミレーヌと恋人になれたのに。
こんな所で死ぬのは嫌だ。
僕はミレーヌの唇に僕の唇を優しく重ねた。
「絶対に君だけは死なせない」
僕の言葉にミレーヌは震える手で僕の身体をギュッと抱きしめる。
シーサーペントは僕たちを探しているが、なかなか見つけられずに苛立っているのだろう。
ウォーターブレスを当てずっぽうで海面に吐き出す。
サン・セント号なんていつでも沈められるから後回しにして僕たちを探してるんだ。
「くっ!!」
僕たちの周りにもウォーターブレスが着弾し始め、ミレーヌと僕は激しく海面で波にさらされる。
海面が激しく波打ち溺れそうになった。
そのたびに僕とミレーヌは海中から顔を出してせき込んで海水を吐き出す。
シーサーペントも僕たちを捕食できずに苛立っているのだろう。
ミレーヌの勇者の力を恐れているのだ。
ミレーヌが海水に濡れて寒さと恐怖で震えている。
僕は彼女を力強く抱きしめてお互いの体温で温め合う。
少しでも寒さから守るために。
そんな時、僕の脳裏に声が聞こえた。
『ユキナ我を使え』
その声は僕の腰に装着した青い剣。
青龍氷牙からのものだった。
青龍氷牙に埋め込まれた青い宝玉が会話に合わせて点滅する。
『我の得意は水なり』
そうか!!
僕はすぐにアイデアを思いついて水中で青龍氷牙を抜いた。
そして僕を中心に海面が凍り付く。
その氷はサン・セント号を包むように広がりシーサーペントの身体にも到達した。
突然の事にシーサーペントは僕たちに振り向く。
サン・セント号に乗っていた船員や冒険者も僕たちに気が付いたようだ。
僕とミレーヌは凍り付いた海面を這い上る。
「ユキナ。これって」
「青龍氷牙にお願いして海面を凍らせてもらったんだ。これなら僕たちは戦える」
凍り付いた海面は分厚い層になっていて僕とミレーヌが乗っても十分耐えられる。
凍り付いた海面と僕たちを見つけたシーサーペントが咆哮をあげた。
「見つけたぞ勇者ミレーヌ!!」
そういってシーサーペントはウォーターブレスを吐き出した。
分厚い氷が穿たれると海水が激しく噴き出す。
僕とミレーヌはウォーターブレスを避けつつ凍り付いた海面を走っていく。
突然海面が凍り今にも沈みそうだったサン・セント号に乗っていた船員と冒険者たちが驚きどよめくがその声を聞いている暇はない。
僕とミレーヌにウォーターブレスが命中しない事に苛立ったシーサーペントがその巨体を震わせて僕たちに迫る。
その瞬間僕とミレーヌの身体が軽くなり、目の前に透明のバリアーが張られた。
クヌートとフェリシアが魔法をかけてくれたのだ。
身軽になった僕とミレーヌはそのままシーサーペントに突撃し僕は青龍氷牙を、ミレーヌは赤龍雷牙をシーサーペントの身体に突き刺し抉った。
「ぎゃあああああ!!」
シーサーペントが激しい痛みに叫びながら巨体を震わせ水中へと逃れようとする。
凍った海面が激しく揺さぶられ亀裂が走った。
「逃がすものか!!」
「逃がさない!!」
僕とミレーヌが同時に叫び剣を横なぎにして切りつける。
「全てを断つ氷の龍よ。氷の牙をもって彼の者を切り裂け!青龍氷牙!!」
僕の叫びと共に青龍氷牙の刀身から激しい氷飛沫が噴き出し、僕が振るう剣の軌跡に沿って青い光を放つ。
刀身がシーサーペントを切り裂く瞬間、氷飛沫は氷の刃となって肉体に食い込んだ。
その氷の刃がシーサーペントの分厚い鱗を貫通し内臓と肉体ごと打ち砕いた。
「天と地を貫く稲妻を纏いし炎の柱!!我が敵を焼き尽くせ!!赤龍雷牙!!」
ミレーヌの叫びと共に赤い宝玉を埋め込まれた赤龍の剣から炎が噴き出しその炎が電撃を纏う。
激しい炎が巨大なシーサーペントを包み込むと腐った魚肉が焼けただれるような嫌な匂いがした。
シーサーペントが激しくのたうちながら叫ぶ。
「おのれ!!炎ならば水中では使えまい!!」
そう吠えたシーサーペントが海中へと逃走を始めた。
このまま逃がすわけにはいかない。
「逃がすもんかあああ!!」
ミレーヌが炎を纏った赤龍雷牙をシーサーペントに突き刺すと傷口が激しく焼かれる。
その傷口の肉が収縮し赤龍雷牙の刃に食い込んだ。
ミレーヌはそのまま海中へと引き込まれる。
「しまった!?」
「かかったな愚か者!!」
シーサーペントは炎の通用しない海中でミレーヌを食い殺すつもりだった。
ミレーヌは慌てて赤龍雷牙を手放そうとするが間に合わない。
「ユキナ!!助けて!!」
「ミレーヌ!!」
僕に助けを求めるミレーヌの悲痛な叫びを聞いて躊躇していられない。
海中は奴の庭のようなものだ。
それがどうした。
僕は生涯ミレーヌと添い遂げると決めているんだ。
僕はシーサーペントとミレーヌを追って海中へと飛び込んだ。
体中が冷たい。
僕が意識を取り戻した時、目の前にミレーヌの姿があった。
長く美しい緑髪が広がって闇に落ちていく。
僕はここが水中だとすぐにわかった。
海底へと沈んでいくミレーヌの手を取って僕は光の差す明るい場所。
海面へ向かって泳いでいく。
「ぶはっ!!」
僕は海面に顔を出して慌てて飲み込んだ海水を吐き出した。
一緒に海面に脱出したミレーヌも激しく咳き込み海水を吐き出す。
僕とミレーヌはサ・セント号から遠い海面へ飛ばされたようだ。
ウォーターブレスの直撃を受ける寸前にクヌートとフェリシアがシールドの魔法を張ってくれたのだろう。
そうでなければ僕とミレーヌは死んでいたはずだ。
シーサーペントは巨大な蛇のような身体を振って僕とミレーヌを探している。
見つかるのは時間の問題だろう。
僕の隣にいるミレーヌは海水の寒さと恐怖で震えている。
僕は震えるミレーヌを優しく抱きしめて身体を触れあわさせた。
「ユキナ…ボク怖いよ」
「大丈夫。ミレーヌは僕が守るから。絶対に死なせない」
もって数分。
長くても10分もしないうちにシーサーペントに見つかった僕とミレーヌは、先ほどの冒険者のように食い殺されるのだろう。
折角生まれ変わって美しくて優しくて少し頑固で意地っ張りで、とても可愛いミレーヌと恋人になれたのに。
こんな所で死ぬのは嫌だ。
僕はミレーヌの唇に僕の唇を優しく重ねた。
「絶対に君だけは死なせない」
僕の言葉にミレーヌは震える手で僕の身体をギュッと抱きしめる。
シーサーペントは僕たちを探しているが、なかなか見つけられずに苛立っているのだろう。
ウォーターブレスを当てずっぽうで海面に吐き出す。
サン・セント号なんていつでも沈められるから後回しにして僕たちを探してるんだ。
「くっ!!」
僕たちの周りにもウォーターブレスが着弾し始め、ミレーヌと僕は激しく海面で波にさらされる。
海面が激しく波打ち溺れそうになった。
そのたびに僕とミレーヌは海中から顔を出してせき込んで海水を吐き出す。
シーサーペントも僕たちを捕食できずに苛立っているのだろう。
ミレーヌの勇者の力を恐れているのだ。
ミレーヌが海水に濡れて寒さと恐怖で震えている。
僕は彼女を力強く抱きしめてお互いの体温で温め合う。
少しでも寒さから守るために。
そんな時、僕の脳裏に声が聞こえた。
『ユキナ我を使え』
その声は僕の腰に装着した青い剣。
青龍氷牙からのものだった。
青龍氷牙に埋め込まれた青い宝玉が会話に合わせて点滅する。
『我の得意は水なり』
そうか!!
僕はすぐにアイデアを思いついて水中で青龍氷牙を抜いた。
そして僕を中心に海面が凍り付く。
その氷はサン・セント号を包むように広がりシーサーペントの身体にも到達した。
突然の事にシーサーペントは僕たちに振り向く。
サン・セント号に乗っていた船員や冒険者も僕たちに気が付いたようだ。
僕とミレーヌは凍り付いた海面を這い上る。
「ユキナ。これって」
「青龍氷牙にお願いして海面を凍らせてもらったんだ。これなら僕たちは戦える」
凍り付いた海面は分厚い層になっていて僕とミレーヌが乗っても十分耐えられる。
凍り付いた海面と僕たちを見つけたシーサーペントが咆哮をあげた。
「見つけたぞ勇者ミレーヌ!!」
そういってシーサーペントはウォーターブレスを吐き出した。
分厚い氷が穿たれると海水が激しく噴き出す。
僕とミレーヌはウォーターブレスを避けつつ凍り付いた海面を走っていく。
突然海面が凍り今にも沈みそうだったサン・セント号に乗っていた船員と冒険者たちが驚きどよめくがその声を聞いている暇はない。
僕とミレーヌにウォーターブレスが命中しない事に苛立ったシーサーペントがその巨体を震わせて僕たちに迫る。
その瞬間僕とミレーヌの身体が軽くなり、目の前に透明のバリアーが張られた。
クヌートとフェリシアが魔法をかけてくれたのだ。
身軽になった僕とミレーヌはそのままシーサーペントに突撃し僕は青龍氷牙を、ミレーヌは赤龍雷牙をシーサーペントの身体に突き刺し抉った。
「ぎゃあああああ!!」
シーサーペントが激しい痛みに叫びながら巨体を震わせ水中へと逃れようとする。
凍った海面が激しく揺さぶられ亀裂が走った。
「逃がすものか!!」
「逃がさない!!」
僕とミレーヌが同時に叫び剣を横なぎにして切りつける。
「全てを断つ氷の龍よ。氷の牙をもって彼の者を切り裂け!青龍氷牙!!」
僕の叫びと共に青龍氷牙の刀身から激しい氷飛沫が噴き出し、僕が振るう剣の軌跡に沿って青い光を放つ。
刀身がシーサーペントを切り裂く瞬間、氷飛沫は氷の刃となって肉体に食い込んだ。
その氷の刃がシーサーペントの分厚い鱗を貫通し内臓と肉体ごと打ち砕いた。
「天と地を貫く稲妻を纏いし炎の柱!!我が敵を焼き尽くせ!!赤龍雷牙!!」
ミレーヌの叫びと共に赤い宝玉を埋め込まれた赤龍の剣から炎が噴き出しその炎が電撃を纏う。
激しい炎が巨大なシーサーペントを包み込むと腐った魚肉が焼けただれるような嫌な匂いがした。
シーサーペントが激しくのたうちながら叫ぶ。
「おのれ!!炎ならば水中では使えまい!!」
そう吠えたシーサーペントが海中へと逃走を始めた。
このまま逃がすわけにはいかない。
「逃がすもんかあああ!!」
ミレーヌが炎を纏った赤龍雷牙をシーサーペントに突き刺すと傷口が激しく焼かれる。
その傷口の肉が収縮し赤龍雷牙の刃に食い込んだ。
ミレーヌはそのまま海中へと引き込まれる。
「しまった!?」
「かかったな愚か者!!」
シーサーペントは炎の通用しない海中でミレーヌを食い殺すつもりだった。
ミレーヌは慌てて赤龍雷牙を手放そうとするが間に合わない。
「ユキナ!!助けて!!」
「ミレーヌ!!」
僕に助けを求めるミレーヌの悲痛な叫びを聞いて躊躇していられない。
海中は奴の庭のようなものだ。
それがどうした。
僕は生涯ミレーヌと添い遂げると決めているんだ。
僕はシーサーペントとミレーヌを追って海中へと飛び込んだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
83
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる