幼馴染の婚約者に浮気された伯爵令嬢は、ずっと君が好きだったという王太子殿下と期間限定の婚約をする。

束原ミヤコ

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もっと仲良く 1

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 二人の王妃の死因についても、精神を病み、病死したとしか書いていない。
 アリッサ先生の説明どおりだ。

「新しいことは、何もわかりませんでした。お時間をとらせてしまってごめんなさい、ゼフィラス様」
「リーシャと過ごす時間は、どんなものであっても貴重で楽しいよ」

「でも、ゼフィラス様、お忙しいのに」
「君との時間のためなら、多少の忙しさなどなんでもない」

「あ……ゼフィラス様」

 もう一度本に視線を落とした私は、見知った名前を見つけて指で辿る。

「二人の王妃が亡くなったあと、王に嫁いだのは神官長の娘……ルシー・ランブルク。ランブルク神官家は今も神官長の家系ですね」

「あぁ。そうだな。ランブルク家は王家と同じぐらいに古い家柄だ。三大公爵家とランブルク家、その四家は始祖様の時代から存在していると記録には残っているな」

「アルゼウス・ランブルク様は私の同級です。誰にでも優しく平等な方ですね」

 ゼフィラス様は「そうだな」と言いながら、視線を落とした。
 何か嫌なことを言ってしまったかしらと、私はゼフィラス様を覗き込む。

「ゼフィラス様、アルゼウス様のことを、快く思っていませんか? 私、人を見る目があまりないようで……もし私が間違っていたら、教えて欲しいのです」

「アルゼウスは君の言うとおり、悪い人間ではないよ。真面目で清廉な男だと認識している。だが、君が他の男を褒めるとどうにも……嫉妬を。すまない。私は君よりも大人なのに」

「ゼフィラス様も……嫉妬をしてくださるのですか?」

 私は目を丸くした。
 ゼフィラス様はそういった感情とは無縁のような方に思えたからだ。

 でも――そういえば、ゼス様に私を取られると言っていたことを思い出す。

「あぁ。私は多分人並みに、独占欲が強い。サーガにも嫉妬をしたし、君に褒められたアルゼウスにも。君が他の男の名前を呼ぶのが、嫌だ」

「誰の名前も呼ばないというのは難しいです。でも、極力気をつけますね」

「いや、いい。リーシャ、君は自然のままでいてくれ。私は勝手に嫉妬する」
「え、あ、ふふ……」

 思わぬ宣言に、私は口元に手を当てて笑った。

「嬉しいです、ゼフィラス様。嫉妬をしてくださるというのは……私、何もかもが、はじめてです。そういった感情を、向けていただくのも」

「私は、君にしかこのような感情を抱いたりしない。君だけを愛している。君だけしかいらない」
「っ、は、はい」

 囁かれる言葉はいつも熱くてひどく甘くて、自分がどこにいるのかさえ分からなくなってしまいそうになる。
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