婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ

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彼女の分の苦しみを


 ――王が母に指輪を与えたのは、何故だったのか。

 死体を隠すために、小さな田舎町にある本当に小さな家ごと、母を燃やしたのだ。
 アダムの記憶にはその場所は残っていない。
 噂を頼りに何とかその場所を探し出し、骨を集めて、埋葬をした。

 王家の指輪はその時にみつけた。

 もしかしたら、母は出奔するときに、王家の指輪を盗んだのかもしれない。
 せめてもの、抵抗だったのか。

 辺境伯家に帰ってくればよかったものをと、義父は悲しげに言っていた。母は生真面目な女だったのだという。
 辺境伯家に迷惑をかけられないと思ったのかもしれない。

 一人で全てを背負って、アダムを育てようとしていたのだろう。

「兄上。何故、シャロンは湖に? あなたの胡乱な浮気ごときで、彼女の心は折れたりはしない。何をした。話せ」

「何もしていない! 今更、死んだ女のことを聞いてなにになる!」

「死んでなどいない」

「お前は、あの時もそう言っていたな。シャロンの死体を見て、死んでいないと。お前は、狂っている」

「黙れ。質問に答えろ」

 背中を踏みつけていた足で、今度はその手を踏みつけた。

 靴の裏側で、骨が砕ける音と感触がする。
 悲鳴が牢の中に響き、それを見ていたエミリアが牢の壁に背中を押しつけるようにしながら、両手で耳を塞いで耳障りな大声をあげた。

「三年も前のことなど覚えていない! だが……そ、そうだ! 俺の前から消えろと言ったのだ。婚約破棄はできない。だから、俺のためにいなくなれと……!」

「死ねと、告げたのか」

「違う! いなくなれと言っただけだ。死ねとは言っていない! あの女が勝手に勘違いをしたのだ!」

 怒りにまかせて、オリバーの顎を蹴り上げた。

 オリバーは壁に叩きつけられて、動かなくなった。


 どうせ、処刑をする。


 その前にせいぜい、苦しむがいい。シャロンの分も。
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