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忘れ去られた責め苦 1
しおりを挟むちゅ、ちゅ、と音を立てながら、首筋や胸、腕の内側を強く吸う。
ともすればすぐにでも眠りについてしまいそうな、半分夢の中にいるような瞳で、ルティエラはぼんやりとどこかを見つめていた。
レオンハルトははじめて、自ら他者に顔を見せた。
この解放感は、この充足感は、そしてルティエラに対する恋と呼ぶには暗い感情は──レオンハルトが今まで生きてきた中で感じたどの感情とも、情動とも違うものだ。
顔を見せれば、魅了の瞳のせいでルティエラの心も支配することになる。
心を支配する呪いの醜悪さを、虚しさを、嫌悪を、レオンハルト自身が一番よくわかっていた。
だが、それでもいいと思ってしまった。
ルティエラにしか顔を見せるつもりはない。ルティエラだけが、魅了されていればいい。
呪いがあろうがなかろうが、その唇を貪った瞬間に、ルティエラはレオンハルトの中で永遠になった。
女は嫌いだが、ルティエラだけは、欲しい。
どこか夢見がちな瞳で虚空を見つめているのは、魅了をされているからなのだろう。
それにしても──思ったよりも反応が薄い。
レオンハルトの顔を見れば、抱かれるのが嬉しい、愛して欲しいと、自ら足を広げて子種を強請るようなことをするのかと、今までの経験から勝手にそう思い込んでいたというのに。
「ティエ、俺の話を、聞いていたか?」
「ん……ぁ、あ、はなし……?」
できるだけ長くこの時を楽しむために、レオンハルトは逸る心をおさえてルティエラの体に口付けていた。
白い肌には面白いように所有の証を付けることができた。
滑らかで透き通るような白い肌に赤い痕が散らばるのが淫靡で、心はもう捕らえたが、体も自分のものにできるようで、密やかな興奮を感じた。
「あぁ。俺の、出自について話していただろう」
「聞いて……いました、レオ様は大変で……アルヴァロ様の、ご兄弟、で……」
「きちんと聞いていたな、さすが君は優秀だ。ここまで酔って、魅了もされて、このような状況で話が聞けるのだから。あぁ、ティエ。こんなに自分のことを他者に語ったのははじめてだ。気分がいい」
ルティエラをルティエラたらしめる人格は、精神の支配により消えてしまったのかと思った。
だが、甘い吐息の合間に紡がれたその言葉には、気づかいが滲んでいた。
「あまり似ていないだろう。俺の方が、美しい。そういう呪いにかかっている」
「よく、わかりません。でも、どちらでもいいかなと思います。だって、レオンハルト様は今だけは私を愛してくださるのですから。それって、とても素敵なことですね。一夜だけ、偽りの、恋人です」
歌うようにそんなことを言うルティエラが少し憎らしくあった。
魅了はされているのだろう。だから素直に、初めての行為を受け入れている。
けれど彼女の本来の性格のせいなのか──今だけでいい、などという。
「忘れられなくしてやる、ティエ。一夜でいいなどと思えなくなるほどに」
「っ、ひ、ぁ……っ」
僅かな苛立ちを感じながら、レオンハルトはルティエラの足を強引に開かせた。
なだらかな腹部、凹んだ小さな臍。腰の湾曲。その全てが誰にも触れられていない新雪のように美しい。
両足を掴んで残酷なぐらいに大きく開かせると、隠れた場所が露わになった。
まだ小さくつんと突き出た突起、柔らかそうな桃色の陰唇の奥にある隠れた蕾。ひくつく蜜口からはとろりと愛液が滴っている。
気づかず、咽頭が上下に動いていた。
奇妙な形をしたその場所が、美味しそうでたまらない。早く舐めて欲しいと訴えるように蜜を滴らせているその場所に、ねっとりと舌を触れさせた。
美しいルティエラの人には見せられない場所を、自分が暴いている。
そう思うと、首の後ろがチリチリした。
柔らかい肉に舌を這わせて、じゅるりと蜜を舐めとった。小さな突起を舌先で撫でるようにすると、ルティエラの腰が浮いた。
「ぁ、あぅ、ぅ……っ、そこ、だめ、れおさまぁ……っ」
甘えた声で名前を呼ばれて、もっと泣かせてやりたくなる。
口の中で飴玉のようにころころと、舌で突起を転がしていじめてやると、ルティエラは足を跳ねさせながら、歓喜の泣き声を漏らした。
「ん、ぁ、あぁ、そこ、だめです……っ」
「駄目?」
「ゃあんっ、ぁ、あぁ……」
舌で上下に弾くように舐るたびに、逃げようとする腰やあがる阿るような泣き声を楽しんだ。
彼女を追い詰めれば追い詰めるほどに、気分が高揚した。
女を抱いているからか。
いや、違う。ルティエラだからだ。
ずっと心の片隅に住み続けていた女性を──血の繋がった弟であるアルヴァロが捨てた彼女を、こうして手に入れることができたのだ。
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