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遺跡探索と雪解けの春
序章1
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どうしてこうなった。
と――私は、頭の中で呟いた。
私の心は嵐からツンドラ気候。
目の前にはツンドラ気候も思わずにっこり、といった風情のかちんこちんに表情の固まった、永久凍土も然りと言うべき、名は体を表すとは言い得て妙な、『氷の皇子』こと、フィオルド・セントマリア様。
私よりも頭一つ分大きな、細身な長身。
氷の皇子の名に相応しい、水色がかった銀の髪に、アイスブルーの瞳、白い肌。
両耳に飾られた紫色の宝石は、ありあまる魔力を安定させるための魔法石である。
美しいのだけれど、常に眉間に皺が寄っていて、これって私のことを殺したいと思ってる? というぐらいに怖い方だ。
いえ、私にはそう思えるだけで、本当は怖いわけじゃないのかもしれないけれど。
けれど私にとっては、とても怖いのである。
顔を合わせる度にご機嫌が大変悪くていらっしゃるので、「あら? 先程百人ぐらい人を殺してきましたか?」と聞きたくなるぐらいだ。
聞かないけど。そんな度胸があったら、私も今こんなに困り果てていない。
セントマリア魔道学園の、白い制服がとてもよく似合っていらっしゃるフィオルド様は、いつもと同じように不機嫌に、私を睨みつけている。
私、何かしたかしら。
清く正しく美しく――はないかもしれないけれど、穏便に、できるだけ穏やかに、隅の方で、私は部屋の隅の綿埃なのでお気になさらず、という心意気で生きてきたのに。
なんかもう、生きていてごめんなさい。
こんなミジンコが生きていてごめんなさい、フィオルド様の婚約者とか、滅相もございませんと土下座をして謝りたい。
しないけど。
そんな度胸があったら、私はこんなに困っていない。
はい、今、大切な事なので二度言いました。ここ、とっても重要。私の度胸は底辺を通り越して地殻を突き抜けて反対方向の地上から顔を出すぐらいに、低いというか、ないのである。
今日も空気が美味しいわね。呼吸に集中するのよ、リリアンナ。呼吸に集中するか、素数を数えるの。そうしたら嫌なことは大抵私の前を通り過ぎて、終わっているのだから。
「リリアンナ。来週の校外学習は、魔力の安定した使用方法を学ぶために、学園近郊の遺跡の踏破に決まったとは、知っているな」
感情の籠らない冷たい声音でフィオルド様が言った。
と――私は、頭の中で呟いた。
私の心は嵐からツンドラ気候。
目の前にはツンドラ気候も思わずにっこり、といった風情のかちんこちんに表情の固まった、永久凍土も然りと言うべき、名は体を表すとは言い得て妙な、『氷の皇子』こと、フィオルド・セントマリア様。
私よりも頭一つ分大きな、細身な長身。
氷の皇子の名に相応しい、水色がかった銀の髪に、アイスブルーの瞳、白い肌。
両耳に飾られた紫色の宝石は、ありあまる魔力を安定させるための魔法石である。
美しいのだけれど、常に眉間に皺が寄っていて、これって私のことを殺したいと思ってる? というぐらいに怖い方だ。
いえ、私にはそう思えるだけで、本当は怖いわけじゃないのかもしれないけれど。
けれど私にとっては、とても怖いのである。
顔を合わせる度にご機嫌が大変悪くていらっしゃるので、「あら? 先程百人ぐらい人を殺してきましたか?」と聞きたくなるぐらいだ。
聞かないけど。そんな度胸があったら、私も今こんなに困り果てていない。
セントマリア魔道学園の、白い制服がとてもよく似合っていらっしゃるフィオルド様は、いつもと同じように不機嫌に、私を睨みつけている。
私、何かしたかしら。
清く正しく美しく――はないかもしれないけれど、穏便に、できるだけ穏やかに、隅の方で、私は部屋の隅の綿埃なのでお気になさらず、という心意気で生きてきたのに。
なんかもう、生きていてごめんなさい。
こんなミジンコが生きていてごめんなさい、フィオルド様の婚約者とか、滅相もございませんと土下座をして謝りたい。
しないけど。
そんな度胸があったら、私はこんなに困っていない。
はい、今、大切な事なので二度言いました。ここ、とっても重要。私の度胸は底辺を通り越して地殻を突き抜けて反対方向の地上から顔を出すぐらいに、低いというか、ないのである。
今日も空気が美味しいわね。呼吸に集中するのよ、リリアンナ。呼吸に集中するか、素数を数えるの。そうしたら嫌なことは大抵私の前を通り過ぎて、終わっているのだから。
「リリアンナ。来週の校外学習は、魔力の安定した使用方法を学ぶために、学園近郊の遺跡の踏破に決まったとは、知っているな」
感情の籠らない冷たい声音でフィオルド様が言った。
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