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遺跡探索と雪解けの春

 とけた誤解と遺跡の魔物は別問題 2

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 いくつかの小部屋を通り過ぎて、新し小部屋に入る。
 石造りの遺跡の内部はどこもかしこも同じ風景に見えて、どこまで進んだのかよく分からない。
 魔物にも遭遇しなかった。

 魔法の安定した使用方法の実技を学ぶための校外学習なのに、私は今のところスライムを活性化させることと、アルラウネに魔力を吸われて活性化させることしかしていない。

 このままで良いのかしらとふと疑問に思うけれど、フィオルド様が優しくて幸せで、校外学習なんてどうでも良いかなって気もしないでもない。

「リリィ、お前の使える魔法は、植物魔法だと認識しているが、具体的には聞いたことがなかったな。私がお前と向き合おうとしなかったせいだが。……もし嫌ではなければ、聞いても良いか?」

「あ、……え、と……植物を、育てるぐらいしか、できなくて。魔法、あまり得意ではなくて」

「そうか。……それなのに、お前を置いて先に行ってしまうとは、私は本当に愚かだな。魔物に襲われて怖かっただろう」

 私がたいした魔法が使えないことを、フィオルド様は落胆もしなければ、小馬鹿にして笑ったりもしなかった。

 それだけで、あたたかいものが胸に広がっていく。
 私はきゅっと、フィオルド様の手を握る指先に力を込めた。

「大丈夫、です。……その、フィオルド様が、助けて、くださったから」

 ちゃんとお礼が言えた、よかった。

 フィオルド様のこと、今は怖くない。
 そのせいか、喉の奥につっかえていた何かが取れたかのように、言葉が少し、出てくるようになった。

「リリィ……」

「……っ、え……?」

 今なんかとっても良い雰囲気だった気がするのに、私の足にぬめぬめしたものが絡みついた。
 足首を、ぬめぬめしたものが掴んでいる。

 それは私を強引にフィオルド様から引き剥がして、宙吊りにした。
 本日何度目かの宙吊りにされた私、ふるふるぽよんぽよんした何かに、全身を包まれている。

 それは私の両手と両足を大きく開かせている。見上げた先にいたのは、薄紫色で半透明の、アメフラシにどことなく似ている、ぬめぬめした触手の塊だった。


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