リリアンナ・セフィールと不機嫌な皇子様

束原ミヤコ

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遺跡探索と雪解けの春

頑張る私とすぐに落ち込むフィオルド様 1

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 フィオルド様の手が私の首や鎖骨を、形を確かめるようにして撫でていく。

 首筋に唇が触れて、幾度かぴりっとした痛みを感じる。

 強く吸われた後に丁寧に舐られると、それだけでお腹の奥の方がじくじくと疼いた。

「ぁ、あ……」

 阿るような甘い声をおさえたくて、私は両手で口をふさいだ。 
 それでもくぐもった声が、吐息と共に漏れてしまう。

「ん……ん……っ」

「リリィ、お前をここに連れてきた後、他の誰かにお前の姿を見せるのが嫌で、この部屋がある上階には誰も来ないようにと人払いをしてある。だから、存分に乱れて良い」

 フィオルド様は私の両手をそっと外した。
 優しく啄むような口づけを何度か落として、唇を舌先が割り開く。

 舌を絡めながら、大きな手のひらが私の胸をやわやわと揉んだ。
 指先で挟むようにして、小さな胸の頂きをしごかれると、腰のあたりが重くなる。

 じんわりと、花弁の奥が潤ってくるのを感じる。
 私はシーツを掴みながら、体をよじった。

 勝手に腰が揺れて、しっとりとしていて硬くあつい何かに、薄い腹の下のなだらかな坂を、擦り付けるようにしてしまう。

「っ、ふ、ぁあ……ん、ん……」

 舌先を吸われて、喉の奥までぬるりと舐められる。
 舌が絡まり合うちゅぷりと響く水音が、直接鼓膜を犯して、私は切なく眉を寄せた。

 胸の頂をこりこりと虐めていた指先が、下腹を辿る。
 脇腹をくすぐり、腰の曲線を撫でた。

「ん……ぁ、あぁぅ……っ」

「愛らしい声だな、リリィ。もっと、聞きたい」

 長い口付けから解放された私は、はあはあと促拍した呼吸を繰り返しながら、フィオルド様を見上げる。

 嫣然と微笑む姿は煽情的で、フィオルド様に体に触れられて、求められていることを強く実感すると、頭が沸騰しそうなぐらいに激しい感情が体を渦巻いた。

 嬉しい、愛しい、もっと――して欲しい。

 フィオルド様が微笑んでくださっている。泣きたくなるぐらいの幸せが、心臓の奥からあふれる。

「フィオルド、様……っ、あ、ああ……あぅ、う」

 ぷっくりと立ち上がった、薄桃色の胸の飾りを、フィオルド様の舌が押しつぶすように舐った。

 下腹部を撫でていた手のひらが更に下の方を目指して蠢き、潤いをたっぷりたたえた花弁を割り開く。
 零れた蜜を塗りつけるようにして、長い指が柔らかい肉の間を行き来した。

「もう、こんなに濡れて……悦んでくれているんだな、リリィ。嬉しい」

「っ、はぃ……っ、気持ち良くて、わたし……っ」

「もっとお前を悦ばせたい。お前の体は甘いな、リリィ。どこに触れても、口付けても、全て柔らかく、頼りなく、甘い。……すぐに壊れそうなぐらいに細く、小さい。それなのに、私は」

 私はフィオルド様の忍耐の気配を察知した。

 自罰的な囁きが聞こえて、私はうっとりと細めていた目を見開く。

 私はずっとフィオルド様のことを恐ろしくて、冷酷な、まさに氷の皇子様だと思っていた。
 けれど今のフィオルド様は違う。

 繊細で我慢強く、すぐに内省を繰り返してしまう、生真面目な方だ。


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