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2 婚約解消⁉︎
しおりを挟む「すまない、ルフィナ。私と婚約解消してほしい。君に迷惑をかけたくない」
夜になって私の婚約者のクレメンテ様がやって来て、悲しげな顔をして言った。
18歳になったばかりの私より5つ年上の穏やかな人。
「…………」
「君を巻き込むわけにはいかないんだ。本当にすまない。もう二度と会うことはないだろう」
私はクレメンテ様をキッとにらみつける。
12センチのハイヒールを履いていても、まだ見上げなくてはならないほど背が高い。
それがまた無性に腹が立つ。
たいていの男性は視線が同じくらいの高さになるのに。
「愚かですわ」
「……なんと言われてもかまわない」
婚約したのは10年前。
お互いに伯爵家同士だけど、ダンジェロ伯爵家は中立の立場を貫いて力を持ちすぎないようにしてきた控えめな一族。
多少の不利益を被っても喧嘩はしたくないらしい。だけど――。
「私は、ぜっったいに嫌ですわ!」
「ルフィナ」
ささやくように私の名前を呼び、一度伸ばしかけた手がぱたりと落ちた。
遠慮しないで触れてくれたらいいのに。
クレメンテ様の眉がこれ以上ないほど下がる。
私の生まれたバローネ伯爵家は、赤毛持ちで気性が荒い者が多かった。
その中でも燃えるような赤毛と翠の瞳を受け継いだ私はいかにもバローネの血を強く引いていると言われる。
両親も激昂して協力を申し出てくれた。父がさっそく隣国の陛下の元へ訴えてくると飛び出してしまったが……正直少し不安。
でも手数は多い方がいいだろうと思い込む。
私はクレメンテ様を諦めたくないのだもの。
「……よーく、考えてくださいませ。クレメンテ様も、ステファニアも悪いことは何一つしておりませんわ。すべて、あの方のせいではありませんか!」
「ルフィナ、声を落として。誰かに聞かれるとまずい」
私室に2人きりだというのに、クレメンテ様はあたりを見回す。
本当だったら、婚約者同士仲良くティータイムを楽しめたのに。
私が学園を卒業後、すぐに結婚する予定だったから準備だってほぼ整っている。
「誰もおりません。私、絶対にうなずきませんから!」
「ルフィナは若くて綺麗だから、すぐにでも婚約者が見つかるよ」
「……確かに私は新しい婚約者を見つけることは難しくないです!」
この性格はともかく、見た目に惹きつけられる殿方は多いもの。家柄だって悪くない。
じっと見つめると、クレメンテ様は少し悲しそうな顔をした。
「ですが、クレメンテ様以外と結婚なんていたしません。考えられませんもの! 私の夫になれるのなんてクレメンテ様くらいのものですわ。私、クレメンテ様以外頷きませんもの!」
一歩前に踏み出して、クレメンテ様の背中に腕を回した。
「ルフィナ……!」
慌てた彼が半歩下がる。けれど私がその分近づいた。そうしても揺らがないくらい彼の体は大きくてがっしりしている。
「クレメンテ様も、ギリギリまで足掻いてくださいませ。私、諦めませんから!」
「だが……」
「クレメンテ様も私を好きでしょう? 私……私だって、その……」
だんだん自信がなくなってくる。
好きだって直接言われたことは8回。口づけは2度ほど。
好きだって、結婚するのが楽しみだって言ってくれたのに……。
結婚式の招待状も配っているし、あと2ヶ月で私たちは夫婦になる。本来なら。
「ルフィナ」
彼の腕が私の背中に回ってぎゅっと抱きしめられた。
ちょっと苦しいくらい強く。強い……。
「……わかった。君を巻き込みたくなかったが……覚悟を決めるよ」
クレメンテ様の瞳に力強い意志を感じて、私の闘志もますます燃えた。
私はクレメンテ様との結婚を諦めない。
だから理不尽な連座はごめんです!
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