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おまけ④ 湖に浮かぶ島へ《愛妻の日記念》
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* 本日は1/31の日、チューリップを贈る日だそうです。
******
国境にある海のように大きな湖に、いくつもの島がある。
その中に、まるでお伽話のようだと訪れた人達が口々に言うのが、みんなの憧れの花の島。
「リーヌス、ここからでも色とりどりの花が咲いているのが見えるわ!」
せっかくの休みだし、温かくなってきたからとリーヌスに行き先も伝えられず連れ出されて船に乗った。
しばらくしてから花の島へ向かうのだと気づき、私は座っていることができなくて、彼とデッキに立っている。
私も生きているうちに一度は行ってみたいと思っていたし、リーヌスとも結婚したばかりの頃に少しだけそんな会話をした記憶はあった。それを覚えていてくれたのかな。
「あぁ、本当だね。可愛い」
「可愛い……? 綺麗じゃなくて?」
「ごめん、カリンが可愛くて。花は綺麗だな」
リーヌスが後半の言葉をとってつけたように言う。
ずっと私の顔を見ていたみたいで、ちょっと恥ずかしい。
「だって俺は毎日あの島で目覚めるようなものだから」
そう言って私の髪を撫でる。
私が楽園みたいってこと……?
なんて答えていいかわからなくて、戸惑っていると、そっと頬にキスした。
「今だって、目をキラキラさせてすごく可愛い。夢みたいに嬉しい」
「~~っ! リーヌス、今日はいっぱい楽しもうね!」
恥ずかしくて赤くなる私を、とろけるような眼差しでみつめるからますます顔が熱い。
「そうだな、一緒にたくさん思い出を作ろう」
結婚してしばらく経つのにリーヌスは全く変わらない。それよりもっともっと甘くなったかも?
リーヌスにぎゅっと手を握られて、私は顔を隠すように彼の腕に額をつけた。
「私もリーヌスと一緒にいると、幸せで夢みたいに思う時があるよ。今も……」
風にかき消されるかと思ったけど、しっかり聞き取ったリーヌスがもう片方の腕で私をきつく包み込んだ。
「カリン、ちょっと俺……船を降りるのが嫌に」
「え?」
思わず顔を上げた私にかすめるようにキスする。
「カリンが可愛すぎてちょっと困ってる。今動けないし……いや、もちろん降りるよ! カリンと全力で楽しむから!」
「……はい」
そうしてしばらく抱き合っていると、島に近づいて船が錨を下ろす。
私達は人々が降りるのを待ってから、ゆっくり歩き出した。
船着場から花の小径を通り抜け、きれいに整えられた花壇に、今は色とりどりのチューリップが咲いていて。
「……蝶が、すごい」
花が咲き乱れているからか、たくさんの蝶が花から花へ飛び回る。
「100種類以上いるらしい。すごいな」
ひらひらと舞う姿を目で追いながら、のんびり散策。
好きな場所にさっそくブランケットを広げてピクニックを始める家族の姿もある。
子供達の笑い声が響いて、とても賑やかで平和。私達はそのまま奥へと進むと、林のようになっていて、少しひんやりしていた。
「カリン」
名前を呼ばれて顔を上げると、リーヌスが唇にキスをした。
辺りに人がいなくて、二人きりになったからかな。
思わずお互い見つめ合って顔がゆるんでしまう。
「リーヌス、大好き」
「俺も好きだ」
周りに人気がないのをもう一度確認してから、私もリーヌスに向かって背伸びした。
私のしたいことがわかったみたいで、彼も少し背をかがめてくれる。
「カリン」
リーヌスの肩に手を置いて唇にキスを返して、お互いにわけもなく笑ってしまった。
結婚して半年ほど、まだまだ知らないこともたくさんあるけど、少しずつリーヌスのことがわかってきたかな?
「もう一回?」
私が訊くと、彼は嬉しそうに頷いた。私からキスするのもようやく慣れて、いつもすごく嬉しそうな顔をしてくれる。
もう一度背伸びして、顔を近づけると――。
「んんっ!」
かぷっと下唇を啄まれて、驚く私の唇を何度も啄む。
「カリン、可愛い」
「リーヌス……っ!」
「ふふ、可愛すぎ」
ぎゅっと胸に顔を押しつけて、私は熱くなった顔を隠す。
ここは外だから、いつ誰がやってきてもおかしくないのに、リーヌスといると周りが見えなくなる時がある。
そんな私の髪を撫でているけど、笑いをこらえることができないみたいでしばらく彼の胸が震えるのを感じていた。
しばらくしてから私の顔をのぞき込む。
「この先に滝があるんだ。一緒に見よう」
「……はい。リーヌス、笑いすぎ」
「ごめん、だってこんなに可愛い子が俺の妻で幸せで……ははっ」
そんなふうに言われて私も怒ることなんてできない。
「私も……外も中も格好いいリーヌスが夫でとっても幸せ、だよ」
「俺、幸せすぎて胸が苦しいとか、胸がいっぱいってカリンと出会ってから知った」
「リーヌスってば」
「だけど、腹はすくんだ。ランチも楽しみにしている」
手をつなぎ直して再び歩く。
ランチは『お花の献立』が名物で、ビールで乾杯した後はサラダ、メインのチキンに、ライスにも花びらがトッピングされているらしい。ちょっと不思議。
この島にも騎士団の詰め所があって、リーヌスは何度も訪れていたみたいで詳しかった。
仕事でだからね、って何度も言うから笑ってしまう。リーヌスのこと、信じてるのに。
ふと視界が開けた。
「階段が滝……?」
思わずそう呟いてしまったのは、階段から水が流れ、その脇にチューリップが植えられていたから。
「うん、階段滝って呼ばれてる。さすがに歩くことはできないけど、きれいに整えられているし、カリンが好きそうだなって来る前から思っていた」
今の季節はチューリップだけど、季節によって色々変わるみたい。
「すごく、きれい……それにピンクのチューリップがとても好き」
「よかった……」
ほっとしたように息を吐くから少し不思議に思った。今日が愛妻に捧げるチューリップの日らしいのだけど、リーヌスが子供の頃は花言葉が絶交だから人にあげてはダメだと教わったらしい。
「私はチューリップの花言葉は思いやりって聞いていたから……いろんな意味があるんだね」
「そうなのか……もしかして色によって違うのかもしれないな。……今日は観るだけだけど、来年はプレゼントさせて」
「はい。楽しみにしているね……今日はここに連れてきてくれて本当にありがとう」
「カリン、今日はまだまだこれからだよ! さぁ、ランチを食べたら反対側をまわろう」
『お花の献立』の最後、薔薇のシャーベットにも花びらが散らしてあってとてもロマンティック。
隊長さんが言い出したらしい愛妻の日は、とても素敵な1日になった。
******
お読みくださりありがとうございます。
愛妻の日、世界同時ハグの時間は午後8時9分だそうです!
試す方がいらっしゃいましたら、ぜひ。
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国境にある海のように大きな湖に、いくつもの島がある。
その中に、まるでお伽話のようだと訪れた人達が口々に言うのが、みんなの憧れの花の島。
「リーヌス、ここからでも色とりどりの花が咲いているのが見えるわ!」
せっかくの休みだし、温かくなってきたからとリーヌスに行き先も伝えられず連れ出されて船に乗った。
しばらくしてから花の島へ向かうのだと気づき、私は座っていることができなくて、彼とデッキに立っている。
私も生きているうちに一度は行ってみたいと思っていたし、リーヌスとも結婚したばかりの頃に少しだけそんな会話をした記憶はあった。それを覚えていてくれたのかな。
「あぁ、本当だね。可愛い」
「可愛い……? 綺麗じゃなくて?」
「ごめん、カリンが可愛くて。花は綺麗だな」
リーヌスが後半の言葉をとってつけたように言う。
ずっと私の顔を見ていたみたいで、ちょっと恥ずかしい。
「だって俺は毎日あの島で目覚めるようなものだから」
そう言って私の髪を撫でる。
私が楽園みたいってこと……?
なんて答えていいかわからなくて、戸惑っていると、そっと頬にキスした。
「今だって、目をキラキラさせてすごく可愛い。夢みたいに嬉しい」
「~~っ! リーヌス、今日はいっぱい楽しもうね!」
恥ずかしくて赤くなる私を、とろけるような眼差しでみつめるからますます顔が熱い。
「そうだな、一緒にたくさん思い出を作ろう」
結婚してしばらく経つのにリーヌスは全く変わらない。それよりもっともっと甘くなったかも?
リーヌスにぎゅっと手を握られて、私は顔を隠すように彼の腕に額をつけた。
「私もリーヌスと一緒にいると、幸せで夢みたいに思う時があるよ。今も……」
風にかき消されるかと思ったけど、しっかり聞き取ったリーヌスがもう片方の腕で私をきつく包み込んだ。
「カリン、ちょっと俺……船を降りるのが嫌に」
「え?」
思わず顔を上げた私にかすめるようにキスする。
「カリンが可愛すぎてちょっと困ってる。今動けないし……いや、もちろん降りるよ! カリンと全力で楽しむから!」
「……はい」
そうしてしばらく抱き合っていると、島に近づいて船が錨を下ろす。
私達は人々が降りるのを待ってから、ゆっくり歩き出した。
船着場から花の小径を通り抜け、きれいに整えられた花壇に、今は色とりどりのチューリップが咲いていて。
「……蝶が、すごい」
花が咲き乱れているからか、たくさんの蝶が花から花へ飛び回る。
「100種類以上いるらしい。すごいな」
ひらひらと舞う姿を目で追いながら、のんびり散策。
好きな場所にさっそくブランケットを広げてピクニックを始める家族の姿もある。
子供達の笑い声が響いて、とても賑やかで平和。私達はそのまま奥へと進むと、林のようになっていて、少しひんやりしていた。
「カリン」
名前を呼ばれて顔を上げると、リーヌスが唇にキスをした。
辺りに人がいなくて、二人きりになったからかな。
思わずお互い見つめ合って顔がゆるんでしまう。
「リーヌス、大好き」
「俺も好きだ」
周りに人気がないのをもう一度確認してから、私もリーヌスに向かって背伸びした。
私のしたいことがわかったみたいで、彼も少し背をかがめてくれる。
「カリン」
リーヌスの肩に手を置いて唇にキスを返して、お互いにわけもなく笑ってしまった。
結婚して半年ほど、まだまだ知らないこともたくさんあるけど、少しずつリーヌスのことがわかってきたかな?
「もう一回?」
私が訊くと、彼は嬉しそうに頷いた。私からキスするのもようやく慣れて、いつもすごく嬉しそうな顔をしてくれる。
もう一度背伸びして、顔を近づけると――。
「んんっ!」
かぷっと下唇を啄まれて、驚く私の唇を何度も啄む。
「カリン、可愛い」
「リーヌス……っ!」
「ふふ、可愛すぎ」
ぎゅっと胸に顔を押しつけて、私は熱くなった顔を隠す。
ここは外だから、いつ誰がやってきてもおかしくないのに、リーヌスといると周りが見えなくなる時がある。
そんな私の髪を撫でているけど、笑いをこらえることができないみたいでしばらく彼の胸が震えるのを感じていた。
しばらくしてから私の顔をのぞき込む。
「この先に滝があるんだ。一緒に見よう」
「……はい。リーヌス、笑いすぎ」
「ごめん、だってこんなに可愛い子が俺の妻で幸せで……ははっ」
そんなふうに言われて私も怒ることなんてできない。
「私も……外も中も格好いいリーヌスが夫でとっても幸せ、だよ」
「俺、幸せすぎて胸が苦しいとか、胸がいっぱいってカリンと出会ってから知った」
「リーヌスってば」
「だけど、腹はすくんだ。ランチも楽しみにしている」
手をつなぎ直して再び歩く。
ランチは『お花の献立』が名物で、ビールで乾杯した後はサラダ、メインのチキンに、ライスにも花びらがトッピングされているらしい。ちょっと不思議。
この島にも騎士団の詰め所があって、リーヌスは何度も訪れていたみたいで詳しかった。
仕事でだからね、って何度も言うから笑ってしまう。リーヌスのこと、信じてるのに。
ふと視界が開けた。
「階段が滝……?」
思わずそう呟いてしまったのは、階段から水が流れ、その脇にチューリップが植えられていたから。
「うん、階段滝って呼ばれてる。さすがに歩くことはできないけど、きれいに整えられているし、カリンが好きそうだなって来る前から思っていた」
今の季節はチューリップだけど、季節によって色々変わるみたい。
「すごく、きれい……それにピンクのチューリップがとても好き」
「よかった……」
ほっとしたように息を吐くから少し不思議に思った。今日が愛妻に捧げるチューリップの日らしいのだけど、リーヌスが子供の頃は花言葉が絶交だから人にあげてはダメだと教わったらしい。
「私はチューリップの花言葉は思いやりって聞いていたから……いろんな意味があるんだね」
「そうなのか……もしかして色によって違うのかもしれないな。……今日は観るだけだけど、来年はプレゼントさせて」
「はい。楽しみにしているね……今日はここに連れてきてくれて本当にありがとう」
「カリン、今日はまだまだこれからだよ! さぁ、ランチを食べたら反対側をまわろう」
『お花の献立』の最後、薔薇のシャーベットにも花びらが散らしてあってとてもロマンティック。
隊長さんが言い出したらしい愛妻の日は、とても素敵な1日になった。
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色とりどりのチューリップ!🌷
オランダのイメージですね!
その美しい花々よりも可愛いカリンに見惚れてるリーヌス
もっと大人なイメージで読んでいましたけど、第1話を読み直してまだ25歳だったのか…と。
カリンはもちろん可愛いのでしょうが、リーヌスもまだまだ可愛いですよね〜
来年はチューリップを贈る…と言っていましたが、毎年この日にはこの花の島を訪れる…というのもステキでしょうね!🌷🌷🌷
実はこの島、いくつかの国の境にあるらしいのです🌷
しかも長く個人所有だったようで!
ざっくりと調べたので間違ってるかもですが*ˊᵕˋ)੭☕️
私も書く前に読み返すんですけど、リーヌス若いですよね(ブレンダンも年齢の割に落ち着いているのですが)
可愛いカップルが書きたかったのです♡
毎年、花の島のほうが特別でいいですね🌷
みりあむさま、コメントありがとうございました🤗
甘い番外編ありがとうございます💖
チューリップ🌷
お花の献立も、滝階段も素敵
(*˘ᵕ˘*).¸¸♬•*¨*•.♫♬*☆
風景が思い浮かんでとてもロマンチックな気分になりました!
ハグの時間!(๑⊙д⊙๑)
試してみます💖
今回、実在する島をイメージしているんですけど、調べるうちに私も行きたくなりました🌷🌷🌷
全世界ハグタイムをお試しに♡
(๑•ڡ•)♡︎(•ڡ•๑)✨
みんながその時間、ってすごいことですよね!
鍋さま、コメントありがとうございました🤗
本日、最終話まで拝読しました。
改めて、完結おめでとうございます。
以前も書かせていただきましたが。この世界も本当に、好きな世界でして。
素敵な光景を覗く機会をあたえてくださり、本当にありがとうございました……っ。
ゆずさま、いつも優しいです〜✨
(´。•ᄉ•。`)キュンッ♡︎
最後があらあら💦って感じになってしまいましたが無事に終わりました🌺
柚木ゆずさま、最後までお読みくださりありがとうございました〜🤗