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1 男爵令嬢がヒロインって定番
しおりを挟む人生はままならない。
私には前世の記憶があって、この世界が昔遊んだ乙女ゲームそのもので、そのヒロインが私ベル。
自分で言っちゃうけど、見目の良さと賢さから十歳の時に男爵家に引き取られた。
この世界のことに気づいたのは王族も通う学園に入学した時。
私は平民の特待生だし、これ以上目立ちたくなかったからノーマルエンドを狙って特定の異性と仲良くすることはせず、友達との絆を深めてきた。
だけど、挨拶しかしたことのない第一王子はなぜか私に一目惚れしていたそうで、卒業パーティでお相手に婚約破棄宣言。
何にもしていない私は、男を誑かした女として、その場で二度と王宮に顔を出すなと言われ、王子も謹慎処分。
どこかに婿に入る流れになると思う。
ゲームのバッドエンドでそんなのあった。
結局、第二王子と第一王子の元婚約者にしてやられたっていうか。
二人のお互いを見る視線が熱っぽいから巻き込まれたんだろうけど、こっちは冤罪よ、冤罪。
悔しいから、仲良くしていた隣国の王女にゲームで知り得た国の内情を日本語で事細かに書いて送った。
だって彼女はゲームを知らない転生者で、第二王子の婚約者だもの。
きっと何かの役に立つと思う。
ざまぁとかざまぁとかざまぁとかね。
結局私は養父母に縁を切られ、彼らの運営する鉱山の賄い婦として働けと、一人オンボロ馬車に乗せられた。
貴族に未練なんてないし、貧乏子沢山の実家に迷惑かけたくないし、平民のまま育っていたら、まあまあ悪くない就職先なんじゃないの?
だけどさ。
御者は酒飲みジョニー。
今は夜で、横なぐりの雨が降っている。
遠くで雷が鳴っている。
なにこれ、めっちゃフラグ立ってない?
私、ここで死んじゃうの?
この先、鉱山でワイルドマッチョたちにご飯作って、その中の誰かと結婚するって人生設計を描き始めていたのに、それすら怪しい。
悪いことせず、善良に生きてきたのになんでかなぁあ‼︎
そんなことを考えていたら、ガタンッと大きな音がして馬車が大きく揺れた。
「嘘でしょーー! きゃぁっ……!」
そのまま傾いて、ズザザザーーッと斜面を滑り落ちた。(体感)
馬車の側面に身体を打ちつけて痛かったものの、枕がわりに首に当てていたクッションと、膝に置いた衣類の入ったカバンがちょっとした衝撃吸収材の代わりになって、大きな怪我はせずにすんだ、のかも。
身体は大丈夫そう。
心臓がどきどきして、何をどうしたらいいかわからないけど、とりあえず外へ出ようと、真上に見える扉をぐっと力一杯押して、開けた。
閉じ込められなくて良かったし、とりあえず平らなところに落ちたみたいで、ホッとした。
さらにすべり落ちるとか、これ以上の悪い出来事はいらない。
「ジョニー? 大丈夫?」
キョロキョロするけど、暗闇だし雨だし見えないし、返事もない。
ほんの少し、雨は小降りになっている。
ジョニーが投げ出されたなら、助け出さないと。
とりあえず馬車から這い出て、扉を閉めた。
少しでも荷物が濡れないほうがいい。
マントを深くかぶり、馬車の周りをゆっくり歩いた。
「ジョニー?」
「お嬢ちゃん」
明らかにジョニーではない、野太い声。
声の聞こえた方へ振り返ると、ガタイのいい男達が二人、近づいて来た。
嘘でしょ?
こんな時に盗賊?
勘弁してよ~。
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