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3 夕食を一緒に
しおりを挟む「実は、無理矢理結婚させられそうになって逃げてきたの。もう二度と戻らないつもり。……だから、これから家や仕事を探さないといけないの」
「そうか! 運命だな。これは、俺たちが出会うべくして出会ったんだ。……俺に任せろ! 安全ないい宿紹介してやるぜ!」
フロランさんに手を引かれて歩き出した。
番と言いつつ、ちゃんと宿屋に案内されて、荷物置いたらご飯に行こうって笑う。
これ幸いと部屋に連れ込もうともしないし、いいなぁ、紳士的。
単純かもしれないけど好感度上がるわー。
「何が好き? 何が食べたい?」
「そうですね……フロランさんは何が食べたいですか?」
「そりゃ、もちろん、エメリーヌ! でも、いいって言われるまで待つよ」
にかって笑って歩き出す。
ストレート!
直球すぎるけど、わかりやすくていい。
腹を探らなくていいって最高。
「じゃあ、フロランさんのおすすめの店に行きたいです。この街のことはよく知らないので」
「芋は好きか? 芋のグラタンとか芋のフライとか、すごいうまい店があるんだ」
「芋は好きです。おいしいですよね~」
「そうか、よし。好きなだけ食べてくれ」
少し奥まったところにあるその店は、おばあさんが一人で切り盛りしていた。
「おばぁ! 番を見つけたから連れてきたぜ。芋のフルコース二人前、頼む!」
「おやまぁ、それはおめでとう。私の孫みたいなものだから、本当に嬉しいねぇ。フロランのこと、よろしくね」
にこにこするおばあさんに、私が答える前にフロランさんが言う。
「彼女は人間だから、今口説いているところなんだ! もしフラれたら。おばぁ、慰めてくれよ!」
「おや、そうだったのかい。余計な口出ししてごめんよ。……ゆっくりしていってね」
私はあいまいに笑って、フロランさんと向かい合って座った。
私の顔を見てニコニコしている。
今から口説いてくれるとか!
なにそれ、ちょっと感動する。
「フロランさんは何の獣人なんですか?」
「俺は、イノシシの獣人だ。……けどよ、俺は番一筋だから! 一夫多妻なんて、今時はやらねぇよ。心配するな。そもそも俺はモテねえしな」
そういえば、猪って発情期の雌をめぐって雄が争うけど、体の大きいほうが有利で、何頭とでも大きい雄が交尾できるんだっけ?
イノシシ獣人も、そうだってこと?
そんなことを考えたら眉間にしわが寄っちゃった。
「本当に、俺は一筋だ! エメリーヌさえいればいい! 今まで二十四年間生きてきて、一度もモテたことねぇからな」
俺、体が大きい方じゃないし、って言う。
二十四歳ってわかったのはいいけど、非モテ自慢されてもどう返事していいかちょっと困った。
「そうですか……私、十八歳です。六つ年上ですね」
「……そうか! エメリーヌは落ち着いていて美人だな。ずっと見ていられる。……創作意欲がわくぜ」
「へぇ……そういうものですか」
ニコニコしながら私を見つめる。
恥ずかしくなって水を口に含む。熱い。
「あぁ、エメリーヌを讃える大型花火を打ち上げたい。一つ目のタイトルは運命の出会いだ」
真顔で言うから私は吹き出しそうになった。
「その顔も可愛いな。……三日後のフェスティバルのフィナーレに花火を上げる。俺はそのためにこの街に来た」
「フロランさんの家はどこなんですか?」
「普段は山奥の工房で花火を作っているんだ。……だから、エメリーヌと出会えたことは本当に運命なんだ」
何だか、私も運命な気がしてきた。
おすすめのおいしい芋料理を食べて、ポテトフライなつかしくておいしーなって感激する。
「ここの料理は全部おいしいですね! 連れてきてくださってありがとうございます」
「おばあの料理は最高なんだ。なぁ……普通に話してくれないか?」
「……いいの? 実は私もその方が楽なの」
「ああ! もちろん。名前もフロランでいい」
「フロラン……」
ああ、もう!
名前を呼んだだけでものすごく嬉しそうに笑うからキュンってした。
「じゃあ、そろそろ宿に送って行くよ。……明日も会いにいっていいか? 明日は一日空いているんだ」
「フロランはどこに泊まっているの? 近いの?」
「……花火を打ち上げるまでは、倉庫の隅に泊まっているんだ。……花火を打ち上げた夜は、いつもエメリーヌと同じところに泊まって体を休めて帰るよ」
職人さん、ストイック!
カッコいい!
この世界でも花火の玉をなんていうのかわからないけど、近くで眠るってちょっと怖いな。
「危なくないの?」
「心配してくれるのか? もう何年もそうやって過ごしているんだ! 花火玉は友達みたいなもんさ」
「へえ……じゃあ、私。楽しみにしているね!」
「おう、任せとけ! 特等席を用意してやるよ!」
やった! 嬉しい。
家出してきた身で、この先不安もいっぱいだけど、まずは目の前のことを楽しもうと思った。
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