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1 喪が明けて
しおりを挟む「王命で結婚?」
ロゼールは形良い眉を寄せ、再度手紙に目を走らせる。
顔を傾けた拍子にまっすぐな白金の髪が頬にかかり、煩わしそうに耳にかけた。
「ロゼール様?」
今年二十四歳になる彼女はシモンズ侯爵家の女当主で、一年前に三番目の夫を馬車の事故で亡くし、喪が明けて間もない。
他国では二年間喪に服すというのに、この国ではたった一年。
今だって黒いドレスを身につけることはやめたけれど、紺色の控えめなドレスを選んでしまうのは仕方ないことだと思う。
ロゼールは胸元に架けられたロザリオを握って大きく息を吐いた。
それから、控えめに立つ執事のアントワーヌに指示を出す。
「陛下から、四人目の夫を迎えるように王命が下ったの。準備を整え次第、王都に夫を迎えに行くから、部屋を準備してもらえる?」
手紙に相手は書かれていないけど、婚姻を結ぶように準備を整えているから五日後に登城せよとのことだった。
王都まで途中宿に泊まりながら向かうと三日程度かかるから、今日中に準備を整えなくてはならない。
「……どちらにご用意いたしましょう?」
ロゼールが指先で机を叩きながら考える。
三人目の夫は平民だったから、王がどのような身分の相手を選んだかもわからない。
万一、王族に連なるような相手だと厄介だと思う。
「そうね……相手がまだわからないのだけど。念のため私の隣の部屋にしてもらえる?」
「かしこまりました。客室もいつでも使えるようにしておりますので」
そう言われて、ロゼールがほんの少し口元を緩ませた。
若い未亡人の女侯爵が治めるこの領地には塩田があるから、他の領地より王族に目をかけられていると思うし、後継問題も気になるのだと思う。
とはいえ、こんなに早く結婚を命じられるとは思わなかった。
「この手紙を、彼に届けてちょうだい。振り回して申し訳ないわ」
王命が下る前に、領内の医師に形だけの結婚をしてもらえないかと話を進めていて、資金の援助をすることでようやくまとまりかけていたというのに。
それに、彼のためにロゼールの屋敷と林を挟んだ街に近い場所に、お互いに程よい距離を保てるだろうと考えて離れを建設中だった。
「彼は医者として働ければ、ほかは全く気にしないでしょう」
「そう……。初めに約束した資金と一緒に渡してね。彼のおかげで領内は流行病が広がらないもの」
ロゼールは幼い頃に流行病で両親と祖母を亡くし、今は亡き前侯爵の祖父に厳しく育てられた。
挫けずにやってこれたのは、目の前にいるアントワーヌをはじめ、周りの人達に幼い頃から支えられたからだと思う。
大きく息を吐いて、身体の力を抜いた。
立場上仕方ないけれど……。
本当は結婚なんてしたくない。
これまで夫達を守ることができなかったのに、また罪を重ねることになるのではと、不安に思った。
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