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30 思わぬ蜜月 ※
しおりを挟むマルスランが落馬して一ヶ月、初雪が舞った。
積もることはなかったけれど、バベットはロゼールとマルスランが熱々過ぎて、今年の冬はきっと寒く感じないですよと笑った。
マルスランも、今さら関係を隠しても仕方ないと言って、領主殿と呼ぶのをやめた。
ロゼールが、恥ずかしくて旦那様と呼ぶのはそのままでいいらしい。
二人きりの時に呼ばれる方が幸せだからと微笑んで、ロゼールを赤くさせた。
マルスランの部屋にロゼールが入り浸り、怪我の数日後には再び同じ寝台に誘われた。
『ロゼールは一人で眠れるのか? 俺はよく眠れない』
『…………』
マルスランの言う通り、よく眠れていない。
彼の怪我をしていない左側に横になったけど、寝返りを打って痛い思いをさせてしまうんじゃないかと心配だった。
『寝台は広いから大丈夫だ。それに、ロゼールに触れられているほうが、早く治る気がする』
『そんなこと、ないでしょう……』
でも、一緒にいたいと思ってもらえるのが嬉しい。
それに、もし夜の間に何かあったらと考えることが多かったから、マルスランの体温を感じるのは生きていると感じて心強かった。
マルスランが大人しく横になっていたのは一週間程度で、それ以降は使用人達が出入りする時は目を閉じて寝たふりをしていた。
この一ヶ月、彼は部屋から出ることは一度もなかったものの、落馬の原因を調べたり、手紙を書いたり、毒草について本で調べたりしていた。
呼び出した馬丁は萎縮していて、訳がわからない様子で順を追って話をさせるのが大変だった。
とつとつと話したことをまとめると、轡……馬具の一部で手綱と繋がった馬の口に含ませる金属の棒が何者かの手によって替えられていたらしい。
「この街の職人が作ったものじゃないのはわかった。新しい轡にいつ交換されていたんだろう」
クレマンもそこに毒が塗られていた可能性はあると伝えてきた。
「今、職人達にあれを作った者を探してもらっているわ」
「ありがとう。馬小屋に怪しい人間の出入りはなかったのか、今いる使用人の誰かなのか、はっきりしないというのは気持ち悪いな」
本当に。
落ち着かない。
いつまでこの状態が続くのだろうと不安になって、マルスランにそっと抱きついた。
「大丈夫さ。そのうち尻尾を出すだろう」
マルスランが左手でしっかり抱き寄せる。
「痛くない?」
「あぁ。皆、大袈裟すぎる。ただ、敵を油断させるためにももうしばらくこのままでいようと思う」
それから二週間ほど経って、轡がルナン伯爵領にほど近い場所に工房を持つ職人が作ったものだとわかった。
いつものように、寝支度を整えたロゼールがマルスランの寝台にやって来た。
マルスランも湯浴みの後で包帯が外されていて、ようやく痣が消えてほっとする。
ロゼールは彼の頭を浴布で包み、髪を拭いた。
「ありがとう、ロゼール」
マルスランの世話をするのは楽しい。
もともと騎士団にいたから、彼は従者はいらないと言って自分のことをさっと済ませてしまう。
怪我をしている間、アントワーヌが付き添う話も出たけれど、彼自身の仕事もあるしマルスランが大丈夫と断った。
ロゼールがマルスランの近くで仕事をして、そばにいたから困ることはなかったと思うけど。
ずっと一緒にいられて嬉しい、口に出していないけど伝わっているかもしれない。
「他にして欲しいことある?」
「包帯を巻くのを手伝ってくれ」
マルスランは痛くないと言うけれど薬を塗り、包帯を巻いた。
それから二人で横になると深く息を吐くから、ロゼールは労わるように寄り添う。
そっと額を押しつけて、早く治るように祈った。
「……マルスラン……?」
寝衣越しに彼の陰茎が当たり、そっと手を伸ばす。
「駄目だ、ロゼール」
怪我をしてからずっと睦み合っていない。
これまでも彼の湯浴みを手伝おうとしたけど、マルスランは頑として受け付けなかった。
今、回復してきたのを感じて嬉しい。
「……私がしてもいい?」
下着の中に手を入れて、張り詰めた陰茎をそっと握った。
マルスランが低くうめいて、ロゼールの手の上に手を重ねる。
「このままでは、汚してしまうから」
「お願い。これまで、してもらってばかりだったから……」
「…………わかった」
マルスランが大きく息を吐いて、起き上がった。
つられて起きたロゼールだけど、恥ずかしいことを言った自覚があるから、嫌がられなくて良かったと思う。
「これでも、一回抜いて来たんだ。……ロゼール、こうして」
下着を下げて、ロゼールに握らせると上下にすべらせる。
まじまじと見ることはあまりなかったけれど、先端が露に濡れて、生々しくもあり彼の一部だと思うと不思議と愛おしい。
マルスランがするみたいに、唇を寄せて舐めてみた。
「……ロゼール!」
男らしい匂いと、思いの外柔らかい感触。
なんとも言えない味だけど、嫌じゃない。
先端を丁寧に舐めてみたけど、これで合っているのかわからない。
「……どうしたら、マルスランは気持ちいいの?」
顔を上げて尋ねると、彼の陰茎がわずかに跳ね、当のマルスランは片手で顔を覆っていた。
「今のもよかった。……ロゼール、咥えられるか?」
そう言われて口の中に含んでみる。
喉に当たり驚いて頭を引き上げ、再度深く咥え込む。
口の中がいっぱいで、舌はどうすればいいのか、呼吸もままならなくて、ぎこちない動きしかできない。
あまりにもひどかったのか、マルスランがロゼールの髪を撫でた後、脇に手を入れ引き上げ、膝に乗せた。
「……下手でごめんなさい」
「そうじゃない。逆だよ。好きな女にされて嬉しくないわけがない。……ロゼールが欲しい」
「でも、身体に障るわ……」
ロゼールの躊躇いを取り払うように荒々しく口づけ、彼の手が寝衣の中へとすべり込んだ。
大きくて熱い手が背中を撫で、そのまま臀部へと下がる。
彼の手が柔らかさを味わった後、脚のあわいに触れた。
「んっ……」
彼の指が濡れてすべり、そのまま指が隘路を開く。
久しぶり過ぎて、彼の指を悦んで、食い締めた。
「ロゼール、お願いだ……」
彼の懇願に、ロゼールは腰を上げて、導かれるまま陰茎を受け入れた。
「あっ……!」
久しぶりに身体の中に彼を感じてロゼールは打ち震えた。
満遍なく擦られて、触れる全てが気持ちよくて。
それだけで達してしまって、マルスランの首にしがみついた。
「……ごめんなさい」
恥ずかしくて、顔が上げられない。
これではロゼールのほうが、したくてたまらなかったみたいじゃないかと。
「……俺は嬉しい。ロゼールにもっと求めてもらいたい」
マルスランが優しく笑って、口づけを交わした。
「痛くないの?」
「もう痛くないよ」
「……嘘」
「大丈夫だって……」
ゆったりと、お互いを労りながら触れ合って、つながって満たされた。
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