異世界でパクリと食べられちゃう小話集

能登原あめ

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悪役令嬢は断罪された後前世を思い出し、歳の離れた伯爵に嫁ぐことになったけど、中身アラサーだからラッキーと言う話 ※

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* 前世持ちの悪役令嬢が年上好きだったら、断罪されての年の差婚も罰じゃないよね、な話です。前半は性格のよろしくない、癖の強いヒロインです。







******


「婚約破棄だ! 二度と王宮に立ち入るな! その顔は二度と見たくない」

 婚約者の第二王子にそう告げられた私は、彼の隣にいる少女を睨みつけた。

 彼女さえいなくなれば、もう一度振り向いてもらえる、と。
 あの子が現れてから、すべておかしくなった。
 悔しい、憎くてたまらない。

「衛兵、連れて行け!」

 彼は少女を庇うように抱きしめ、抵抗しようとした私は力の余った衛兵に引き倒され、床に頭を強く打ちつけ気を失った。







「修道院にと思ったが、末端の貴族の元へ嫁げ。ここから半月ほどかかるからすぐに荷物をまとめて向かうように」

 今回私が起こした不祥事のせいで、父が侯爵位を兄に譲って領地に引っ込んだ。
 その兄が、私を冷たい目で睨む。
 彼もあの少女の肩を持っていたのを思い出したけど、もう今さらどうしようもない。

 私の元婚約者や兄達が、無邪気で気さくな男爵令嬢にのめり込むなんて思わなかった。
 あの頃は彼女の行儀がなってないと注意するだけじゃなくて、ドレスをけなしたり、持ち物を隠したり、飲み物をお酒に替えたりと嫌がらせをしていたから、私の周りも同じ態度をとるようになってエスカレートしていった。

 王子はチャラついてるけどイケメンだし、王族の一員になれるって浮かれていたし、それまで私の願いはなんだって叶ったから。
 今回だって、下位も下位の男爵令嬢なんて簡単に蹴落とすことができるはずだった。
 
「……あれ以来、お前も大人しくしているようだしな」

 頭を打った後、私は前世で日本人として生きていて、仕事の過労により倒れたところまで思い出した。
 ちょうど三十歳の誕生日目前だった。

「はい」

 その記憶を思い出してから、今世の記憶と価値観とで、しばらく混乱したのは確か。
 それでしばらく気持ちの整理がつくまで引きこもっていた。

 私が彼女に対してしたことが間違っていたって気づいたし、よくよく考えてみたら王子を本気で好きだった訳じゃないし、婚約前に戻ることもできない。   
 色々思い出して、考えてベッドでうわぁってなった。

 侯爵令嬢の私に、忠告してくれる友達はいなかった。
 落ち込んじゃうけど、仕方ない。
 もっと早く前世を思い出したかった!
 そんなことを考えながらも無表情でいると。

「……大人しすぎて、調子が狂うな。相手は四十を超えた伯爵で、貧しい領地だからなかなか妻を迎えることが難しかったようだ……今までのような贅沢はできないぞ」

 私の反応を伺うように意地悪く言う。
 以前の私なら癇癪を起こしていただろう。
 そんな歳の離れた格下の男と結婚なんて嫌だって。
 兄が嫌がらせで探してきたんだろう。
 
 でも今の私は十八歳とはいえ、アラサーの記憶も持っているから二十歳の王子と結婚する方が嫌だ。

 日本で例えたら、大企業の息子だけど社会に出たてのイキリ野郎と結婚するような感じじゃないかな。
 それなら四十過ぎて、色々な経験している男の方が落ち着いていていい気がする。

 後ろ姿に哀愁漂う男、寄り添いたくなる……多分。課長はそうだった!
 子どもより大人。
 好みじゃない見た目なら目を瞑ればいいし。
 慣れる、慣れる。

 修道院で暮らすより少しは自由なんじゃないかな。
 性格が悪いとか中身に問題あったら、逃げて平民に紛れて働けばいいし。
 多めに宝石を持ち出せばなんとかなるでしょ!
 
「わかりました」
「……やはり、頭の打ちどころが悪かったのか……?」

 兄がいぶかしむ。

「まぁ、いい。くだらないことは考えるなよ。リンダ、二度と顔を見せるな」

 それ言われるの、二度目だ。
 もともと縁の薄い兄だから、新入社員に言われているみたいでちょっとイラッとした。
 王子妃になるための教育を受けてきたから笑顔くらい浮かべられるけどね。

「ごきげんよう、お兄様」









 そういうわけで、何日もかけて辺鄙な地に着いた。

「あー、あれだ。これ、開拓系のゲームの世界に違いない」

 異世界でゲーム内に入る小説、弟が読んでたわ。
 結構ストイックに開墾するのよねぇ、確か。
 だってまぁ、なんていうか、石がゴロゴロしていて痩せた土地にみえるから。

「さつまいもがあれば……いや、この世界で食べたことあったかな。薩摩はないよね。だけど定番はやっぱ芋類だよねぇ。最悪、ひえとかあわとか雑穀だな」

 こんなことなら田舎のじいちゃんちで真面目に収穫以外も手伝えばよかった。
 そんな感想を持ちつつ、伯爵で、私の結婚相手のスティーグ様と対面した。

「ようこそ、長旅で疲れただろう。よければ今夜は部屋に食事を運ばせるが?」

 四十歳過ぎてるって聞いてたけど、想像と違った。
 狸みたいな薄毛の親父を想像していたから。

 ぽっこりお腹に癒されたいと思ったのに、スラリとしたロマンスグレーってやつか。
 貧しい土地で太った領主はまずいよね。
 微笑むもんだから、緊張してきた。

「はい、そうしていただけると助かります」

 目の前のスティーグ様が、静かに驚いているのが伝わってくる。
 あ、そっか。
 わがままで癇癪持ちで意地の悪い侯爵令嬢だわ、私。兄から聞いていたのかな。

 こんな土地で暮らせないって駄々こねるのが以前の私かも。
 あのままの私だったら相当手を焼いたと思うけどね、少し大人になってるから!
 持参金以外にも役に立たなきゃね。

「では、案内させよう」
「ありがとうございます」

 白髪混じりの侍女の後をついて、落ち着いた部屋に案内された。
 代々使われている家具を大切に磨いて使っている感じ。結構好き。

「では湯浴みはこちらの部屋となっております。使用方法は……」
「シャワーね! 大丈夫よ。嬉しいわ。……下がって結構よ」
「ありがとうございます。ではその間に食事の準備をしてまいります。失礼いたします」

 侍女というより家政婦といった感じかな。
 これはもしや、それだけ人がいないってことで、相当貧乏かもしれない。
 早めに領地経営に参加させてもらわないと!

 向こうも私が子どもを産むまではちゃんと対応してくれそうだし、協力しないとね。
 こういうシュミレーション系って燃えるわ。

 領民ってどのくらいいるのかな。
 採れる作物とか家畜……気になる。
 私も一人暮らししてたから、ちょっとは何かできるはず。
 シャワーがあったし、ゲームの世界なら多少家電みたいなのがあってもおかしくないよね。あってほしい。
 
 風呂と食事をとった後、そんなことを考えながら眠ってしまった。







「リンダ」
「スティーグ様? どう、して……?」

 なんでここに? まさか夜這い?
 まだ私達結婚してないよ。
 意外と性欲強いひと?

「このまま君をいただくよ。逃げられたくないからね」

 あぁ、そっか。
 私が殊勝な態度で油断させて逃げると思っていたのかも?
 スティーグ様、確実に妻を手に入れたかったんだ。
 まぁ、私は十八歳だし、子供に恵まれる可能性は高いかな。

 問題が一つ。
 痛いの嫌だなーー。
 ここは、優しくしてって、定番のセリフを。

「んんぅ、スティー……グ様っ」

 唇が重なってにゅるりと舌が滑り込んだ。
 嫌じゃない、よかった。
 今日会ったばかりでほぼ知らない男とこんなことしてる。
 あぁ、でも。夫になるんだよね。

「リンダ」

 試しに抱きしめてみると、予想した通り、うっすらと筋肉がついている。
 まぁ、悪くないんじゃないかな。
 私からも舌を絡めてより深く口づけを楽しんだ。
 
「……この先の経験は?」
「ないです」
「……まぁ、いい」

 あれ? 処女だと思われてない?
 まさかね?
 食い入るように見つめてくるけど……。
 そっか、跡取りが一日も早く欲しいんだなぁ、なんてぼんやり考えていたら。
 するりと寝間着を脱がされた。

「ここは自然のままの領地なんだ」
「はい」

 開拓しなくちゃいけないもんね。

「私以外の男はいけないよ」
「はい」

 そんな暇ないよね。
 子どもはできたら二、三人産んだほうがいいよねぇ。
 やっぱり人を増やすのがこの世界の基本ではないかな。

「リンダ、嫌だったら目を閉じていなさい」

 スティーグ様はそう言って笑うと、私の全身に手と唇で執拗に触れた。
 ねちっこいとも言う。
 そういえば、年の差婚した前世の友人が前戯が長いって言ってたのを思い出した。

「……あっ」

 気持ちよくて焦ったくて、とうとう声を我慢できなくなった。
 脚に力も入らないし、愛液で濡れてお尻のほうまで冷たい。

「リンダ、挿れるよ」

 先端を押しつけて、水音を立てながら遊ばせる。
 それからゆっくりと腰を前に押し進めた。

「ぅぐっ……」
 
 痛みで変な声が出た。
 スティーグ様が一旦腰を引いたから、ほっとして彼を見上げた。
 言うなら、いまだ。
 優しくして、って。

 だけど。

「スティーグうぅ……さまっ、痛いっ」

 ずんと一息に突き入れられて、痛みに喘いだ。
 もうちょっと違うやり方あったんじゃないのー?
 涙目で見上げると、ふっ、と笑う。
 そこは笑うところか?

「リンダ、口づけしよう」
 
 彼が体を倒して舌を絡めるキスをした。
 脚の間はじくじく痛むけど、キスに夢中になっていると、スティーグ様がゆっくり腰を回して私を刺激する。

「ん、んんっ……」

 ぐちゅり、ぐちゅりと水音が響き、痛み以外を感じ取れるようになって、じわじわと甘い快楽に襲われた。
 
「痛みを長引かせないほうがいいだろう……?」

 さっきのは、そういう気遣い?
 こくこく頷く私の唇に触れてから、体を起こしてゆったりと揺さぶり始めた。

「……っ、あっ、……」

 余裕のある大人の男って感じがする。 
 前世の自分優先の歴代彼氏がよぎって、慌てて目の前の男に意識を戻した。

「……浮気する暇はあげないよ」
 
 私の顔をじっと見ていたらしく。
 もちろんそんな気もないけど、この人心が読めるの? 
 もしかしてそれで、結婚できなかったんじゃ……?

「リンダ、考え事はやめなさい」

 わずかに体をずらして突き込む角度を変える。

「あっ、あぁ……っ」

 その後は頭の中が真っ白になるくらい色々なやり方で揺さぶられて、明け方になってようやく私の中で吐精した。

 おそ、遅いよ……。
 今日は特別なんだよね。
 きっと……そうだと思いたい!

 
 翌日領内の教会で結婚を誓い、それからは週に何度も求めてくるものだから、驚く。
 新婚だからというのもあると思うけど、私が他の男によそ見しないためだって言う。
 
 そんなつもりは全くないし、四十代ってもっと穏やかだと思ったんだけどな。
 日中は紳士なのにね。

「……噂と随分違うね」

 思い出させないでほしい。
 十八歳の今の私に、前世の記憶が追加されてそれほど経っていないから、どうしてもそっちの影響が強いかも。
 でも、私は私で基本は変わってない。

「スティーグ様こそ、想像と全く違いましたわ」
「そうか。お互い様だな」

 お互いを見つめ合って笑う。 
 喧嘩になったことがないし、私達、案外上手くやれてる。

「スティーグ様、私一度に一人の方しか愛せません。その方一筋なんです。だから、覚悟してくださいね」

 一拍おいて、スティーグ様が笑い出した。

「私もだよ。リンダ。大事にするよ」

 こうして私達は領地を開拓し、農産物を増やし家畜を飼って収入を増やし、五人の子どもを生み育てた。
 私達の領地の未来は明るい!









******


 お読みくださりありがとうございます。
 転生ヒロインがおじさま好きでもたいてい年の近いイケメンと結ばれるので、こういうのもありかなーと。悪役令嬢ですが。
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